　この本の裏表紙の科白をそのまま受取ると、原作小説ということになっていたのであるが、あとがきを読むと納得、やはり原作はあくまで映画で、小説は原作に基づいて書かれたノベライズのようである。

　夜中に漸く小説「プレデター」を読み終えたのであるが、眠気との闘いで体力的にも主役のシェーファー少佐のようにボロボロの様相であった。

　小説は概ね映画の流れに沿っているのであるが、細かい点が微妙に異なっていることもある。

　たとえば映画では途轍もない脅威であった異星人の肩のビームキャノンは無く、自在槍が攻撃の主であること

　異星人に憑依能力があること(ただし人間以外)

それから異星人の外見である。

あのグロテスクな素顔は、小説では表現されていない。

　これらはあとがきを読むと釈然としてくるのだが、二見文庫の刊行時期が、日本での映画初公開よりほんの少し前なのである。

　そこから、作者ポール・モネットが小説化した時期を遡ると恐らくそれより大分以前となり、その下地は未確定要素が含まれた映画の台本・脚本の類ではなかったかと私は考察する。

どうも異星人のフォルムも試行錯誤があったようで、あとがき時点では未公開であった節が覗えるので、小説が実際の映画と微妙に異なるのは解らなくもない気がする。

　さて本編で私が最も注目する登場人物は、主役のシェイファーではなく、彼の部下のインディアン血統のコマンドー、ビリー・ソールである。

　作中でも一際異彩を放つビリーの第六感という特異能力から、映画でも名シーンのマチェーテ一本で異星人に対決を挑む場面は、小説で読むとより詳細で鮮明である。

　よくよく考えると映画続編においても、「これってビリーのオマージュじゃない?」と思える場面があるのが覗える。

　たとえば続編「2」の怪しいギャング(⁉)の首領も、第六感らしきものを備えているようで、その最期においてもビリーを彷彿させるものがある。

　それからリメイク版の「プレデターズ」に登場する日本ヤクザが、刀一本で異星人に立ち向かう場面がある。

これもビリーの捨て身の対決を彷彿させるものが感じられる。

　と、ビリー贔屓の考察になってしまっているが、小説本編では異星人がコマンドーたちに牙を剥くのは、中盤以降になるのでり、それまではゲリラ殲滅やシェイファーと嘗ての戦友ディロンとの確執などの場面がつづくのであるが、映画より詳細で流れも小気味よく出来ているので、退屈を覚えることはない。

　それから次々と圧倒的な異星人の手にかけられるコマンドーの面々の勇姿も見ものである。

　私としては、小説「エイリアン」依頼の手に汗握る読書時間となったことを申し添えておきたい。

また、この希少品を偶然ながらも入手出来たことも感慨の念ひとしおであることもあわせて述べておきたい。

「プレデター」という良質なノベライズ