相変わらず読書は細々続けており、長編一作、短篇も一作読み上げたものの、うまく自分の中で要旨がまとまらず、それならば読み続けろということで、また別の長編小説を読んでいる。


 その間、自分に取っての新しい小説文化の取り入れも余念なく、新たな古本が少しずつ間借り本棚のスペースを占拠するようになってきた。

これでは整頓する度、空き場所へ本を埋めていくばかりなので何の整理と抑制にもならない。


 現状はそのようなことであるが、古本屋さんの棚に新しいものが並ぶのはなかなか時間を要することなので、このところの本探しは平積みに積まれた本の中で見た目が古そうな文庫を選って、くじ引きのような捜索方法を採っている。


 そうすると、割りと表層から顔を出しているのが、何ともユニークな「マリリン・モンローノーリターン」というタイトルの小説で、作者はあの野坂昭如とある。


 私の野坂昭如さんの印象といえば、映画「火垂るの墓」の原作者としては当然ながら、33年前の1990年に大島渚監督の眼鏡を吹っ飛ばす程、壇上で激しい殴り合いをした印象が強く、スピーチ後不意をついた野坂氏の先制の右フックは、失礼ながらも的確といった言葉が似合うのである。


 奇しくも私の12歳の誕生日の日に起きたアクシデントである。


 テレビのVTRを見ながら、「あんないい作品(火垂るの墓)を書いた人が、あんな事をするとは」と呟いていた母の言葉が今も胸に残っているせいか、野坂氏=殴り合いをした人の印象が今まで拭えずにいたところ、上述のユニークなタイトルと、調べたレビューから得たその作品センスの定評好さに、ちょっと読んでみようかと、その後発掘した短篇集「火垂るの墓」と北杜夫さんの短篇集「夜と霧の隅で」とともに私の本棚に並んだのである。



 本当は森村誠一の作品を探しに来たのであったが、こちらはまた何時でもいいわと後回しにしてしまった。

 この表題作、作者の妄想全開の作品のようなので、きっとあの事件の右フックばりの強烈な印象を残してくれるであろうことを期待している。

 もう両先生ともこの世に居られないのが残念ではあるが、私はその作品を読み継いで行きたいというのは大袈裟な表現かもしれない。

 まずは肌に合うか合わないかである。