「目が覚めることで気付く3つの段階(気付きの話③)」オレンジクラブD第34回(16.4.4) | 粳間メンタルリハビリテーション研究所/一般社団法人iADLのブログ

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いつもお世話様です!

高次脳機能障害・認知症・発達障害のための集団メンタルリハビリテーションデイケアプログラム
「オレンジクラブD」第34回(4/4)の内容をお届けいたします。


前回の講義/ブログで、


・気づき(awareness)とリテラシー

・それによる感情のトップダウン制御


の解説をしました。


今回はその続きの話です。



①「目が覚める(覚醒・意識)」の3つの段階

Awake→Alert→Aware(≒気付き)



普段我々は何気なく「目が覚める」という表現を使います。

医学的には、意識がある、覚醒しているなどという表現を使いますが、

「目が覚める」には大きく分けて三つの意味合いがあります。


前回の例にも出した漫画をもういちど見てみましょう。





最初(2コマ目まで)、女の子は目を覚ましていません。

寝ている状態です。


3コマ目で、寝ている状態からは目が覚めていることはわかると思います。

しかし、窓の外で踊り狂う不気味な物体には気付いておらず、十分に目が覚めている状態ではありません。

このように、眠ってはいないけれど、注意・警戒心が十分働くほどは目が覚めていない状態が、目を覚ますの第一段階です(awake)。


4コマ目で不気味な物体に気付き、驚いています。

しかし、まだそれが洗濯物であるとは認識できないくらいの意識状態です。

注意・警戒心が働くほどは目が覚めているけれど、事実認識できるほどは目が覚めていない状態が、目を覚ますの第二段階です(alert)。


5コマ目で不気味な物体の正体が洗濯物であると認識できています。

この事実をしっかり認識できるまで目が覚めている状態が、目を覚ますの第三段階です(aware)。

そして6コマ目では安心してまた寝ると(前回説明したトップダウン制御ができている)。


このように「目を覚ます」には、awake→alert→awareという三つの段階があります。



たとえば、


(1).雪山で遭難した時に「目を覚ませ!」と言われた。

(2).仕事を辞めようとしたら「目を覚ませ!」と言われた。


この二つの「目を覚ませ!」の意味合いが違うことはわかると思います。


(1)は「眠るな!」という意味なのはわかるでしょう。

意識をなくすと死んでしまうような状況で使う「目を覚ませ」です。

この「目を覚ませ」はAwakeしろという意味です。


それに対して(2)は、Awakeしろという意味ではありません。

問題意識が足りない相手に対して考え直すように促す「目を覚ませ」です。


「事実をちゃんと認識しろ」とかそういった意味合い。

この状況での「目を覚ませ」はAwareしろのニュアンスです。


問題意識とか、国民意識とか、仲間意識とか、意識高い系だとか・・・

そういったニュアンスでの「意識」。


このAwareとは「気付き」のことです。

「覚る」は「さとる」と読みますが、さとるのニュアンスです。

気付きがない人に対する「目を覚ませ」という言い回しは本当に言い得て妙。

十分にawakeしていること、十分にalertしていることが、気づき(aware)に必須であることを見事に表現しています。



目が覚めるような刺激は気付きを促します。

(オレンジクラブD第10回講義参照http://ameblo.jp/u-mri/entry-12082552091.html )


それは、awakeさせるような刺激というニュアンスでも、alertさせるような刺激というニュアンスでもどちらでもOKです。


たとえば、「やりたいこと」をやればawakeするし、興味があることに対しては注意も向きます(alertします)。

そういった刺激であればなんでもかまいません。


それがいい刺激であるかは、表情で評価するのが重要です。

本人の活気がよくなるようであればそれでOK。


逆に、本人がよい表情をしていないときに、何かを気付かせようとしてもそれは無理な話です。

まずは表情を見ながらよい刺激を探していくのが重要です!


次回また詳しく解説します!






==(注釈:読み飛ばし可)======================================


医学でも、意識の評価は重要です。

脳損傷の急性期、特に高次脳機能障害が残るような症例では意識障害をきたします。

重症例では「目が覚めない状態(昏睡)」に至ります

よって、救急室などでは意識障害の有無の確認は必須なのですが・・・


では、「気付きのレベルの意識(aware)」まで救急室で評価するのか?というと、これは無理です。


たとえば、「この人は問題意識がない人だな…」と思った場合、それがもともとなのか、脳損傷によるものなのか見分けることが可能なのかという・・・。


では、救急室では、どのレベルまで意識状態を確認するかと言うと、


・十分に注意ができているか(Alert)


までです。


その目安は「日付と場所がわかるか」です。

日付と場所が答えられれば、「十分に注意・警戒が出来ているから意識障害なし」、とみなします。

これが世界で最も標準的な意識障害の評価方法、"Glasgow Coma Scale"のルールです。


それだけじゃほんとうに意識に問題がないのかわからないのになぁ…と思いつつ。


ちなみに本邦の意識障害の判断基準(Japan Coma Scale)では、日付と場所が答えられても、十分に注意・警戒心が働いていないとみなせる状況*であれば、意識障害ありとみなせます。

(JCS1. 「*今一つはっきりしない状態」のこと)


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≪羅心版≫


今回の集団セッションは羅心版です。

羅心版は、その日の主役のやりたいことをテーマに、その実現につながるアドバイスを、参加者全員でポジティブにフィードバックしあう集団セッションです。

羅心版でも今回解説した「気付きを促すための、目が覚めるような刺激」をあたえることができます。


今回の主役のかたは、本日でオレンジクラブD卒業というかたでした!

また、今回初めて羅心版の司会も当事者のかたにやっていただきました。


実際のアドバイスと、選ばれた「はじめること」がこちらです。











いかがでしょうか?

参考になれば何よりです!




(オレンジクラブ・羅心版の効果を詳しく知りたい方はこちらへ)

半年間の羅心版セッションに参加することで、前頭葉/辺縁系などの内側領域で循環代謝改善が得られ、社会的行動・活力が改善することがわかっています。

三輪書店「高次脳機能障害ファシリテーター養成講座」 より転載



====≪予定のお知らせです≫====


4月-5月のオレンジクラブDの開催予定日


4/11(月) 16:00-(15:45集合)

4/18(月) 16:00-(15:45集合)

4/25(月) 16:00-(15:45集合)

5/2 (月) 16:00-(15:45集合)

5/9 (月) 16:00-(15:45集合)

4月は毎週月曜日16時開始で固定です! 


ご家族だけでの見学参加も可能です。


高次脳機能障害・発達障害・認知症以外の当事者の方でも参加可能です。


「興味はあるけど、集団の輪に加わるのはちょっと…」というかたもご心配なく、

見ているだけの見学も可能です!


オレンジクラブは、通常の診療予約とは別の窓口となっておりますので、はじめて参加されるかたは、こちらの窓口から専用フォームを開き、必要事項記載の上、送信下さい!

オレンジクラブD専用フォーム


ご不明な点などのお問い合わせもこちらへどうぞ!


読んでいただいてありがとうございました!!

今後ともよろしくお願い申し上げます。