題名…『私とイケメン転校生と時々インベーダー!?』


対象読者年齢…小学校3〜4年生


ジャンル…一応SF(笑)


第4話


 あの化け物は修二くんの行方不明に関係してるんじゃないのかな?

  このことを先生に言った方がいいのかしら?

  でも、こんなことを話しても、きっと先生やクラスのみんなは信じてくれるわけがない。そう考えるとあたしは、昨日の話をすることが出来なかった。

 「他に木下くんのことで何か知ってる人はいませんか?どんなことでもいいわ。先生に教えてちょうだい」

 (言わなきゃ、先生に言わなきゃ……!)

 そう思えば、思うほど、あたしは心臓がドキドキしてきて、口は鉛のように重くなってしまい、動かなくなってしまっていた。

 午後になると警察の人たちが学校にやってきた。どうやら、木下くんのことで、あたしたちの話を聞きにきたらしい。

 「これから、刑事さんたちが、みんなに色々とお話を聞きたいそうです。怖がる必要はありません。正直に質問に答えてください」

 先生が教室のドアを開けると太っていてニコニコと優しそうな顔をしたおじさんと、背が高くて目つきの鋭い怖そうなおじさんが教室に入ってきた。

 「こんにちは。君たちのお友達は、おじさんたちが必ず見つけ出すから、ちょっと協力してくれないかな?おじさんは刑事をやってる藤田です。こっちの怖ーい顔をしたおじさんは水木刑事です」

 藤田刑事に紹介された水木刑事は黙ったままだ。何か怖い。刑事というよりはヤクザみたいだ。そんなことを考えてると藤田刑事がまた話し始めた。

 「木下くんは、昨日の7時30分くらいに森田公園で別れたのを最後に行方が分からないのだけど、公園や学校の周りで怪しい人を見た子はいないかな?」

 やっぱり昨日の化け物の話をした方がいいのかな?

  修二くんは乱暴物で、あたしは苦手だけど、もしも昨日の化け物に捕まって怖い思いをしてるのだとしたら、かわいそうだし、放っておけないよ。

 よし!人前で話すのは怖いけど、勇気を出して本当のことを言うぞ!あたしは自分で自分に言い聞かせて、手をあげようとした時に、沢田くんが刑事さんに手をあげようとしたが、火村くんが突然立ち上がって刑事さんに話し始めた。

 「刑事さん、僕は、昨夜の7時30分に森田公園で変な奴を見ました」

 えっ!?火村くんはあたしが言おうと思ったことを先に話し始めたので、あたしは心の中で大声をあげて驚いた。

 「どんな人を見たんだね?もしかするとそいつが木下くんを誘拐した犯人かもしれん。詳しく話しなさい!」

 今まで黙っていた水木刑事が、火村くんの話に興味があったのか、初めてしゃべった。この刑事さん、声が低くて、ますますヤクザみたいだ。火村くんこんな人と話せるのかな?

 火村くんが見た怪しい奴って、まさかあたしが見た化け物と同じかしら?

 「昨夜、お母さんに買い物を頼まれて、たまたま公園に入ったんです。そしたら街灯の下で、しゃがんでる人が見えたんです。その人は僕が近づくと顔を上げました。その顔は……」

 火村くんはそこまで話すと、うつむいて黙ってしまった。もうあたしには火村くんが何を言いいたいのかが分かっていた。やっぱりあたしの見間違いじゃなかったんだ!

 「どうしたのかね?早く続きを話したまえ!」

 水木刑事が黙ってしまった火村くんを見てイライラした感じで言った。

 「そいつの顔には、目が4つあり、口も大きく裂けていて、ライオンみたいな牙がたくさん生えていました。そして顔の色は紫色でした」

 火村くんの話が終わると教室の中はシーンと静まり返った。あたしはみんなの様子を見てみた。

 目が点になってポカーンとしてる男子、少し泣きそうな顔をしてる女子など色々な表情をしているが、笑ってる子は1人もいなかった。

 「フフ!君は面白い冗談を言うね。でも、今はふざけてる場合じゃないんだよ。本当のことを話してくれないかな?」

 藤田刑事はニコニコしながら火村くんに話してるが、ほっぺたがピクピク動いて、何だか心の中では怒ってる気がする。

 「信じられないかもしれないけど、本当に僕は見たんです。きっとそいつが修二くんに何かしたんだ!」

 「いい加減にしろ!我々は子供の遊びに付き合ってる暇は無いんだ!」

 とうとう、水木刑事が怒鳴りだした。

 「……グス、ヒック」

 水木刑事の怒鳴り声が怖くなって、あたしは泣いてしまった。どうして、大人は子供が見た物を「いない」と決めつけて信じてくれないの?さっきの話は本当だよ。だって、あたしも見たんだもん。こんな時、パパが生きてたら信じてくれるかな?そして、自分でも止められないくらい涙があふれ出てきて、泣き声も大きくなってしまった。

 「うわぁーん!」

 「刑事さん。子供たちも今回の事件で傷ついてるんです。今日はこの辺にしてあげてください!」

 あたしの泣いてる姿を見て、先生が刑事さんたちに言ってくれた。

 「これはすみません。みんな怖い思いさせてごめんよ。木下くんは、おじさんたちが必ず探し出すから、安心して待ってるんだよ。水木くん、行くよ」

 「はい。」

 そう言うと刑事さんたちは教室から出て行った。

 「木下くんのことは、刑事さんたちに任せましょう。平田さん、もう怖くないから大丈夫よ」

 先生に言われてあたしはやっと泣き止むことができた。

 「火村くん、あなたの言ったことが本当だとしたら、その4つ目で、口が裂けてて、牙を生やして、顔が紫色の人はその後、どうしたのかしら?」

 「分かりません。僕はびっくりして逃げ出してしまいましたから。ごめんなさい。もしかしたら、公園はあいつの巣じゃないでしょうか?危険だから公園には近寄らない方がいいと思います!」

 先生の質問に火村くんは謝りながら答えた。

 「謝ることはないわ。もしも逃げなかったら、あなたも木下くんと同じように行方不明になってたかもしれませんからね。でも、そのお化けは一体何者かしら?」

 「先生、僕はあいつは宇宙人だと思います。きっと地球を侵略するために他の星から来たインベーダー(侵略者)ですよ!」

 「先生もね、宇宙人はどこかにいると思うわ。だけど、火村くんが見たのは、悪い大人が4つ目のお面を被っていて、近づいてきた人を驚かしてたのよ!」

 キンコーン、カンコーン。

 先生が話し終わると同時にチャイムが鳴った。

 「今日の授業はこれで終わりです。みんな早く帰りなさい。それと下校する時は必ず1人では帰らないこと。そして、暗くなったら、なるべく家から出ないように!いいですね」 

 先生はそう言うと教室から出て行った。

 「じゃあね!バイバーイ!」

 「おい、一緒に帰ろうぜ!」

 みんなは、仲の良い友達同士で、下校グループを作って、次々と教室から出て行ってしまった。あたしはどうしよう?そうだレナは?あたしはレナを探した。するとレナは他の女子たちと一緒に帰る準備をしていた。

 そうだよね。レナは人気者だもんね。でも、先生は「1人で帰るな」と言ってたし、あたしも昨日の化け物やおじいさんのことを思い出すと1人は心細い。そんなことを考えていたら、レナの方からあたしに近づいてきた。

 「未夢。あたしたちと帰らない?」

 いつもレナが、あたしと帰ろうって誘う時は、レナ1人だけで声をかけてくれる。他のクラスメイトと一緒に帰る時は、きっと緊張して、他の子と話せないあたしを気づかって、誘ってこないと思うんだけど、今日は初めてレナは他のグループの子と一緒に帰るのに、あたしに帰ろうって誘ってくれた。

 きっと修二くんの事件があったから、あたしのことを心配してくれてるんだろう。やっぱりレナは優しくてあたしの大切な友達だ。だから、クラスメイトがいるから、少し緊張したけど、あたしは言った。

 「う、うん。一緒に帰ろ?」

 「僕も混ぜてもらっていいかな?」

 火村くんがあたしたちに声をかけてきた。

 「いいよー。あたしも火村くんの見た宇宙人の話聞きたかったし!」

 レナはニッコリ笑って、火村くんも下校グループの仲間に入れた。

 「じゃあ、みんな帰るわよ」

 普段、よくレナと遊んだり、帰ったりして桜 梨香(さくら りか)さんが命令っぽく言った。彼女は、レナと同じく活発な子だけど、パパが社長で、お嬢様だからか、周りにワガママを言ったり、自分の思い通りにならないと怒り出すことがある。そんな場面を何度か見たことがあるので、あたしは桜さんと話したことは一度も無かった。

 「ねえ、ねえ。帰りにコンビニ寄ってお菓子買おうよ。お腹空いちゃったよー」

 そう言ったのは桜さんと仲が良い西沢 和美(にしざわ かずみ)さんだ。少しぽっちゃりしてる西沢さんは食いしん坊なのか、いつもお菓子や食べ物の話を桜さんやレナにしているみたいだ。

 「だめよ!先生が早く家に帰りなさいって言ってたのを忘れたの?帰るまで我慢しなさい」

 少しキツい口調で、彼女を注意したのは、学級委員の小沢さんだった。

 「とにかく、教室にいるのあたしたちだけだし、早く帰ろうよ」

 レナがそう言うので、あたしたち5人は教室を出た。