Q.ある有名ゲームのタイトルの一部をタイトルに使用したゲームを製作・販売する行為は問題になりますか(例:「ドラクエワールド」等)。




A.場合によっては、不正競争防止法に該当することになります。











ここ2・3日、書籍タイトルや映画・アニメのタイトルについて不正競争防止法の観点で考察しておりましたが、今回はゲームタイトルについてです。




前回「映画・アニメのタイトル使用について ~マクロス事件~ 」により、アニメ・映画のタイトルは不正競争に該当しないという判決があることがわかりましたが、ゲームソフトタイトルはどうでしょうか。




有名なゲームソフトタイトルをもじったタイトルを付したゲームソフトを制作・販売すれば、有名なゲームソフトの続編であると誤認してしまうユーザーが少なからず存在してしまうでしょう(例:「ドラクエワールド」等)。




このような例の事件として、今回は「ファイアーエムブレム事件」を題材に考察したいと思います。








【ファイアーエムブレム事件】




この裁判は、ゲームソフト「ファイアーエムブレム」シリーズの販売元である任天堂が、このシリーズに類似するゲームソフトを制作・販売したとして制作会社ティルナノーグを相手に著作権法違反および不正競争防止法に基づく損害賠償請求を求めて争われたものです。




この類似するゲームソフトというのが、「ティアリングサーガ」です。が、これは販売時の名称であり、販売直前までは「エムブレムサーガ」の名称で販売するということで制作会社ティルナノーグは広告・宣伝しておりました。




この裁判は、最高裁まで上告されましたが上告棄却されたため、高等裁判所の判決が最終的な判決となっております。よって、高等裁判所の判決をもとに考察したいと思います(東京高裁 平成14年(ネ)第6311号)。




ちなみに、この裁判の判決文、すごく長いです。





今回の争点の一つとなったのは、原告である任天堂が販売していたゲームソフト「ファイアーエムブレム」と被告であるティルナノーグが制作したゲームソフト「ティアリングサーガ」の発売前名称「エムブレムサーガ」が類似しており、購入者がファイアーエムブレムシリーズと誤認して購入してしまうおそれがあるという理由等による不正競争防止法に該当するのかどうかというところです。






なお、被告ティルナノーグの代表者は、ファイアーエムブレムシリーズの開発に深く関わった人物ですし、「ティアリングサーガ(エムブレムサーガ)」と「ファイアーエムブレム トラキア666」のキャラクターデザインは同じ人物が手がけているため、世界観の共通性は随所に見受けられます。





が、この裁判のなかで、「ファイアーエムブレムシリーズ」と「ティアリングサーガ(エムブレムサーガ)」との間には、全体構成に関して共通している部分が存在していることを認めつつも、それら共通部分が他のゲームでも採用されている典型的なものかアイデアにすぎない又は創作性が認められない表現にすぎないとして著作権法違反の部分は否定しております。




では、不正競争防止法についてはどうか。








【不正競争に該当するのか】




ポイントがいくつかあるので、それらを抜粋いたします。




(東京高裁)

「ファイアーエムブレム」との表示については、遅くとも「ファイアーエムブレム トラキア666」が発売された平成11年9月までには、任天堂のゲームソフトであることを示す商品等表示として、需要者の間に広く認識されていたものと認めるのが相当」




として、まず「ファイアーエムブレム」という名称が任天堂のゲームソフトであることを示す商品等表示に該当すると認定。




「エムブレム」との略称は、「ファイアーエムブレム」のもう一つの略称である「FE」ほどの高い周知性を獲得するには至っていないとしても、ゲーム雑誌等の広告媒体を通じて、需要者に「ファイアーエムブレム」の略称を示すものとして徐々に認識されるようになり、遅くとも「ファイアーエムブレム トラキア666」が発売された平成11年9月までには、「FE」と並ぶ略称として需要者に広く認識されるようになったと認めるのが相当」





として、「エムブレム」との略称も「ファイアーエムブレム」の略称として需要者に認識されているとも認定。続いて、「ファイアーエムブレム」と「エムブレムサーガ」との名称類似性について





「「エムブレム」は紋章や標章を意味する普通名詞となっている「エンブレム」と異なり、「エムブレム」は造語的印象を受ける特徴的表記であることは否定できない。また、「エムブレム」をタイトルに含むゲームは「エムブレムサーガ」以外にはない




ということを前提とした上でその類似性を判断していきますが、ここからさらに長くなるため、続きは次回にしたいと思います。「ファイアーエムブレム事件の続き





【その他著作権事例Q&A】



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