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幸せの向こう側

読まれた方が
幸せな気持になる記事を更新したいです

今年も一か月を切りました!

もう少しで、全員がひとつ年齢を重ねます(笑)

その前にクリスマスが来るので一足早く、お凛シリーズでクリスマス気分をどうぞ♪

 

題名 お凛のクリスマス
 

お凛の暮らした時代は遠い遠い昔、お正月が一番楽しい行事だった。

 

しかし、時代の流れも大きく変わり、クリスマスという外国のお祭りが、お凛の村でも話題になってきた。今年5歳になった孫娘も、近所に住む子供から影響を受けるのは時間の問題だった。

 

その頃

 

爺ちゃんは骨董屋に並ぶ、舶来物の白く輝く壺を手に入れ、上機嫌な日が続いていた。

高尚な輝きを放つ壺は、割られては一大事で、いつも茶タンスに隠している。だから、お凛が遊びに出てから、目尻を下げ磨いていた。

 

やがて、お凛はいつもようにドタバタと茶の間に帰って来たが、今日の足音は一段と興奮しているようだった。

 

孫娘は爺ちゃんの前に立ち、両手をグーに丸めて言う。

 

「のう、爺ちゃん。知っちょるか?」

「何をだ?」

 

爺ちゃんは孫娘が帰って来たので、ガラス戸を開け丁寧に壺を片付けている。

 

「爺ちゃん。クリスマスって知っとるか?」

「ああ、知っとるぞ。サンタクロースはな、赤い服を着てアメリカからソリに乗って来るんだ」

「ほ~」

「お凛、去年はサンタから落書き帳をもらったろ」

「うち、もらったかの」

 

去年はまだ4才のお凛。誰からもらったのか、忘れたようだ。

 

「のう、爺ちゃん。今日はサンタが来るって、お富が言っとったぞ」

「そうだ。お凛の大好きな物を背負ってくるんだ」

「すんごいの。うち、楽しみじゃ」

 

心のやさしい爺ちゃんは、幼いお凛の心を盛り上げた……のが失敗だった。

 

☆☆☆

 

太陽が海に沈み、待ちに待った夜が来る。

窓の外を見れば、もっさもっさと雪が降り、茶太郎は降り積もる雪を小屋の中から眺めていた。お凛は雪がもっこり降ると興奮し、サンタのプレゼントも待ち遠しい。

 

孫娘は窓の外を見てサンタクロースを待っている。枕元に小さい靴下を置いたまま、窓の敷居に両手をつきピョンピョン跳ね喜んでおる。

 

「のう、爺ちゃん」

「どうした、お凛」

 

お凛は大きな目を輝かせて言う。

 

「サンタは、まだ来んのか。うちの家が分からんかもしれん」

「お凛、大丈夫だ。もう少し待つんだ」

「ほ~、サンタは足が遅いの」

 

孫娘は餌を目の前にした犬と同じ。お座りも出来なければ、お手も出来ず、一箇所をグルグル回る茶太郎と同じだ。犬は飼い主に似ると言うが、今は、どっちが犬か分からない。爺ちゃんは心の中で言った。

 

『こりゃ~、寝るまで大変だ』

 

お凛はサンタクロースが気になってどうしようもない。窓から見るだけでは我慢が出来ず、勢い良く玄関に走り出す。


「うち、外をみてくるじゃ!」

「お凛、寒いからダメだ」

「いいんじゃ。きっと、サンタが来とる」

「サンタは寝ないと、来ないんだ」


ありゃ~、行っちまったぞ。孫娘が言うことを聞くはずもない。

 

しかし、お凛は寒かったのか、すぐに茶の間に戻ってきた。薪ストーブの前に座ると、小さな手を暖めている。

 

爺ちゃんも、興奮するお凛を静めたい。いやいや、どうせ、くれてやるプレゼントなら、早く喜ぶ顔も見たくなる

 

爺ちゃんは立ち上がると、満面の笑みを作った。


「お凛!」

「なんじゃ?」

 

爺ちゃんは、少し離れた寝床の窓を見て指差した。

「サンタが、来たかもしれん」

「おっ、やっと来たんか」

 

孫娘は一気に立ち上がり、頭を揺らして寝床に走ると窓から外を見る。大きな頭が右に左に動き、夜空を見上げたと思えば、暗い沖合を眺めながら言った。

 

「爺ちゃん、おらんぞ」

「サンタは、そこまで来とる」

「ほ~」

 

爺ちゃんは可愛い孫娘の為、村のオサナイ商店でプレゼントを買っていた。サンタクロースが用意したプレゼントは、赤・青・黄色に染まった金平糖。白い砂糖がおやつの孫娘には感動の味になるはずだ。

 

爺ちゃんは急いで茶タンスから金平糖を取り出すと、煙突にぶら下げた。お凛は真剣に窓の外を探している。

 

「お凛、サンタがきたぞ」

「おっ、どこじゃ、どこじゃ、どこに来たんじゃ」


お凛は茶の間を見渡すが赤いサンタクロースはいなかったが、煙突にブラブラ揺れる、カラフルな金平糖を見つけた。

 

「おっ!これは、なんじゃ?」

 

金平糖は、村一番の銘菓。病院仲間の婆ちゃんにも一番人気の甘いお菓子。爺ちゃんが自信満々で言う。

 

「お凛、サンタがくれた金平糖じゃ」

「……」

 

孫娘の反応が薄い、爺ちゃんが素早く異変を感じた。あれほど輝いていた孫娘の表情が、みるみる曇った。お凛は、もう一度金平糖を見たが、すぐに下を向く。

 

そして、小さな小さな声で言った。

 

「ほ~……、そ~なんか。うちのプレゼントは金平糖なんか」


爺ちゃんが想像した、孫娘の笑顔はない。笑顔どころか、滅多に泣かない孫娘の瞳に涙が浮かんでいる。可愛い孫娘の姿が痛々しい。

「のう爺ちゃん、裏のお富はのう」

「……」

「タヌキの人形をもらうんじゃ。頭に赤いリボンがついとると言っとった」

「……」

「サンタは、うちがキライなんじゃ」
「……」

 

爺ちゃんは、お凛の欲しい物を聞くのを忘れ後悔した。サンタのプレゼントを、自分の好きな物で決めていたので。

 

爺ちゃんは、後先考えずに言った。この場を逃れる為だ。

 

「お凛!」

「……」

 

返事は返って来ない。

 

「サンタがプレゼントを間違えたんだ」

 

孫娘の顔に輝きが戻る。

 

「おっ!そうなんか」

「そうじゃ、そうじゃ。この金平糖は爺ちゃんにくれたんだ」

「ほ~、サンタもそそっかしいの。呆けたんかの」

 

お凛の表情が笑顔に変わると、爺ちゃんは現実に引き戻された。

 

『さあ、困ったぞ。これからどうする。プレゼントはどうする』

 

孫娘は立ち上がると言った。

 

「爺ちゃん。うち、今日は寝ないぞ」

「どうしてだ?」

「サンタが、また間違えたら困るんじゃ」

 

爺ちゃん、絶体絶命のピンチ!

 

困った、本当に困った。薄くなった頭を撫でて考えてもいい案が浮かばない。これで欲しがるプレゼントを用意できなかったら大惨事になる。そんな心配をよそに、孫娘は小さな手を前に出すと

 

パッと開いてから言った。

 

「うち、金平糖を食べて待つんじゃ」

 

つづく