私の父方の曾祖父、
つまり、ひいじいちゃんには、
愛人がいた。

ひいじいちゃんは、私がお腹の中にいた時に亡くなったので、

「伝説」

しか知らない。
が、明治生まれのひいじいちゃんは、
今の時代には考えられない、破天荒な生き方の人だった。
そういう柔軟性のある時代だったのかも知れないけど。

実際、幾つまで生きたのかは知らないが、
私が生まれるすぐ前という事は、そこそこ長生きだったんだろう。

親分気質のひいじいちゃんと、姉御肌で姉さん女房のひいばあちゃんは、なんやかんやとあったんだろうが、それでも素敵な夫婦だったんだろうと想像がつく。

その頃、まだ「愛人を囲う」という事が
ステータスとして存在した時代だったらしく、
ひいじいちゃんは、浮気をしてたとか、適当にお金を払ってたとかではなく、実際、

囲っていた。

生活の面倒を見ていた、という事。
ガチの愛人である。

戦争で息子を亡くし、息子の嫁と大勢の孫達を一手に引き受け、単身東京で働き、引退しても良い年齢になっても働いたひいじいちゃん。

そんな家庭に、愛人を囲うお金があったのが不思議だが、とにかく囲っていた。

国会議員秘書だったから、普通の家庭よりは頂いていたとは思うけど。

しかもかなりのご近所さんだったらしく、
私の父は、幼い頃、たまに愛人宅にお使いに行かされていた。

孫に愛人へのお使い…(笑)。

昔の愛人は、正妻公認だった。
ちゃんと

「愛人の所へ行って来る」

と告げて出掛けていく。
そんなひいじいちゃんを、ひいばあちゃんは、当たり前の様に玄関まで見送り

「お気を付けて」

と言葉を添える。
そして、ひいじいちゃんが出掛けてしまうと、嫁である私の祖母と一緒に泣いていた。

それでもひいばあちゃんは、その事で、ひいじいちゃんには一言も何も言わず、ただ耐えて、生涯寄り添った。

ひいじいちゃんの愛人は、相当若かったらしい。

独身でも全く珍しくない年齢だった。

そしてある時、ひいじいちゃんから身を引いた。

彼女に、普通の女性の幸せを願ったのだ。

どういう経緯かは知らないが、
恋愛なのか、お見合いなのか、とにかくひいじいちゃんは、
愛人から身を引き、彼女を嫁がせた。

「嫁に行かせた」

と聞いているから、幸せにしてくれそうな相手を探してお見合いさせたのかも知れない。

そして、お互い、それぞれの家庭を守り、接点を持つ事なく暮らした。

そして年月は経ち、ひいじいちゃんは、この世から去ろうと床に就いていた。

そこそこのご近所さんだった愛人は、そこそこご近所さんに嫁いだらしく、風の噂というものが伝わる距離だった。

その噂が孫の耳に入るレベルの距離だったのだろう。

沢山の孫達の1人が、なんの気もなしに伝えた。

「愛人が死んだよ」

と。
子どもだから、相当あっさりと伝えたのだろう。
これを言ったのは私の叔母だから、おばあちゃんを泣かせる愛人の存在を、子どもながらに「女」という目線で憎んでいたのかも知れない。

それからのひいじいちゃんの弱り方は早かった。

その話を聞いて間もなく、ひいじいちゃんはこの世を去った。

この話を父から聞いた時、私はまだ子どもだったから分からなかったけど。

今思えば、
ひいじいちゃんは、本当に愛人を
愛していたんだと思う。

本当に愛していたからこそ、
彼女を縛らず、女としての真の幸せを願い、
自らが身を引き、嫁がせたんだろうと思う。

それが彼女にとって、心から願う幸せではなかったのかも知れない。
それでも彼女も、ひいじいちゃんを愛していたからこそ、その話に素直に従い、
もしかしたらひいじいちゃんが選んだ相手に嫁いだのかも知れない。

彼が選んだ男性なら、間違いない、と。

そして、自分より早くに死ぬ訳がない、と思っていた若い元愛人に先立たれた事は、
ひいじいちゃんにとって、死期を早める程の痛みを伴ったんだろう。

既婚者が独身の相手に恋する事、
それ自体が悪いとは思わない。

ただ、

相手の人生に責任を持てるか

そこは考えなければならないと思う。

特に独身なのが男性の場合。

女性は、相手を思いながら1人で生きていく選択が出来る程、強い。

男性は、相手を思いながら1人で生きていける程、強くはない。

愛人を囲い、時期が来たら身を引いたひいじいちゃん、
その事に素直に従った愛人、
愛人の存在を認め、夫には不満一つ漏らさなかったひいばあちゃん。

誰もが潔い。

お金がなくても、頼られれば貸すと決めてしまうひいじいちゃん。

ひいじいちゃんの顔を立てる為、お金の工面に奔走したひいばあちゃん。

そんなひいばあちゃんに、私は、
よく似ているらしい。

魂の存在になった彼らには、
きっと私の心の中なんて透け透けだ。

今の私の想いを知って、彼らはどう感じているだろう?

「そういうのも、有りだよ」

そう言って、クスクス笑っていそうだ。

所詮、激動の時代を、その時代らしく生き抜いた大先輩には敵わない。

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