「悩みのるつぼ」朝日新聞 be 2024.6.15.

 

相談:「いじめたことを後悔している」

相談者:女性 30代

 

回答:「何をどう謝るか、イメージは?」

回答者:文筆業 清田隆之さん

 

相談内容:

中学生の時、友人に

いじめをしたことを後悔。

無視や仲間はずれなど、

れっきとしたいじめ行為。

 

私自身、幼少期から

同じようなことをされたが、

一番大きな心の傷は

友人を傷つけてしまったこと。

 

正直、当時は罪の意識はなく、

いじめが社会問題化する中で

どんどん自分がしたことの

卑劣さを自覚するように

なった。

 

友人とは中学卒業以来

一度も会っておらず、

所在もわからない。

 

人づてに「良いところに

就職した」と聞き、私が

友人の人生を終わらせては

いないようで、ほっとした。

 

友人に謝りたいが、一方で

自分が友人の人生に

関わってはいけないとも思う。

 

「幸せでいてほしい」

「自分のことなど

忘却してほしい」と

願う日々。

 

同時に

「自分は最低な人間だ」

「幸せになる資格はない」と

卑下する毎日。

 

何をするにも大きな後悔に

苛まれ、生きる意欲が

枯渇しつつある。

 

でもやっぱり幸せに、

前向きに生きていきたいと

願ってしまう。

私に何か言葉をください。

 

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回答:

きちんと謝罪することができ、

また相手もそれを受け入れ、

傷や後悔、恨みやわだかまり等に

区切りがつき、互いに次の一歩を

踏み出す。

それが、ひとつの理想形。

 

仮にそのような地点を

目指すとして、

何をどう謝るか、

相談者さんの中には

どのようなイメージがあるのか。

ここが重要なポイント。

 

『謝罪論』という本を書いた

哲学者、古田徹也さんは、

その元になった論考で

こう述べている。

 

謝罪とは<当該の出来事を

いま自分がどういうものとして

認識しているのかを表明>した上で

<自分がこれから何をするかを

約束する>行為だと説明。

 

これにならい過去・現在・未来と

あらゆる角度から自らを省み

そこに存在する動機や心情、

理由やメカニズムなどを

できる限り言語化することが

その第一歩だと考える。

 

ただそれを自分だけで

するのは難しいかもしれない。

 

いじめの本を読むとか、

居場所作りや傾聴ボランティアの

活動に参加するとか、

そういうアクションも、

謝罪に向けたプロセスに

なると思う。

 

実際に相手と連絡を取るか

否かは、これらを踏まえた上で

考えるべき問題ではないか。

 

謝るための覚悟ができたら、

そこで行動を起こすのがいい。

リスクを考慮して、直接的な

謝罪は避けたとしても、

自分なりの償いはできるはず。

 

スッキリ解決できればいいが、

現実はそう簡単にはいかない。

 

でも後悔や罪悪感を携えながら

前向きに生きる道もある。

 

反省や謝罪は現代的なテーマ。

誰もが他人事にできない問題。

だから、社会全体で模索して

いけたらいいなと願う。

 

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電話相談では被害者側の

悩みを聴くことが

ときどきあります。

 

中学生時代のいじめで

いまなお生きづらさを

抱えている。

 

当時の経験が蘇り、

いまも人を怖れる。

 

いじめた人たちが、

人生を楽しんでいるのは

許せないなど。

 

いじめた側の相談は

あまり聞きません。

忘れてるのでしょうか。

 

相談者さんは、

「私自身、幼少期から

同じようなことをされたが、

一番大きな心の傷は友人を

傷つけてしまったこと」と

思っておられます。

 

当時は、それをいじめと

認識していなかった。

されたことを他の人にも

しただけということ?

 

いまは後悔するほどに、

成長したということ。

 

いじめられたご友人も、

つらい経験を乗り越えて

成長なさったのでは

ありませんか?

 

だとしたら、

忘れてしまいたい黒歴史。

 

その加害者が突然現われ、

謝罪するって、

どうなんでしょう。

 

瞬間、昔の被害者としての

感情が蘇るはず。

被害者のレッテルを

貼られる。

不愉快では?

 

いじめた人に謝られて、

泣いて喜ぶなんてことは

ないと思いますが。

 

相談者さんは過去の出来事を

許してもらえたら、

気が済むのでしょうか。

それって、自己都合では?

ご友人は、どう思うでしょう。

 

古傷のかさぶたを

剥がすようなことに、

なるかもしれません。

 

罪の意識があるなら、

回答にあるような、

アクションを

起こしましょう。

 

後悔や罪悪感から、

学ぶこともあるのです。

 

いじめられた人たちが、

相談と回答を読んで、

どう思うか。

 

それはまた、別の話。