♪月が2つ、消えない空 ありえない事…なのか?

漂着した主人公、ふと見上げた空には2つの月が…!。

「ゼロの使い魔」、「デューン 砂の惑星」、新シリーズの「猿の惑星」など
SF映画やファンタジー漫画などで「ここは地球ではない!」という事実を一目瞭然に表すためにしばしば用いられる手法です。

Double Moon 2つの月とルイズ


ところでこんなことは現実的に在り得るのでしょうか?
目を地球の外に転じれば、例えば木星は月サイズの衛星を4つも持っています。しかし木星は人間型の生物が住めるような環境ではありません。
テラフォーミングすれば人間も住めるかもしれない火星は衛星が2つありますが、どちらもせいぜい隕石程度で月としては小さすぎます。
ダークホース、冥王星は実は衛星が複数ありますが、第1衛星カローンは大きいもののヒドラ、ニクスは小さすぎます。
地球外に丁度良い実例を求めるのは今のところは無理そうです。

そこで…
昔話題になった物理学教授ニール・F・カミンズ氏の著作「もしも月が無かったら」の逆パターン、というと大げさですが、
地球と月をベースにもう一個の衛星「第2の月」を加えた場合で検証をしてみました。

考えるにあたっては東京工業大学 井田茂博士の著作「異形の惑星」を参考にさせていただきました。
また一部の絵については壁紙・宇宙館様のサイトのフリー素材を加工して使用させていただきました。

では、以下ちょっと長めですがご興味のあるかたはしばしお付き合いください。


<見慣れた空> …地球の月
天地開闢より46億年目の今日、月は地球から約38万kmの距離をおよそ27日で公転しています。

Double Moon CG 月とビル

これは見慣れた我々の月ですね。

これを図に表すと示してみると以下のようになります。

Double Moon 月軌道

まずはこれをシミュレーションしてみましょう。
本当は微妙な楕円軌道を周っていますがそれはこの際無視! 円軌道で考えます。
どのみち潮汐力などはシミュレートしきれないし(※1)、他の天体…金星木星太陽の影響も考慮していません。
これで向こう100万年分を1時間毎単位で軌道計算し、座標にプロットします。
プロット点は増えすぎると動きによっては分けがわからなくなるので100年で一個の割合で描きます。

ではシミュレーション結果です。

Double Moon 軌跡_月_10万年

当然ながら、月単体なら安定した軌道を描いていることが分かります。
これをベースにして様々な「第2の月」を加えつつ、可能性を探っていきましょう。

なお、
惑星学を研究している大学などでは軌道計算をする為の専用並列処理コンピューターを自作していたりするそうですが
当方は非力なノートPCでせせこましく簡単な自作プログラムを動かしているだけですので、この後に示すシミュレーション結果の数値に誤差があることと、
あまり長い経年変化を追えないことを予めおことわりしておきます。
出てくる結果は「大体こんな感じ」程度にとらえてください。



<必要な条件とは>
では最初に「第2の月」を加える際の条件を考えてみましょう。
考えなくてはならないのは「第2の月」の質量、軌道半径(地球からの距離)、そして見た目の大きさです。

見た目の大きさとしては、夜空を見上げたときに「月が2つある!」という事をパッと見で気付かせなければなりません。
つまり…月より大きく見える分にはどのくらい大きくてもいいですが、小さすぎるともう何だかよく分かりません。 

Double Moon CG 月と0.01月質量2倍軌道第2の月と城

例えばこの絵だと、衛星なのか、火星が大接近しているのかわかりませんね。
視野角-見た目の直径は出来れば少なくとも月の半分くらいにしたいものです。

また、質量と軌道半径については月と第2の月が継続して安定的な軌道を保持できるかどうかにかかわってきます(※2)。
むやみな位置と質量の第2の月を置いてしまうと、そのうちに軌道を外れて飛んでいくか、お互い衝突するか、最悪の場合地球にぶつかってきます。

では具体的にどのような「第2の月」があったらいいでしょう?


<近くて小さな月> …1/00の質量「第2の月」
さて、最初は月よりずっと小さい質量の天体が、より近い軌道を回っているという想定で第2の月を置いて見ましょう。

Double Moon 軌道0.5倍

具体的には質量は月の1/100の、軌道半径は月の半分。 密度や反射率は月と同等として、
第2の月を置いた初めの夜空はこんな景色になります。

Double Moon CG 月と0.01月質量0.5倍軌道第2の月と城 b

視野角は月の42%、明るさは約18%
ちょっと小さめですが、わりといい雰囲気です。

では軌道はどうでしょう?
もし仮に、第2の月だけしかなかった場合で算出すると

Double Moon 軌跡_0.01月質量_0.5R_10万年

この位置で安定した軌道を取ることが分かります。

ではいよいよ月と第2の月を同時に動かしてみましょう。
プロットの色は先ほどまでと同じく、青が月、ピンクが第2の月です。



Double Moon 結果_0.01月質量_0.5R_10万年

ん?… 
第2の月は月の影響で軌道の乱れが生じていますね。
先ほどの第2の月単体の場合に比べて軌道が内側に押し出されているようです。

計算は100万年しかしていませんが、もっと長い年月が経つともっと地球に接近するかもしれません。
そうなったら、人類最後の日はこんな↓景色が見られるでしょう。

Double Moon 壊滅0.01月質量

時間があったら億年単位の計算をやってみたいところです。

→結論: 危険かもしれない。 衝突した場合は人類滅亡


<月の双子星> …月と同じ質量の「第2の月」
では次に、月より外側にあった場合を考えてみましょう。
先の軌道に対し、月を挟んで対称位置である軌道半径1.5倍の距離に第2の月を置いてみます。

今回は距離が遠いので、ビジュアルを考え大きさは月と同等とします。

Double Moon 軌道1.5倍

初期状態の夜空はこんな景色になります。

Double Moon CG 月と1月質量1.5倍軌道第2の月と城

視野角は月の66%、明るさは約40%
これもなかなか迫力ある情景が拝めます。

さて、計算を開始してみましょう。



Double Moon 結果_1月質量_1.5R_10万年

…!
なんじゃこりゃぁ。


Double Moon 結果_1月質量_1.5R_10万年_広域

より広い範囲で見てみると、青い点が地球軌道から飛び出しているのが分かります。
2つの月同士が相互干渉して軌道をはずれ、普通の月のほうは地球の重力圏外に放り出されてしまいました。
第2の月は無茶苦茶な軌道で暴れまわり、いずれ確実に地球に衝突することになるでしょう。

最終状態。地球最後の日↓

Double Moon 壊滅1月質量

→結論: 大変危険。地球破壊レベル

そしてこの衝突による地球の破片から、新たな月が作られる…かも。


<遠くの月の双子星> …月と同じ質量の「第2の月」その2
今度は、軌道半径を月の場合の2倍にまで広げてみましょう。
同じく質量は月と同等。

Double Moon 軌道2倍

これならなんとか軌道が安定してくれるでしょうか?

初期の夜空はこんな景色、

Double Moon CG 月と1月質量2倍軌道第2の月と城

視野角は月の50%、明るさは約25%
ビジュアル的な大きさは悪くないです。

さて、計算を開始してみましょう。



Double Moon 結果_1月質量_2R_10万年

おや、 安定したのでしょうか?それにしては第2の月のプロット点が妙に少ないようです。

広域を見てみましょう。すると…

Double Moon 結果_1月質量_2R_10万年_広域

今度はピンクの点が飛び出しています。
しばらく平穏であっかかに見えたこの世界でしたが、 
月は突如として第2の月を放り出し、その後何事も無かったかのような静寂が訪れたのでした。

太陽系や系外惑星を研究されている井田茂博士によれば、複数の天体が相互に影響を及ぼす系の場合、
いままで一見安定していた軌道が突然乱れることはままあるそうです。

これなら人類や地球そのものは無事で済みそうですが…

Double Moon ルイズ、月がなくなった

「才人!このバカ犬、月が1個無くなっちゃったじゃないの!探してきなさいっ」

→結論: 結構危険。ルイズに踏まれるレベル
☆!#♂ж


第2の月の軌道をもっとずっと遠くに離せば安定するでしょうが、見た目の景色は面白くなくなります。
どうも、このままだと見栄えの良い範囲で月と同じ質量の衛星をもう一個持つのは難しそうです。
しかし、2つの月を置く方法はコレだけとは…限りません。

…つづく かも



※1)
潮汐力は地球直径、密度分布、自転周期、もっと正確さを求めるなら大陸移動を考慮する必要があります。

※2)
衛星が同一平面上で軌道交差無しに公転している場合、衛星同士はお互いの干渉により徐々に離れていこうとする力が働きます。 この力は衛星同士の質量が大きければ大きいほど、また、衛星同士の軌道が近ければ近いほど強くなり、長い年月の末小さい質量の衛星を軌道外に跳ね飛ばしたり、中心星に落下させたりしてしまう事があります。
(意外に思われるかもしれませんが、擬似的な斥力が働くのです。この辺の原理はいずれ書こうと思います)
また逆に、中心星(この場合は地球)の質量が大きければ大きいほど、この衛星同士の反発を防ぐことができます。
木星や土星などが沢山の衛星を従えているのは中心星の質量が巨大(木製は地球の約300個分)であるためです。




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[参考文献、関連文書]
天体と背景のCGは以下のフリー素材を使わせていただきました。

壁紙・宇宙館


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