✨【少しずつほどけていく心 ― 癒しと気づきの始まり】
再会から数日。
私はどこか胸が落ち着いていた。
前みたいに相手の言動で一喜一憂しない。
追いかける苦しさでもなく、
諦めの静けさでもなく――
ただ、信頼に近い静かな安心感があった。
その頃、不思議なことに
彼(彼女)からの連絡が少しずつ増え始めた。
短いメッセージ。
他愛もない話。
ほんの一言のやりとり。
それでも、心はふわりとあたたかくなった。
以前の私は
「もっと欲しい」「もっと近づきたい」と
求めすぎていたのかもしれない。
でも今は違った。
“ただ繋がっているだけで嬉しい”
そんな穏やかな感覚が、胸の奥に広がっていた。
一方の彼(彼女)もまた、
少しずつ変わり始めていた。
逃げる理由や恐れを
一人で抱え込んでいた日々から、
「向き合いたい」
そう思い始めたのだ。
近づくことが怖くなくなったわけじゃない。
それでも、あなたと話したい気持ちが
恐れよりも少しだけ勝つ瞬間が増えていた。
ある夕方。
短いメッセージのやりとりが続いた後、
彼(彼女)からこんな言葉が届いた。
「今日ね、ふと思った。
またこうして話せて嬉しいって」
たったそれだけの言葉なのに、
涙がこぼれそうになる。
無理にこじ開けようとしなくていい。
ゆっくりでいい。
この人のペースでいい。
そう思えた瞬間――
サイレントの痛みで固まっていた心が
少しずつ溶け始めていくのを感じた。
二人はまだ、完全に素直にはなれていない。
だけど、もう心は閉じていない。
“愛は進んでいる”
その確かな実感だけが、
静かに、でも力強く胸の中に灯っていた。
(次回「二人の距離が縮まる夜 ― 素直な気持ちが零れ落ちる瞬間」へ続く)
