①クッチはカバン。丈夫なナイロンで出来たロイヤル・ブルーのお洒落な通勤カバン。クッチは、濁点のない名前にコンプレックスを感じながらも、懸命に明るく振る舞っていた。



↑グッチ

しかし、グッチと間違われて悪く言われることも少なくない。それはクッチのせいではないのに、周りの人の無知や偏見によって傷つくこともしばしば。


会社の人たちも、そんなクッチの弱みを見抜いていて、面倒な会議の書類作りや、誰もやりたがらない雑務を押し付けてくる。


クッチは、グッチのようにキレイな仕事をして大切にされるためには生まれてこなかった。


自分の名前のせいではないと分かっていても、周りの態度に、クッチはさらに生きづらさを感じた。


会社から持ち帰った仕事を、コンビニ弁当片手に深夜までこなす。周りの人の陰口や嫌がらせにも耐える日々。


何故ならクッチはいつか自分の名前を誇れるようにな自分でありたいと願っていたから。

 ↑クッチ


しかし体は正直でアパートの階段を降りる際に目眩を感じ、手すりに掴まらなければ降りられなくなったクッチ。


彼女は私、老人になった気分だけど、手すりってありがたいなと感じた。常にどこか前向きなのがクッチの持ち味。


困難な状況にも負けずに努力を続ける頑張り屋さんのクッチにも病魔は容赦なく襲い、会社で倒れて救急車で病院に運ばれるはめに。


病院での診断結果は、自律神経失調症。クッチの心と体は悲鳴を上げていた。


それでもクッチはすぐに仕事に復帰しようと出社すると、給湯室で聞こえた同僚たちの声に再び倒れる。


「伝染病だったら困るから、彼女と話すときはマスクを忘れずに ( `ิิ👅´)」

その言葉は、クッチの心に深い傷を負わせた。


続く。