あの人が遠くに行ってしまう。


それを聞かされてから、心の底が抜けたように足元が安定しないような、空間だけが寒々しく空いているような、そんな感覚に陥っている。


力が入らない。

温度を無くした感情が、暗く重くお腹の奥底に沈み込んでいるようだ。

「無気力」が自身を呑み込む。


何が起きても感情は沈み込んだままで。


その重さに「自分」が潰されそうだ。


苦しいのにもがく力も無く。


ひとりになると、ただただ涙が静かに溢れてくる。


逢いたい‥

ただあの人に逢いたい。


しかし、憚るものが多過ぎて。

簡単な事なのにどうにも出来ない。

動きたくても動けない。

そして


あの人の気持ちを知るのが怖い‥


もしかしたら‥と不安が更に苦しみに負荷を掛ける。

全ては自分の思い過ごしだったのではないかと。

都合良く考えて勝手に舞い上がっていただけなのではないかと。


あの人への「愛情」と思っていたものは、実は「執着」なのではないのかと。

自分の感情を「勘違い」や「思い込み」で間違って認識されていたのではないかと。


自分の向けている「愛情」は本当に「愛情」なのか、と。



そんなことを幾度も考え巡りながら

「答え」を求め。


しかし、結局はあの人の「存在」を愛しているのだということに行き着く。


「恋は盲目」ではなく、

「良いところ」も「悪いところ」も全てを理解した上で、それでも全てを「受け入れ」て共に歩んでいける「覚悟」が出来る「存在」であるのだ。


「ありのまま」のあの人を守っていきたい。


ただこのタイミングでの現状は、今は「離れる」ことがお互いに必要なのだと言われているのではないかと‥

恐らく自分自身が未熟な上に起こり得ているものであるように思う。


自分を「成長」させるために。

やるべき事に正面から向き合うために。


いつまでも逃げ続けているのでは、変わるものも変わらない。


その「きっかけ」を与えてもらえたのだ。


頑張らなければ。

今は振り返らずに、ただひたすら前を見て進まなければならないのだ。


そのうち振り返れるようになった時に、しっかりとあの人を抱きしめてあげられるように‥