忘れないと

気持ちに蓋をしないと

そう思うのに。

大事な。「あの人」を想う「自分」の気持ちが。
果たして「蓋」をしてしまっていいのだろうか。

自分の知らない「感情」をたくさん引き出してくれた「あの人」。
その「感情」は紛れもない「自分」から出たもの。
そこに「偽り」は一切無い。
「鎧」で塗り固めてきた、そんな自分で良いと、そう思っていたからこそ。

その純粋な「想い」に「蓋」をしてしまって良いのだろうかという「不安」「罪悪感」。

きっと今までもこれからも「あの人」以上の人に出会う事はないだろう。
自分にとって、他の誰とも違う、「唯一無二の存在」なのだ。

「あの人」には「あの人」の理由があって「関係」を終わりにした。
それを自分が引き留める事は出来なかった。
「あの人」が後悔するようなことにはなって欲しくなかったからだ。

なのに「期待」をしてしまっている。
「嫌い」だと言われなかったがために。
嫌ってくれていた方が諦めも付いたのだろうか。

いや、恐らくこの「想い」は変わる事はないだろう。
だからと言って、自分から行動を起こすつもりは無い。相手の迷惑になるだけだからだ。


静かに仄かな温もりで自分の中に留めておこう。
想うだけなら、「あの人」の幸せを願うなら迷惑にはならない‥だろう。


そんな決意を打ち砕くかのように。
ふと出た買い物先で会ってしまった。
お互いに声を掛ける状況では無かったが、お互いがすぐに気付いていたように思う。

こんな時に限って。
こんな時だからか。


まるで「相手の存在を忘れるな」とでも言わんばかりのタイミングで。


「期待」と「苦しさ」で抉られるような心でお店を後にする。
「あの人」の気持ちを想像しながら。