私たちをどうしようもなく癒す、あの永遠のようなグリーンになりたい。
空も海も、この色を持っている。
人間はどうかな?
少し浮き出たこの血管の色が、一番近いのかな?
でもどうして、触れようとして貫くと、この緑はただの真っ黒だよ。
知っているかな、血の色って、赤と言うよりは気が遠くなる程黒っぽい色をしています。
そして、私が絵を描く時の下書き、そうこの輪郭を成すには、やっぱりあんな黒を使います。
線が繋いでくれないと、色は居場所が無いみたいだけれど、自由な木漏れ日のようにも見えて、あの人は好きみたいだよ。

『汚い心とは裏腹に、汚れを知らない透き通るような何かを生み出したいのさ。お願い、俺の言い訳を聞いてよ、これは後に、理由にだってなるんだから。……ずっと考えてたんだ。何故あの時、ガラスが美しいと思ったのか。ガラスのような透明に触れていたいと思ったのか。汚いからだよ、俺が。醜いことばかり考える人間だから、当然中身なんて目も当てられない汚さをしているんだ。だから、綺麗なものを生み出せるようになれば、救いようがあると思ったんだ。だって、心は見えないから、誰にも知られないんだから、この手で美しいものさえ作っていれば、誰も俺を疑わないよ、誰も俺のことを、あいつは汚らわしいと言わないでしょ?白い目で見られないように、バレないように、悟られないように、美しいものを触り続けていればよかったんだ、俺の人生はそうだと思った、少なくとも自分では……』

神様は違うと言う?

違うと言っていたのかも。

追い出されるまで、全く気が付かなかった。
自分で決めた道も、進ませてくれないこともあるんだ、なんていうか、がっかりだな。
俺は今落ち込んでいるのかもしれないけれど、もしそうなら、もう過去になってしまったってことか。
人生が変わるのは、案外、早い。
真っ向から挑んでったのに、返り討ちにあったみたいで少し悔しいぜ。
別の道もそれはそれで楽しい、あっちの方だって、今は閉ざされたけど、またどこかで繋がるかもしれない。
だけど、色を抜かれたみたいなこの気持ちは、空中を舞うみたいに軽くて虚しい。

人生に色をつけたくて、生きてるってのに。
永遠に、グリーン。

この世で一番目にしたいんだ。
自然の前では恥ずかしがることなんてないし、誰も私を理解しようとしない。
私は憧れてしまうけど、背伸びしても届かない。
爽やかで美しくて、強くて逞しい、そして、雨に濡れると奏でるあの色々が、近頃彼を一番癒す。

傷ついた心を慰めるのは、人だけじゃありません。
あいつらは傷つけ合うし慰め合うけど、この雄大な自然は、人を殺して豊かにします。
傷つける、なんてのはヤワさ。
生かすも殺すも一瞬です。
それこそが嗚呼、永遠だから、俺は黒や光や闇や車、私は言葉や空や海や服を着て、懲りずに何かを口ずさみ、殺されるまではない寿命を生きるということになるのか。

どうかな。
そうやって、人間でいたいと思うの?
それとも、目に映るあのどれかになりたいの。
言い訳も聞きましょう、いつかちゃんと理由にするために。
最初から席に着いていましょう、木々に囲まれていても、立ち並んだビルから見下ろしても、ここはあんたの部屋です。
その空間では絶対に自殺は計れねえ。

ずっと、窓の外から少しだけ見える。
揺れる、揺れるグリーンを愛しく思って。