もう死にませんか。
この人生、終わらせませんか。
疲れきった顔で乾いた笑いで、そう言えたら合格ってことで。

何度も同じ文字を行ったり来たりしちまう。
描きたいことも、書きたいことも、いつからか全くうかばなくて、転職に疲れた今日、やっぱり作家を目指そうと思っていたのに、また予定が狂う。

久しぶりに本を一冊読み終えた。
二、三時間経っていた。
最後の方は正直面倒になってきていて、文字を辿りながら別の考え事をしていた。
何もすることがなくて、意を決して読み始めても、熱くなれるのはせいぜい全部の半分。
飽き性。
ちくしょう。
なんでこんなに、あっという間にすり抜ける。
長く、一生、何でもいいから続けたいのに。
継続しないから、能力なんか何も育たず、力なんて呼べるものはどこにも備わらず、人と関わる時は優しく、優しく努めることしかできないじゃん。
優しいのなんて、ただの弱さだ。……。

まあ卑屈になってもしょうがない、飯でも作って、腹を満たしてごまかすんだ。
死にたいと思うことすらも薄っぺらくて、弾かれた先でも俺は溶け込めない自信がある。
弱くもなれず、強くもなれない、ミディアムヒューマン。
もちろん、おいしくない。
誰も手をつけないから腐っていくだけ、捨てるのも忘れてる。
……またフライパンを焦がしてしまいました。
削るのも面倒で、何よりも萎えているから、俺は直ぐに新聞紙に包んで捨てちまうんです。
次のを買えばいい話でしょ?
自分、よくされますよ。

この世に疲れた命なら、現在進行形よりは、丁寧に扱ってくれるよね。
IHの音声が凛として答える。
「加熱を始めます」
掌をべったりここについて、大火傷をするのもいいかもしれない。
火傷をする前に手を離してしまいそうだから、やらないけれど。
適当に煮立った熱湯に顔を近付けると、すぐに眼鏡が曇った。
煩わしいし、馬鹿馬鹿しい。

だから、いつまでたっても生なんだ。