あばらが痒い。
最近は体の内部が気になる。
骨や心臓に、異常がなければいいのだが。
うんと甘いのがいい。
生クリームとか、いやそれよりもべっこう飴や水飴のような、まあそんな感じの。
黄金の飴が口の中で尖ってゆく、それもまた良い。
僕は自分で怪我をするようなマヌケではない。
ただ、虫歯には気をつけなくては……。
最も、この痛みは、虫歯が原因ではないのかもしれないけれど。
夢の中で重大なミスを犯していた。
すぐにこれは夢だと分かった。
夢だと分かった僕がどうしたかって?
吹っ切れたように次々とミスを重ねて、信じられないくらいテキトーに過ごしていた。
まるで自分じゃなかった。
自分の中にこんな自分がいたなんて、本当に、信じたくねえよ。
仕事に行く前に少し昼寝しただけなのに、この動悸は一体なんだ?
……心拍数を思うと吐きそうだ、白い水道水を一気に飲み干し、支度をする。
雨上がりの湿ったアスファルトだというのに薄っぺらいサンダルできてしまったけれど、引き返す気にもなれなかった。
『自律神経の乱れ』
『心臓病の可能性』
目覚めて動悸がするようになったのは、今の仕事を始めてからだ。
健康診断にはきちんと行っているので、心臓病ではないと思う。
だからこれは、『自律神経の乱れ』。
嘘だと思っている、僕のことだから。
ストレスとか、そういうのは信じていない、気にも留めない、だから、僕に限って、そんなこと。
……一駅分歩いているから、考える時間はたっぷりあるのさ。
大丈夫、食欲がなくなったわけじゃないし、極端に痩せたわけでもない、鏡も毎日見ている、目だって死んでいない。
それでも思わずにはいられない。
僕は一生、こんな毎日を繰り返して死ぬのかな、と。
働いて分かったことと言えば、思っている以上に人は変化を望んでいないということぐらいだろうか。
僕の勝手な正義感が役に立ったことはないし、何かが改善される兆しもない。
もちろん味方もいないし、皆自分の身を案じている、ただただその自分自身の立場が脅かされることのないよう、不変的な日常を好んで生活している。
誰に何を言われたわけでもない。
その他大勢の人々が当然のようにそうやって過ごしている事実が、毎日毎日少しずつ、僕という人間にダメージを与える。
馬鹿正直にそのことを問うても、満足する答えを得られやしない。
皆僕とおんなじかと思いきや、重なりもしない、やっぱり、全然、違う。
変わりたい。
変わりてえよ。
飽きることを諦めんなよ。……
こんな人格を持ってして生まれたのなら、とことん何かを極めるしかない。
追い詰めて行くしかない。
切り詰めて突き詰めて、死ぬまで満足しない方が、きっと良いんだ。
目覚めるだけで動悸がしてちゃ、笑われてそこでくたばる。
夢を見る暇もないほど、僕が夢中にならなくちゃ。