不良少女モニカ(1952) | つぶやキネマ

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140文字以内(ぐらい)という制約を自ら課して、
"つぶやいて"みようと思います...ほとんど
「ぼやキネマ」になりそうですが。

★注意!!! 作品の内容に触れています★


不良少女モニカ(1952)


 陶磁器商で働いている19歳のハリー(ラーシュ・
エークボルイ)は、カフェで出逢った17歳の自由奔放な
少女モニカ(ハリエット・アンデション)と付き合い始め
るが、モニカが家出をした事が原因でハリーは解雇されて
しまい、ふたりは自由な生活を求めてボートで夏の海へ向う
...というお話。ベルイマン監督の転機になった作品と言われ
ているが、若者の希望や苦悩、挫折を描いたストーリーに
特に新しさはない。俳優たちの演技はキッチリ演出されて
いるのに、白夜の夏の風景を捉えた映像や編集は散文的
という、まったく別の要素が混在する不思議な感覚の映画
に仕上がっているあたりが新鮮だったのだろう(注1)。父の
ボートで河を下り海へ向う異常に長いシーンはストックホ
ルムの風景だけが映し出され、自由な世界と夢のような時間
への旅立ちという感じを強調しているのが素晴らしい...現実へ
引き戻される帰りのボートの旅も異常に長い。60年前の作品
なんだが、現代も同じような夏が繰り返され子供を育てられ
ない親が生まれている事を考えると、人間は過去からまったく
学んでいない事を痛感させられるね。モニカを演じたハリエ
ット・アンデションが素晴らしく、こんな娘に誘惑されたら
色々パッとしない19歳の青年は抵抗出来ないよなぁ(注2)。
浮気相手と会い今後の生き方を決断するシーンのモニカの
アップがホラー映画なみに恐いが、かつての職場の鏡に
映る赤ん坊を抱いたハリーのアップに重なる夏の海の
モニカの姿が切ないねぇ。


●スタッフ
監督・脚本:イングマール・ベルイマン
原作・脚本:ペール=アンデシュ・フーゲルストレム
撮影:グンナル・フィッシェル
音楽:エーリック・ノードグレーン


●キャスト
ラーシュ・エークボルイ、ハリエット・アンデション、
オーケ・フリデル、ナエミ・ブリーセ、
イェーオルイ・スカーシュテット、ヨン・ハリソン、
オーケ・グレーンベルイ


◎注1; ベルイマン監督がトリュフォーやヌーベルバーグ
の作家たちに影響を与えた事がよく解る作品で、白夜の
夏の海の島々を巡って自由な生活を満喫するハリーと
モニカのシーンは、そこだけ取り出したらほとんど
ヌーベルバーグの作家が撮った映画のようだ。河を
下り海にたどり着いたハリーは家を出て独立したという
錯覚からか少し大人びて観えたり、モニカは束縛から
解放され表情が穏やかになっているし、モニカが妊娠し
資金と食料が底をついた事で以前の顔つきに戻ってしま
うあたりの演出が実に上手い。ふたりのボートの側に
テントを張っていた男がボートに火を付け破壊し始める
シーンは男の登場が唐突過ぎて一瞬「えっ?」となるし、
ストックホルムへ帰ってからハリーの父がまったく出て
来ないあたりは、不完全な感じが残って残念であります。

◎注2; 撮影当時19歳だったハリエット・アンデションは、
エッチな衣装(当時)とヌードも有りで頑張っているが、
"不良少女"という感じではない...原題は「モニカとの夏」
だし。欲求不満の17歳の少女が自由奔放な生活を求めて
ドンドン堕ちて行く過程を上手く演じていて、夫と子供
を捨てて出て行く姿はすでに"少女"ではない。彼女は庶民
的な感じで所謂美少女とも少し違うしスタイルが良い訳で
はないが、変な色気があるから不思議。夏の海のシーンで
全裸で岩場を走る姿が観られるが、個人的にはその直前の
シャツを脱いだ背中の美しさの方がお気に入り...オジさん
になったからかなぁ。そんな彼女を気に入ったベルイマン
監督は自作にドンドン起用するようになるが、私生活でも
...それはまた別の話。


 

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