■つぐない Atonement アトーンメント
●イアン・マキューアンの「Atonement」(原作邦題:贖罪)を映画「プライドと偏見」のジョー・ライトが監督する本作。
この物語、原作に基いたものであれば三つのパートに分かれているらしい。
まずは、最初の舞台は1935年の英国の暑い夏の日…アッパーミドルクラスのタリス家を中心に物語りは展開する。あ、そもそもの発端はココにあり。
ブライオニーは、姉と幼なじみとはいえ、恋人気取りの掃除人の息子ロビー・ターナーの不釣合いな関係を嫌悪する。
姉とロビーの戯れをブライオニーの少女心が許さなかったか…誤解が妄想を生み、妄想は偽りの証言を生み、姉とロビー、のみならずブライオニー自身の運命までも大きく変えてしまう罪となる。罪は償われることなく…時代は戦争に突入。イギリスの30年代から第二次世界大戦を挟み、彼等のその後数十年…。姉妹、そして姉の想った男を巻き込み大きく運命を左右する…罪とは。
ひと夏の出来事というには余りにも大きな代償、それは誰が払ったか。
イアン・マキューアンによる再度のブッカー賞最終ノミネート作であり、全米批評家協会賞受賞作品「Atonement」…、さて映像は如何だろう。
スチル、Trailerを見ていただくと時間の流れ、彼等の足跡がなんとなく予測できるものの…、さ、原作を読まないままに見たいと思う本作の結末は、いったいどーなるか。
映画は、戦争と平和にまで至るのだろうが、そこに生きた人の人生がどのようなものだったか。気づきにいこうか。
30年代の真夏の夜の厚い暗闇の中に見え隠れする絹のドレスの裾を見えぬ振りして踏みつけてしまった証はどう償うんだい。少女は戯曲を書こうとしたからには、晩年に何か書くか、な。書くことは彼女の何を露にしていくか…彼女はひたすら生き抜いてはいくのだけれどね。こりゃ~原作をどう読み解くかでも演出は違ってきそうだ。…贖罪(邦題:つぐない)。
ロビーの母でタリス家の使用人グレイス・ターナーに名作「秘密と嘘」(も、今頃また言うか、でもいいもんネ、コレ)「ビヨンド the シー~夢見るように歌えば~」(巧いネ)のブレナダ・ブレシン。
大事な役どころのロビー・ターナーには、ジェームズ・マカヴォイ。
ジェームズ・マカヴォイは、フォレスト・ウィッテカー主演の「ラストキング・オブ・スコットランド」の若き医者役だった優男…いや、結構いい俳優ですが、ここにきてますます面構えは良くなっているんじゃないかい。「ビカミング・ジェーン」ではアン・ハサウェイが相手でノビノビ演っている気がするしネ。で、彼と対する姉セシーリアにはキーラ・ナイトレイ。
脚本は、「ジャスティス 闇の迷宮」「愛の落日」「ジキル&ハイド」「シークレット・エージェント」「太陽と月に背いて」等のクリストファー・ハンプトン。(2007年/製作国イギリス/アメリカ公開2007年12月7日(限定)、イギリス2007年9月14日/日本公開2008年お正月)
▲Official site
オフィシャルでもTRAILER1,2をご覧になれます。
●Directer:Joe Wright ジョー・ライト
●Screenwriter:Christopher Hampton クリストファー・ハンプトン
●Cast:Romola Garai ロモーラ・ガライ Saoirse Ronan シーアシャ・ローナン Keira Knightley キーラ・ナイトレイ James McAvoy ジェイムズ・マカヴォイ Brenda Blethyn ブレンダ・ブレシン Brenda Vanessa Redgrave ヴァネッサ・レッドグレーヴ Harriet Walter ハリエット・ウォルター
※久方ぶりに恋の物語にグッときてしまった。
重要な場面を引き戻して重ねる手法。誰の目にも事実がどうであったかを刻むための手法。ページを引き返し、物語は再確認しながら進む。
大河ドラマでありながら、仰々しく描くのではなく原作の持つ感触、空気を読んだ映像が溢れている。そこに新鮮な演出が成され、俳優達が恋の物語を演じるのだが、一組の恋物語に注がれた少女の視点も恋に煌いている・・・それが幕をあける。
兵役についたジェームス・マカヴォイ演じるのカフェでの表情はお見事、です。ハリウッドには適わない色彩を放つ俳優になっていることに賞賛の拍手であります。
はじめて、キーラ・ナイトレイの存在を受け止めることができた。まさに適役だった、と。
この物語を看取るのはタリス家の末娘ブライオニー。
この役は、シーアシャ・ローランに始まるが、その後の成長した姿を演じるのは、ロモーラ・ガライ。骨格など違いながらも幼き日の贖罪を背負う姿をしぐさや動作、さらに語りの調子で繋げている。そして、ヴァネッサ・レッドグレイヴ。矢張り、ね、ここで我はグッときた。も、凄いもんだと、唸ります。
さらにエンディングのカット!の絶妙な間。切れの良いカットであって余韻が押し寄せてくるってのは、素晴らしいに決まっている。