インスタ映え

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三年くらい通っているうどん屋がある。
もうすっかり常連扱いをされていて何も言わずともランチタイム中盛サービスにしてくれるし、秋はデザートで柿を出してくれる。
一番人気のメニューはイカ天ざるで、刺身用の小さいイカゲソを天ぷらにしたもの。
あと香川の讃岐うどんの名店で修行をしたらしく、かけうどんもおいしい。
他にも毎月オリジナルメニューを出していて、ぼくは主にそれを楽しみにしている。
オリジナルメニューとはいうけれど、結構他の店のを真似していて丸亀製○そっくりのメニューがあったり、あちこちの名店のメニューを丸パクリしたり、蒙古うどんといううどん以外からも真似したり、コンポタそら豆つけ麺というなんだかよくわからないものまで出てきたりと毎月まったく予想がつかない。


今回ぼくが頼んだメニューはクリスマスカレーうどんというやっぱりなんだかわからないものだった。
でもぼくはこの店の味を信用しているので頼む。
待っている間に店内にいた他の客が全員帰って行き、ぼく一人になった。
いつもぼくは中途半端なもうすぐ閉まる時間に行って、しかもたべるのがおそいので大体最後の一人になる。
またひとりぼっちだなぁ、ぼくの人生はいつも孤独だなぁ、と絶望しているとそこに二人組の客が来店。
こんな中途半端なもうすぐ閉まりそうな時間に来るなんてなにを考えてるんだ、店の迷惑も少しは考えろ、と思っていたら奥から店主が出て来て会話をし始めた。
話によるとどうやら友達らしく、じっくり話したいから遅い時間に来るように言ってあったらしい。


カレーうどんが出てくるまでの間ひたすらぼくは店主と友達の会話を聞いていると、その友達が壁に貼ってあるカレーうどんの貼り紙に気づき、ぼくの頼んだカレーうどんの話が出てきた。
その話によると、このクリスマスカレーうどんはインスタ映えを狙って作ってみたけれど、よく考えたらうちの店には若い子がほとんど来ない。中高年が多くて全然盛り上がらない、失敗だった。というようなことを言っていた。
今から食べるものを失敗と言われてかなしい気持ちになった。
店主はその友達にインスタをやってるか聞いていたけど、誰もやっていないらしかった。
「あー、誰か若い子がインスタにあげてくれないかなぁ」
その時ようやく、この一連の会話はぼくに向けて言っていることに気づいた。
ぼくはインスタをやっていないけど、店内の若い客といったら明らかにぼくだけだし、近所を出歩くときは落語会に行く時と違いやたら色を使った服装をしているから、インスタをやってそうに見えなくもない。声もこの流れになった途端急に大きくなり、明らかにぼくを意識して聴こえるように話している。

ちょうどそのタイミングでようやくカレーうどんが運ばれて来た。
急に会話が止まる。ぼくのほうからは見えないけれどなんだか見られているような気がして、義務感に耐えられず仕方なく写真を撮った。
けれど美味しそうに見える加工とかインスタ映えする撮り方はまったくわからない。調べる気もあんまりないから普通に撮った。
そのまま美味しく食べ終え、家に帰って確認すると、別になんてことないただのカレーうどんの写真だった。
ぼくの写真の腕が悪いのか、それとももともとインスタ映えしないのかはわからない。
一応店主の希望通り上げてみる。
写真が上手い人はこれをインスタ映えするように撮れるのかな……。

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ぼくはなんて無力なんだろう……。