1. 君こそが わが人生の 日だまりと
母なる地球 名月を食む

何もかも 雨の香さえも 凍らせて
言の葉さがす 赤茶けた路

神去月 土埃の香 グラウンド
降り止まぬ雨 我は待ちたり

五分毎 開けては覗く 冷蔵庫
美味なるものの 増すこともなく

宵待ちの 排水口の 泡立ちに
ひとさじひとさじ 投ずる氷

同じ色 洗濯香料まで 同じ
紙巻ひと箱 手に西の空

小蝿よけの スプレイで死ねそうな 僕は
街宣車のけたたましさに 笑う

傘さして 徒歩何分で その場所へ
此方は今 まだまっすぐな雨

◆ 秋

ぼやかした ことのはあざやぐ うすもみぢ

10. 落ち込んだ そんなときこそ 台所
片足うしろに ぴょんと撥ね上げる

炒めごはん 仕上がり結構な ぱらぱら

さっきまで あたたかな場に 居たからね
背筋も伸びる 七℃の空

暗がりの 腕組み傘の柄 松並木
赤靴に添ふ アスファルト色

てくてくと やはらかなる夜 冬近し

◆ 冬

針金を 伝ひて落ちて 冴ゆる雨

僅かなる 未明の風に アスファルト
リズム鮮やか 転がる落葉

朽ち野にて灰色流れ青覗く

常ならば 慌しきばかり 夕つ方
落ちゆく光 和らかなることよ

寒空に星すなはち吾こまつぶり

20. 台所 窓よりかよふ 雪間の陽

長靴で こほりを捉ふ 爪痛し

ドア開き駆け寄る君の息白し

消え失すな 心に逆ひ 雪を掻き退く

綿入に優りて温し見附の夜

雪折れに野の鳥たちも肩を寄せ

皸もこの橋渡れば ふふふふふん

凍土の優しさ湯船の痛痒さ

眠ればいい町は静かに六花あり

来し方で掻き抱きたり雪女郎

30. 手袋の中で慕ひて湿り雪

寝待ち月ぼんやり冬雲掻き分けて

雪の原僕が動かなければ清ら

今日はもう 何もしないで 過ごそうか
君のあかぎれ 僕のふかづめ

◆ 春

排ガスのにほひがやってくると春

珊瑚の日 向かいの家の 軒先の
眼も醒める 朝の陽射しに

朝まだき 北へ帰るか 白鳥の
声澄み昇りて 春は間近し

給油所の灯火春のハンバーグ

◆ 夏

蜘蛛城の蟬捕らへけり北寄りの風

軽薄な青に着馴れぬ浴衣かな

◆ 秋

40. 宵の道精霊飛蝗を轢かぬやう

まだ生きるつもりかと問ふ秋涼し

もうあきた印象操作にあきの風

颱風来明の障子を緋に染む

ささめくはゆつくりやすめとあきのあめ

窓掛けの向かふの陽射し秋の空

月明かり甍の波間物思ひ

夜半の秋運ぶは錆びた鉄の味

◆ 冬

皸やガラスの向かふの観賞魚

ひとり夜のストーヴの上薬缶鳴く

50. 浴みずとも構はぬ初湯浴みんかな

窓越しに眺むる闇夜息白し

雲は飛び紫煙も届く冬の月

ていねいにみかんのひげを剥いて喰ふ

明け方の お地蔵さまの 鐘の音の
空気も凛と 冷たき我が頬

助手席で呼ぶは串やき冬帽子
着替えもせずに齧り付きたり

残る虫いとも姿勢の良き女

冬にシチュー御飯にかけて叱られて

ビニールの中の蜜柑が窮屈そう

日陰雪もう次のバス来るけれど

◆ 春

60. 春空に向かひて我は舟を漕ぎ

雉鳩も上手く歌えず春来たる

味付けを 君に任せた この料理
僕の好みは キムチスペシャル

はなびらや舗装路すべりくるくるり

一人静たばこのけむに君思ふ

すきこそももももものうち

◆ 夏

真つ直ぐが少し心配夏の雨

風薫りひとところにはとどまれず

階段で翔るをんなのオー・デ・コロン

ありがとうは鈍器となりぬえごの花

70. 死は世にも遠からぬかな誘蛾燈

夏めきて寝癖頭が煙草買ふ

子ら暑し我も勉強したくなし

初夏の雨楽の音いらぬ午前四時

明易や木星あふぐ北の島

一撃のドスンと重し箱眼鏡

思ひでは舞ふ黄揚羽とシーツの間

梅雨晴の朝極楽のあまり風

半夏雨立ち上る湯気土瀝青

生きるとはかういふことかと落し文

80. 夏の憂鬱を風が盗んでゆく

‪蠅入らず嗚呼ハマコーのゐた時代‬

眼鏡を 外し眺むる 紫陽花に
舞う雀らの 影まだ長し

雨の香に 轟き渡れ 呼子鳥
汝もけふは 翼を休め

かなぶんや自殺したでもあるまいに

毒蜘蛛が国を憂へて明けにけり

紫に明けゆく空や四十雀

蟬が鳴き始めてからはや六日目

蟬の穴風猛ければ敢へ無くなる

踏まぬよう自販機前の小金蟲

90. 夏の駄文ブログに (爆) とコメントす

◆ 秋

八月の少しゆつくり眠れた夜

雨降りて落蟬昨日と同じ場所

秋暑し曇りガラスの透過率

数学を解く子潰さぬ蚊の名残

港湾に賭博を誘致か残る蠅

蟬の死を詠みて灯火見付けたり

秋風や責任資料と共に舞ふ

ありたけの階下に置いた毒茸

最上川雨をすり抜け秋の蝶

100. 彼彼女所業は月の国のこと

秋簾俺でもできる官房長官

残照を背負ひて向かふ月見かな

十五夜の下へと急ぐ尾灯たち

早稲の香や仰ぐ明かりもやはらかに

夜が来て忘れ団扇を透く光

我は見ゆ月にゐるのは甲殻類

名月や魚のかまの身ほぐせずに

階段の窓越しの月つまづけり

夜学子や国語の宿題自慢顔

110. 持たされた金のスコップ震災忌

秋風や産廃業者の排気ガス

自動ドア残る蚊蜻蛉阻まれり

追ひ越した風染めにけり草の花

売り切れも許せる自販機寝待かな

2019年9月19日 屍句会
https://twitter.com/shikabanekukai

間引菜も食べる文化で生きてきた

無礼講鳥兜の根隠し持ち

スカイラインジャパンに積んだ鯊の竿

しあはせになつてもらひたいひとがゐて

台所刺刺しさを踏む素足

120. カーテンを開け秋蝶の行方かな

夕刊のクロスワードに母の文字

秋雨や筆圧高きは母譲り

秋の雨節節摩る背中見ゆ

シェアのお礼ひとり時間差熟柿かな

赤とんぼかしらと先生空見上ぐ

捨案山子湿疹の手を陽に透かす

We've Only Just Begun の邦題万年青の実

眠気とか罪悪感は果てののち

十月の高校生の撃たれた日

130. 見なかつたことにもできる SNS

背戸口で 恋歌聞こゆ 我は此方
夜雨に見えぬ こほろぎ清けし
(せどくちで こひうたきこゆ わはこなた
よさめにみえぬ こほろぎさやけし)

さやうなら透かしのカーテン小雨かな

秋色やあとはあなたが決めてよね

叩けない政府の尻よ秋の色

秋の浜寄り添ふ娘老いた母

本人の意向次第で続投へ (朝日新聞ニュース)

山手線トクホの広告運動会

補助輪の子にかける声「まがりまーす」

幼な子の開けたヤクルトこぼれそう

140. 終わらないラップトップを開かねば

高崎で随分降りる経済圏

行き先は谷川岳かいお客さん

トンネルを抜けて秋雨あたる音

アメダスの代わり手拍子し過ぎた手

超特急背後に舞った羽毛あり

越後線龍麿さん似ビジネスマン

破れ障子に地窓の網すらない

爽やかに楊枝くわえたFILAのシャツ

半笑ひガラスの向かふのネット社会

150. 芋の蔓悲しいニュースの比率かな

貝割菜スカーフがほらこちら向く

トンネルを越えた向かふの柿の熟る

DTの広告Bunkamuraの秋

鉈豆や越後湯沢の信号機

青蜜柑あの人に似た顔が見ゆ

夕葦火プラットホームの人の群れ

これだけの画面があれば威銃

国患ふ長き夜に味噌汁がある

じふぐわつもとをかかうしてしぬるのか

160. 破蓮しわくちゃKISSのフライヤー

秋の夜の雨の隣りに眠る人

十月のバレーボールの悲愴感

鮮やかに 遠き稲妻 雲映す
思ふはまだ見ぬ 全天のオーロラ

遠雷の 映す四方の 雲を仰ぎ
思ふはまだ見ぬ 寒地のオーロラ

秋半ば軽きリズムで喰ふ納豆

仲秋や待てぬ老人譲る道

嵐過ぐ虫の音さへも聞こえぬ夜

町医者の待合テレビの末枯るる

家々が片側ばかり向きて秋

170. 晩秋の日本の閉塞鼻をかむ

緊縮を強行議員の赤い羽根

枯蔦や運転手に告ぐ急ぎません

冬近しバス停やはり喧しい

蕃椒喜ぶ理由も見つからず

まぜそばの種類がふたつ増えていた

一時停止しないクラウン・アスリート

商用車煽り運転尻凹む

ぶつかるぞいつかはクラウン秋の暮れ

世のために思ふ人ほど消耗す

180. 海岸の砂塵の向かふに冬がゐる

◆ 冬

手足荒るへらへら進む政

立冬を過ぎて卵を溶く音色

公園の一周六分枯芭蕉

公園を歩いて十分手の温む

冬ざれの彼方に航空障害灯

大宮の高層建築日短

ワルふたりこそが私の青木の実

年惜しむ鍋底にほら肉がある

小春日や販売員の声高し

190. 後援し時代に合はぬ観桜会

分かつてゐて何もしない人が河豚

分からずに何もしない人が鴨

やうやうとかじけ猫ほら立ち上がる

凍土の脆さや嘘の含有量

皸膏代わりになるかと米を研ぐ

冬めきて夕刻珈琲豆を挽く

夜鳴蕎麦ここのがいいと後にする

しぐるるや買ひ物せずに家に着く

柿落葉数打ちゃ中る下手な弾

200. 税金で生かしてやるから刑務所へ

タイムライン困つた首相で塗り潰し

変わるかな変わってほしいな変えたいな

藁仕事市井の中に殺意あり

冬空の下の硝子に蛾のとまる

枯葉舞ふちやんと答へりや次進む

美しきものを見つめる悲しさよ

今の日本昨夜の悪い夢ならば

高気密高断熱住宅に合はぬ

欲しいのは隙間風なり勉強す

210. ストーヴの焔の向かふ時流る

熱燗の甘さを知りてをんなかな

虎落笛SMBC信託銀

日曜の時を眺めし小春かな

冬日和新潟県産米のお茶

ラヴホテル思へば皸二つ三つ

時雨傘餃子屋の娘の点した紅

初雪夜高架の下の洗車場

妻も妻夫も夫断れぬ

安倍が断られグレタが招かれる

220. 出身校校庭で見ゆ冬の星

はふはふと頬張る大根からし滲む

納豆汁揺らぐ蛍光灯を飲む

河豚中りコールセンターの対応

冬の夜に太鼓叩きて風の止む

シロアリの社長が型落ちセンチュリー

寒独活やさう思はずにゐられない

本会議欠席しても高給取り

おだいじに保身を一番おだいじに

小春空優しきをんながひとり泣く

230. 空仰ぐまるで稀薄な年の瀬感

皮肉屋が散る山茶花を眺めをり

熱燗と仕方がないさ日本海

鼬罠四時半前に偏る愛

手袋を脱ぎて雲梯頰赤く

降りたるか障子に問ふころの静寂

筆入れを開けてぴよこんと残る虫

冬の虫驚きふうと吹き飛ばす

ウーロン茶鶏唐餃子ウーロン茶
こがねらーめん仕事の合間

嵐雪を開かずに越えぬる山茶花の
薄紅を啄はむ目白

240. 軽薄なるメロデイー飛ばして韮雑炊

隣県でわけてもらひしクリスマス

団欒の隣りで海老塩ワンタン麺

御用納めパパも一緒にラーメン屋

火起こしの役にも立たぬ七万円

数へ日や丁寧に餃子を包む

裸木や既にお酒を飲んでゐます

この国に似合いの枯蓮贈収賄

金積めば誘致のできるカジノかな

小泉氏国の未来も話せない

250. 我が国の首相も幼稚で困つてゐる