プロジェクトX ビクター高野部長の英断 | 今、私が考えていること

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毎日の出来事を、新聞やネット上の記事からピックアップして、私なりの意見などを書き綴ります。

先週のプロジェクトXは過去の番組の再放送として「 窓際族が世界規格を作った〜VHS・執念の逆転劇〜」でした。この回は私にとっても強烈なインパクトを覚えました。当時(1980年代)家庭用ビデオが急速に普及し、見たい番組が後から見られる、何度も見返せるということが画期的でした。ただ、SONYのベータ方式とビクターのVHS方式の2つがあり、どっちを選ぶか難しい選択でしたが、この番組の終わりの方で伝えているように、VHS方式を採用するメーカーが増えていき、結果的にVHS方式が世界標準になったのです。

 

今回の放送の中でのハイライトは、なんといってもこの仕事を執念で成し遂げたVTR事業部長の高野鎮雄の英断です。もちろんリストラ寸前の部署を引き受けて、家庭用ビデオを開発したことは言うまでもない偉業ですが、私が取り上げたいのはそれよりももっと大事なことです。

 

それは高野部長が、完成した自社のビデオを他の家電メーカーに提供して、VHS方式を広め、世界的な標準規格を目指したことです。当時家電業界の中では下位に位置し、赤字部門であったのにもかかわらず、この開発を自社が独占することにはせず、他のメーカーに惜しげもなく技術公開したことは大英断です。後に他のメーカーが追加の機能を開発しVHSはますます進化していきました。

 

こういう発想ができる人は世界広しといえども稀です。逆に日本にはそれができないで失敗した例はたくさんあります。

 

例えば、昔のNECのパソコン。1980年代ごろ、日本のパソコンはNECがシェアをほぼ独占していました。NECが独自に開発したOSをベースにしたPC8800とかPC9800などは、NECが技術仕様を公開しなかったので他のメーカーは作ることができませんでしたから当然です。したがってソフトもNEC製でした。ところが1995年にMicrosoftがWindows95を発表して技術公開したとたんに世界中が瞬く間にWindowsパソコン一色に染まり、NECはたちどころに駆逐されてしまい。結局NECもWindowsパソコンを作らざるを得なくなってしまいました。

 

もう一つの例は、ご存じdocomoのiモードです。携帯電話にパソコンに近い機能を持たせ、メールやカメラ、音楽再生などの、今のスマホの原型ともいえる多機能性を持たせることに成功したのですが、ドコモはこの技術仕様を独占したため、海外からはそっぽを向かれてしまい、結局日本国内しか普及しませんでした。そのタイミングでスティーブジョブズがApple製のiPhoneを発表したのです。その瞬間、ドコモのiモードは霞んでしまいました。

docomoの世界戦略の失敗です。

 

これらと比較すれば高野部長がビクターのVHSを技術公開したことの決断が如何に素晴らしいことかがわかります。ケチ臭い経営者が多い日本の企業の中で、このビクターの高野部長ほど先見の明のある優れた経営者は他に居ません。大いに学びたいです。

 

金もうけにばかり夢中になっている今の経営者や政治家は、全く世の中の真髄が見えていない。誰のために、何のために働くのか、分かっていない人にこそ、是非この番組をみてほしい。