仏壇話 -5ページ目

あの世授業33時限目

「修羅道にいる阿修羅以外のメンバーを教えてください」


 修羅道ってのは結構曖昧な世界でして、天道ときっちりとした線引きがなされていませんので、正式な解釈は別としていわゆる悪の要素がある仏教系の神を今回は修羅道として位置付けて紹介します。



 まずは仏教界の魔女を2神紹介します。最初は荼吉尼天(だきにてん)さん。インドの鬼女で、自在の通力をもって6か月前に人の死を知り、その心臓を食うといわれる。日本には稲荷信仰と結びついて何故か商売繁盛の女神となっています。豊川稲荷が祀っているのが荼吉尼天さんです。もう一人は鬼子母神さん。こちらは他人の子供をさらっては食べていた山姥のようなインドの神様です。100人いる自分の子供の一人をお釈迦さんに隠されて、子供を失う気持ちを教わり、それ以来子供の守り神になった女神です。お二人とも元ヤンキーな感じがうかがえるので修羅のメンバーにしています。



 結構知られていないですけども、伊舎那天(いしゃなてん)さんも相当の悪な神様です。織田信長が信仰していたといわれる第六天魔王だったとも言われているのが、この神です。ヒンズー教の三大神の一人、シヴァ神という別名を持っていまして、その役割りが破壊なので相当怖い部類だというのが想像できますよね。バイクに乗って校舎の窓をバットで壊して回る高校生みたいな神様です。



 羅刹(らせつ)さんも人の肉が好きなので、結構神としてマズいポジョションですよね。もともと羅刹って名前がヒンズー教の鬼神を意味しているくらいですからね。仏教に帰依してからは夜叉さんと四天王の一人毘沙門天さんのボディーガードをしています。腕っぷしだけなら最強のコンビだと思います。その相棒の夜叉さんは仏教界で結構出世していまして、輪廻から解脱して明王の世界に行って金剛夜叉明王さんになっています。ポケモンでいうところの進化ってやつですね。



 昔は悪い事やっていたけど、現在は改心して善行を積んでいるところですので、修羅道のメンバーを嫌わないでやってください!


〆の言葉

「ナイフのように尖っていた時代のことはあまり言わないで」



あの世授業32時限目

「修羅道について教えてください」



 地獄道、餓鬼道、畜生道と生まれ変わりたくない3悪道からやっと抜け出す事ができました。残りは、修羅道、人間道、天道の3つ。今回は修羅道について説明します。


 修羅の世界は一般的に争いの世界と呼ばれています。内乱状態の国に生まれ変わり、幼いころからペンの代わりに銃を持たされる運命を背負う人生のようなイメージだと思ってください。力と力の世界。北斗の拳に出てくるキャラクターのような鬼神がいる世界です。


 修羅道で有名なのは興福寺の美しすぎる仏像「阿修羅」でしょう。あの表情に魅了された人は沢山いたと思います。実は阿修羅は仏教では悪魔的な存在として扱われています。輪廻の世界での主人公は六道のトップにたつ天道のリーダー「帝釈天」です。その最大のライバルが「阿修羅」になっています。例えるなら、帝釈天が白いモビルスーツだとすると阿修羅は赤いモビルスーツというようなライバル関係になっております。天道を善としたストーリーの中で仏教説話が存在しているので、可哀そうに阿修羅は敵キャラとして登場してしまうのです。そのイメージなのか、マジンガーZやキン肉マンにも手ごわいライバルキャラとして阿修羅の名を見る事ができますね。昔から日本人に愛されているのです。


 仏教でのその力の強さからボディガード的に登場しています。薬師如来を守る12神将達は元々「夜叉」という鬼でした。それ以外にも子供を食べる鬼女だった鬼子母神も今では子供の守り神になっています。浅草の雷門にも風神・雷神を安置して人々を威嚇していますよね。このような役割を修羅道が担う事が多いです。仏教には多種多様な神々がいます。それぞれに最適な役割が与えられているのです。人間社会と本当によく似ていると思います。






〆の言葉

「ちょい悪は今も昔も魅力的」








あの世授業31時限目

「人の人生は動物の寿命と関係あるって本当ですか?」




 実は畜生道に関係するインドの説話の中に、そんな話がでてきます。

 昔、動物の寿命を決める仏がおりました。すべての動物の寿命を平等に30年にしようと思っていたのですが、4種の動物からクレームがきました。



 1種目は馬です。馬は朝から晩まで毎日、人間に仕事をさせられています。30年も働くのは地獄にいるようだから、10年にしてほしいと訴えました。

 2種目は犬です。犬は嵐の日でも外につながれ門番をさせられます。いつも人間の顔色をうかがって生きるのは15年もあれば大丈夫ですから、寿命を減らしてほしいと訴えました。



 3種目は猿です。猛獣に追われていつも木の上で生活しなければいけません。それに人間には尻が赤いと馬鹿にされていきていくのは大変です。20年もあれば十分だと訴えました。



 4種目は人間です。30年では短いとクレームを言いました。30歳はやっと独り立ちして、これからって時に寿命がつきてしまうなんて考えらませんという訴えに仏は馬が辞退した20年を人間にプラスしました。これで人間の寿命は50年となりましたが、人間は満足しません。そこで犬の辞退した15年も加えてあげることにしました。人間は寿命が65年になっても満足しません。仕方ないので、最後に猿の辞退した10年を加えてあげて75年にしてやると、渋々ながら人間は満足しました。



 しかしながら、寿命が長くなれば幸せというわけでもないようで、人間は最初の30年は仏から与えられたので、気楽で自由に生きられるのですが、この後20年は馬の寿命をもらったが為、馬のように朝から晩まで働き続けることになりました。そして次の15年は犬の年となります。家を建てたり、子供が大きくなったりと心配事が増えてきます。守るものが増えてきたことで夜もおちおち休めずに犬のように番をしなければいけなくなります。最後の10年は猿の年、顔も猿のように皺だらけ、いつもキイキイ言うようになってしまいます。



 寿命を決めた仏も人間劇場を見て笑っているかもしれませんね。







〆の言葉

奪い取った長い寿命、人生の後半は畜生道を学べます