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アーカイブズ学,経営学|和而不同,Love & Peace|1969

2024年1月1日,名古屋から東京へ移動中に鳴り響いた緊急地震速報が耳にこびりついています。

能登半島を中心に北陸で被災された方々,同地にご家族・ご親戚や大切な方がいらっしゃる皆様に心よりお見舞い申し上げます。

 

今回,東日本大震災以来,私が宮城県南三陸町で災害ボランティアの活動をするにあたり10年以上お世話になってきた,一般社団法人ボランティア東北ファミリア(以下,ファミリア)からの呼びかけに応えて,東京において北陸に義援金を送るためのイベントを開催することとなりました。

 

「ワカメがつなぐ南三陸,東京,北陸」

日時:2024年2月18日(日) 11:00~

場所:ギャラリー古藤(ふるとう)

   練馬区栄町9-16(武蔵大学正門斜め前,千川通り沿い)

また,同日開催でワカメと「南三陸ワカメシフォンケーキ」の販売を以下の場所で実施します。

場所:ワンズカフェ/Minette

   練馬区旭丘1-10-10(練馬総合病院日通側)

 

 

本イベントでは,南三陸産の上質なワカメを来場された皆さんにご購入いただき,その収益金をファミリア経由で新潟の新越ワークスという企業に託します。新越ワークスは,東日本大震災当時,南三陸町へペレットストーブをはじめ多くの物資を提供した企業です。

 

 

多くの皆様のご来場を心よりお待ち申し上げます。

 

【本件についてのお問合せ先】

練馬わたなべ心理相談室 watasoudan@gmail.com

2021年に実施したアンケートですので,少し古いデータですが参考までに挙げておきます。

 

自身の悩みには「我慢のコーピング方略」と身近な人とのコミュニケーションで対処

―新型コロナウイルス感染症の影響に関しては,友人や知人との物理的な遮断がストレスや不安,悩みの要因に。仕事や生活パターンの変化が,逆にストレスの減少をもたらしている面も―

 

「経営者(小規模事業者)のメンタルヘルスに対する意識についてのアンケート」結果

★サマリー

1.   小規模事業者は,メンタルヘルス上の困難にどのように対処しているのか

我が国では,小規模事業者のメンタルヘルス対策について,労働安全衛生行政上,義務化されている項目が少なく,本調査の結果においても,たとえば,小規模事業者の事業場内の産業保健スタッフ体制が未整備であることが示された(Table 9)。

かかる状況下,小規模事業を営む事業主/経営者自身のストレスや不安,メンタルヘルス上の困難に限らない様々な問題についての悩みに関して,半数以上が外部の専門家に「相談したことはない」と回答しており(Table 6),コロナ禍においてもその傾向は変わらないこと(Table 13),調査時点で利用可能な外部の経営者・管理者用の相談窓口を手当てしている事業主/経営者は,54人中7人しかいなかった(Table 11)。専門家を頼ることのない事業主/経営者は,「自分自身のメンタルヘルス対策は優先順位が低い」という回答が3割に上った(Table 5)こと,「自分のストレスについて自分で解決している」,「基本的にはすべて一人でこなさなければならないため,どうしても一人でためこんでしまいがち」というコメントからも,「我慢のコーピング方略」による対処がうかがえる。他方,「自分自身が抱えているストレスや不安について相談する相手がいる」という回答した事業主/経営者も3割を超えた(Table 5)。

コロナ禍のストレスや不安,悩みについては,「友人や知人とオンラインを含めて,会話する機会を作った」という回答も少なくなく(Table 13),コロナ禍に限らず,「会社の事は社内で話し合った」,「家族経営なので家族と話す」といったコメントもあり,必ずしも「我慢のコーピング方略」だけに偏っているわけではなく,友人・知人や会社の仲間,家族といった近しい人が相談相手になっていることがうかがえた。

従業員に目を向けると,小規模事業を営む事業主/経営者は,コロナ禍における従業員が,「友人との会食などのコミュニケーションの機会が少なくなったこと」が主たるストレスや不安,悩みなのではないか,とする回答が最も多く,次いで「特別な不安や負担感はないと思う」という回答であった(Table 14)。従業員のストレスなどへの対策について,「特に何もしていない」という回答が半数以上に上った(Table 15)一方で,4割近くの事業主/経営者が,「自分(経営者)が相談に乗った」と回答しており(Table 15),「コロナ禍以前よりも,従業員のメンタルヘルス対策を充実させる必要性を感じている」という回答も少なくなかった(Table 16)。事業主/経営者の従業員のメンタルヘルスに対する認識では,「従業員が抱えているストレスや不安について相談する相手が欲しい」,「当該従業員に紹介できる専門家が欲しい」という回答が3割近く見られた(Table 8)。小規模事業を営む事業主/経営者は,従業員のメンタルヘルス上の困難について関心はあるものの,把握,対処しかねているのが実態のようだ。

 

2.   小規模事業者が利用しやすいメンタルヘルス対策サービス

小規模事業を営む事業主/経営者が,メンタルヘルス対策にかけられる年間予算については,「ほとんどかけられない」が7割に迫り,10万円未満と併せて8割を超えた(Table 10, Figure 7)。

メンタルヘルス上の困難について,相談できる公的機関や事業場外資源の認知度については,割くことのできる予算が限られる小規模事業者が,ある種のメンタルヘルス対策サービスを無料で受けられる機関である産業保健総合支援センターと地域産業保健センターについて尋ねたが,ともにほぼ9割が「知らない」と回答した(Figure 5, 6)。その他の事業場外資源,外部のメンタルヘルス対策サービスについては, 6割近くが「外部のメンタルヘルス対策サービスで利用できるものはない」と回答した(Table 11)。外部のメンタルヘルス対策サービスについて,比較的関心が高かったのは,「従業員用の相談窓口」と「不調社員の対応支援」であった。「行政機関などは命を守るだけではなく,命の危険性が上がる手前の心理ケアにも重点を置いて,認知度向上の活動をもっとしていいと思う」,「定期的に相談できるような機関があればいいのではないか」,また,「必要になってから調べて,なんらかの対処をすると思う」というコメントもあった。公的機関と民間の事業場外資源の組み合わせによって,費用を抑え,且つタイムリーな支援が可能となる体制が望まれるのではないだろうか。「必要になってから」「対処をする」までの時間をできる限り短くできるような支援体制が必要だと思われる。

 

3.   新型コロナウイルス感染症の流行を受けた,小規模事業者のメンタルヘルス対策への意識

まず,回答者の4割近くが,コロナ禍以前に比べて,「収入が安定しないこと」に関しての悩みが増したと回答した。他方,ストレスなどは必ずしも収入に関することに偏重しているわけではなく,「友人との会食などのコミュニケーションの機会が少なくなった」という素朴な悩みも多い。また,「コロナ禍以前と変わったことはない」という回答も3割近くある(Table 12)。また,逆に「時間に余裕が出来て仕事に柔軟性が増したためストレスは軽減」,「自分自身も時間や場所に縛られることが無くなりストレスが減った」という回答もあった。そういった意味では,コロナ禍の事業者/経営者のストレスや不安,悩みには想定していた以上に多様性,個別性がある。従業員に対しては,事業主/経営者自身が相談に乗ろうという意識があるようだ(Table 12,13, 14, 15)。コロナ禍がメンタルヘルス対策を見直す一大契機となる,というわけではないが,3割以上が,コロナ禍以前よりも,自分自身と従業員のメンタルヘルス対策を充実させる必要性を感じている,と回答した(Table16)。

 

★調査の概要

1.趣旨

小規模事業を営む事業主/経営者が,自分自身並びに従業員のメンタルヘルスについての意識を把握するため。

 

2.調査対象

リスク・マネジメントに関するNPO/A協会の理事と会員(A群),起業家支援会社B社とその代理店及び取引先(B群),調査者の知人とその知人(C群),から,計57人のデータを収集した。項目によって従業員の有無が統一されていない者を除外した結果,54人(男性38人,女性16人)が分析対象となった。調査期間は,A群が2021年5月から6月,B群が2021年6月から7月,C群が2021年5月から9月であった。

なお,日本の法律上は,「小規模事業者」の定義はない。中小企業基本法では,従業員5人以下の商業・サービス業と同20人以下のその他の業種に属する事業者を「小規模企業者」としている。また,労働安全衛生行政においては,従業員50人未満の事業場(事業者ではない)を「小規模事業場」としている。本調査では,概ね従業員50人未満の事業者を「小規模事業者」と呼ぶこととするが,文字通り「規模の小さい事業者」程度の意味で捉ることとした。

 

3.調査期間 2021年5月~9月

 

4.調査方法 Web調査(Googleフォームでの記入回答方式)

 

★調査結果

回答者の属性 年齢は,50代が46.3%でもっとも割合が高く,次いで40代が29.6%,30代が13.0%,60代が9.3%,70代が1.9%となっている(Figure 1)。東京商工リサーチ(2021)によれば,全国の社長の平均年齢は60歳を超えており,本調査の回答者の年齢は,平均よりも低い。

業種は,その他サービス業が37.0%でもっとも割合が高く,その他の13.0%,教育学習支援業の11.1%と合わせて6割を超える(Table 1)。調査者のアクセス可能な範囲にコンサルティング業や,教育学習支援業が多いことが偏りの原因だと思われる。

業歴は,10年以上が40.7%ともっとも割合が高く,次いで5年以上10年未満が20.4%,1年未満が18.5%,1年以上3年未満が13.0%,3年以上5年未満が7.4%となっており,業歴5年以上が6割を超えた(Figure 2)。

事業の主たる活動地域は,全国に亘った。ただし,一都三県(東京,埼玉,千葉,神奈川)が35人ともっとも多く,次いで関西(大阪,京都,兵庫,滋賀,奈良,和歌山)の13人が続いた。東京・大阪の大都市圏への偏りが見られる(Table 2)。

従業員数は,0人(経営者のみ)が46.3%でもっとも割合が高く,従業員がいる回答者とほぼ半々の割合となった(Table 3,Figure 3)。従業員が50人を超える回答者が1人だけあり,当該回答者の事業場については,労働安全衛生法上の主要な安全衛生管理体制について義務化の対象となっている可能性がある。また,従業員が20人を超える回答者が4人おり,従業員が5人を超える卸売業,小売業,サービス業の回答者も存在する。これらは,中小企業基本法上の小規模事業者には該当しないが,本調査においては,これらの事業者を,小規模事業者と厳密に区別することに,さしたる意義を見出せないことから,原則として,回答者全員を広義の小規模事業者として同等に扱うこととした。

事業形態は,個人事業主が17人で31.5%,会社形態が37人で68.5%であった(Figure 4)。中小企業庁(2015)によれば,小規模事業者の61.8%が個人事業主だとされており,本調査では,個人事業主の割合が低い。

従業員50人以上の事業場とのメンタルヘルス対策の差異 過去(現在を含む)に従業員50人以上の事業場で働いた経験のある回答者は,48人にのぼった。約3割に当たる16人が,「不足していることはない」と回答した。不足していると考えられることで,もっとも多かったのは,「メンタルヘルスについての経営者・管理者向け教育・研修」で17人,次いで「経営者・管理者用の相談窓口」が15人となった(Table 4)。また,その他自由記述で,「社内の診療所」という回答があった。

事業主/経営者自身のメンタルヘルスに対する認識と相談先 事業主/経営者が,自分自身のメンタルヘルスについて,どのような認識を持っているのか,という点について,「自分自身のメンタルヘルスに問題を感じたことはない」という認識が,約3割の16人,「自分自身がストレスや不安を感じているかどうかわからない」と回答した人が10人であった。また,「自分自身が抱えているストレスや不安について相談する相手がいる」と回答した人が3割強の17人,「自分自身の抱えているストレスや不安について相談する相手がいない」と回答した人が2割弱の10人であった。「自分自身が抱えているストレスや不安について相談する相手がほしい」と回答した人は7人,「自分自身がストレスや不安を感じていることを他人に知られるわけにはいかない」と回答した人が6人,「自分自身のメンタルヘルス対策は優先順位が低い」と回答した人が,約3割の16人にのぼった(Table 5)。その他自由記述では,「メンタルヘルスに問題を感じそうな場合は、自分で業務量ややり方を変える」,「自分のストレスについて自分で解決している」という回答があった。

事業主/経営者が,自分自身のストレスや不安,メンタルヘルスに限らない様々な問題についての悩みを相談する専門家については,「相談したことはない」と回答した人が28人で半数以上を占めた。相談先としてもっとも多いのは,経営コンサルタントで10人,次いで税理士・会計士と医師がともに8人であった。心理専門職と回答した人は3人にとどまった(Table 6)。その他自由記述では,弁護士と同業の経営者が各2人,ニューロコーチング等もあった。専門家に相談した結果については,相談経験のある回答者全員が,「ストレスや不安は軽減・解消した」と回答した。

また,仮に事業主/経営者が,心理専門職に相談する場合,当該心理専門職がどの程度経営に関する知見を有することを求めるか,については,かなりバラつきのある回答となった(Table 7)。

事業主/経営者の従業員のメンタルヘルスに対する認識と事業場の体制 事業主/経営者から見た従業員のメンタルヘルスについては,従業員がいる回答者29人のうち,「従業員が抱えているストレスや不安について経営者が相談できる相手が欲しい」,「従業員が抱えているストレスや不安について当該従業員に紹介できる専門家が欲しい」と回答した人が,それぞれ8人であった(Table 8)。


公的機関の認知度 産業保健総合支援センターを,「知らない」と回答した人が48人,「利用したことはないが知っている」と回答した人が6人であった(Figure 5)。地域産業保健センターを,「知らない」と回答した人が49人,「利用したことはないが知っている」と回答した人が5人であった(Figure 6)。

メンタルヘルス対策の予算感と事業場外資源の利用状況,各サービスへの関心 メンタルヘルス対策に,年間どの程度の予算を割けるのか,という点については,「ほとんどかけられない」と回答した人が36人であった(Table 10,Figure 7)。

調査時点で利用可能な外部のメンタルヘルス対策サービスについては,「外部のメンタルヘルスサービスで利用できるものはない」と回答した人がもっとも多く,6割弱の31人であった。利用可能なものとしては,「メンタルヘルスについての経営者・管理者向け教育・研修」が11人,次いで「経営者・管理者用の相談窓口」が7人であった。メンタルヘルス対策サービスへの興味・関心については,かなりバラつきが見られた。ただし,従業員に関するもの,特に「従業員用の相談窓口」,「不調社員の対応支援」,「休職者の対応支援」について,従業員がいる回答者29人の興味・関心は,比較的高い結果となった(Table 11)。

新型コロナウイルス感染症の影響 コロナ禍以前と比べて,事業主/経営者自身が,どのようなストレスや不安,悩みが増したか,という点については,「コロナ禍以前と変わったことはない」と回答した人が3割弱の15人であった。増したストレスや不安,悩みとしては,「収入が安定しないこと」が4割弱の20人でもっとも多く,次いで「友人との会食などのコミュニケーションの機会が少なくなったこと」が19人であった(Table 12)。その他自由記述では,「偏ったマスコミ報道や科学に基づかない対策、世間の空気」,「コロナ禍の各種制度を悪用する業者などが後を絶たない為、営業活動にかなりの支障をきたしているにも関わらず、当局の対応が全く疎い」というマスコミや当局に対する苛立ちが示された一方で,「時間に余裕が出来て仕事に柔軟性が増したためストレスは軽減」,「自分自身も時間や場所に縛られることが無くなりストレスが減った」いう回答もあった。また,それらのストレスや不安,悩みを軽減するために,「特に何もしていない」と回答した人が4割弱の31人であった。とられた対策としては,「友人や知人とオンラインを含めて,会話する機会を作った」が10人でもっとも多かった(Table 13)。その他自由記述では,「様々な専門家などから事実の収集や知識の習得に努めた」,「ビジネスで関連のある人々(起業家や個人事業主)と会話をする機会をつくり、互いに相談しあった」,「産業医含め、定期的に衛生委員会で相談・対処している」といった外部との繋がりに活路を見いだす人,「会社の事は社内で話し合った」,「家族経営なので家族と話す」といった身内での解決を目指す人,「副業の準備をしようと考えた」,「鍼灸治療院に,週1回通院」といった個人の態勢を整える人というように,様々な対処方法が示された。

コロナ禍以前と比べて,事業主/経営者が,従業員のどのようなストレスや不安,悩みが増したと思っているか,という点について,従業員がいる回答者29人のうち,約3割の9人が,「特別な不安や負担感はないと思う」と回答した。想定される従業員のストレスや不安,悩みでもっとも多かったのは,「友人との会食などのコミュニケーションの機会が少なくなったこと」で,4割強の13人が回答した(Table 14)。また,それらの従業員が抱えていると想定されるストレスや不安,悩みを軽減するために,事業主/経営者がとった対策としては,半数を超える15人が,「特に何もしていない」と回答した。とられた対策としては,「自分(経営者)が相談に乗った」が4割弱の11人でもっとも多かった(Table 15)。その他自由記述では,「会話時間を増やした」,「対面で会話する機会を必ず設けている」,「産業医を含め、メンター面談など実施している」などの回答があった。

コロナ禍前後のメンタルヘルス対策に関しての,事業主/経営者の意識の変化については,半数を超える28人が,「コロナ禍前後で意識の変化はない」と回答した一方で,4割弱の19人が,「コロナ禍以前よりも,自分自身のメンタルヘルス対策を充実させる必要性を感じている」と回答し,「コロナ禍以前よりも,従業員のメンタルヘルス対策を充実させる必要性を感じている」と回答した人も11人にのぼった。なお,従業員のメンタルヘルス対策については,従業員がいる回答者に限れば,29人中10人の3割強が,充実させる必要性を感じている,と回答した(Table 16)。

さらに,B群(起業家支援会社B社とその代理店及び取引先)の22人に対して,調査時点でのストレス状況についても尋ねた結果,「疲れやすい」,「やる気が出ない」などの症状を訴える人が多く,該当する不調項目が2つ以上ある回答者も7人いた(Table 17)。

メンタルヘルス対策についての意見 質問紙の最後に,メンタルヘルス対策についての意見を自由に書いてもらう欄を設けた。寄せられた主な意見は,Table 18の通りである。

以上

8月に医療観察法と記録管理について書きました。

心神喪失者等医療観察法と記録管理 | かるいいるか 渡邊健(WATANABE, Tsuyoshi)Web (ameblo.jp)

 

巷では,少年事件記録の廃棄が問題視されていますが,医療観察法に関しても似たような問題を内包しています。

前回書いたように,医療観察法と記録管理についてまとめた論考が見当たらないので,ざっと表にしてみました。

 

表1:医療観察法下で発生する記録の管理

 

事件を起こした本人が医療観察法の対象者となる場合,不起訴処分となるわけですが,その際の鑑定記録を含め,司法文書については,開示と保存に関する法律の規定はありません。

その後,対象者は保護観察下に置かれます。保護観察中の記録については,法務省の行政文書として公文書管理法の適用下で保存されます。しかしながら,例えば被害者が情報公開法に基づく開示請求をしたところで,個人情報保護の観点から不開示となるでしょう。ちなみに,法務省通達で被害者に対する情報提供の運用が始まっていますが,提供される情報は極めて断片的なものに留まっているようです。

医療観察法の対象者は,一定期間,国公立の指定入院医療機関で入院治療を受けます。診療録の保存期間は,民間医療機関を含め,医師法で5年保存が義務付けられています。国立の医療機関であれば,それに加えて厚生労働省管轄の法人文書として公文書管理法の適用を受けると思われます。公立の医療機関であれば,当該都道府県の公文書管理条例の適用を受けるはずです。しかしながら,例に挙げた東京都のように公文書管理条例を定めている自治体ばかりではなく,未だ条例化されていない自治体が多いのが実情です。また,こちらも開示請求が通る可能性がほぼないことは,保護観察記録同様です。

入院治療を終えた対象者は,引き続き通院治療を受けることになります。こちらは多くの民間医療機関が担っています。先述の通り,民間医療機関においても診療録の保存期間は5年と定められていますが,公的な医療機関のように法律や条例による開示義務はありません。

 

突貫でまとめたので,正確性に疑義があると思われます。これはをたたき台として,間違いの指摘を含めてご意見など頂けると幸いです。

 

これらの記録については,情報開示請求以外に,被害者の閲覧に対する何らかの手当が必要ではないかと思われます。先述の法務省通達では心もとないと考えます。

また,仮に事件後すぐの開示が難しいとしても,特に公的機関の記録については,事後の社会的検証のためにも,時の経過を考慮した閲覧・利用が認められて然るべきでしょう。

しかし,現状では保存期間内は開示されず,保存期間が過ぎればほぼ廃棄となっていることが推測され,被害者はもとより,対象者本人ですら自身の記録を閲覧する機会をほとんど得られないのではないでしょうか。