「世界の道―アメリカ・ヨーロッパ (1982年) 」
サンケイ出版
1982年に出版された本書。サンケイ新聞国際編集室と日本道路協会との共著ということなんだけれど、サンケイ新聞国際編集室長の巻頭の言葉によれば、この本はこんな意図で編まれたものらしい。
道には長い歴史が刻み込まれていて、アメリカの高速道路網も、西部開拓時代に切り開かれた駅馬車の道がその原型である。ヨーロッパには、紀元前のシーザーの戦いのあとがそのまま道になっているところも多い。日本も同様で、国道一号線はかつての東海道である。同じようなルーツとルートをたどって現代の道が出来上がったのに、なぜに東西の道に開きが出来てしまったのだろうか?
日本には車輪の文化がなく、狭い土地に山と川があり、道が作りにくかったこと、また狩猟と農耕という民族性の違いも考えられる。けれど、「くるま社会」を迎えた今、過去の歴史によらず、日本においても車の走る事が出来る道路を作らなければならない。ここにアメリカ、ヨーロッパの道を示すことで、日本の道路との違いをくみ取り、日本のこれからの道づくりに役立ててほしい…。
と、まぁ、こんな意図で編まれたらしいのだけれど、それから既に二十年以上の時が過ぎていて、日本の道路も、アメリカ、ヨーロッパの道路も、この本が編まれたときとは、変わってしまっているはずではある。それでも、「車が走る」という目的は同じなのに、国によって違う顔を見せる道路が面白い。アメリカ、ヨーロッパだけと言わず、他の国も見てみたいなぁ。
アメリカのひたすら何もない道、東に向かって広がっていくというアメリカの町(出勤は西に向かい、家路への夕方は東へ車を走らせることが出来るから、いつも太陽を背にして眩しくない)、広い駐車場のある鉄道駅(パーク&ライド。空港ではこれが、パーク&フライトとなる)、廃道と化しても撤去されないままのハイウェーの残骸…。
ローマの石畳の道、車が入れない路地、二千年前に作られ、完全に原形を残し、一部が道路として使用されている、南フランスの水道橋、山の上に張り巡らされたスイスの道路(国民皆兵のスイスでは、山合いの地方道であってすら、戦車や装甲車の走行に耐えるよう頑丈に作られている)…。
車が走る道路だけでなく、自転車道、遊歩道、鉄道についても少し。その他にも、ドライブインや、料金所、防音壁、建設と補修などについても、各国の写真が載せられています。
どんな道を作るべきか、今参考にするとしたら、どこの国なのかなぁ。ひたすら道を追うだけでも、色々な貌が見えて面白かったです。
目次
まえがき
アメリカ編
ヨーロッパ編
イタリア
フランス
西ドイツ
オランダ
ベルギー
イギリス
スイス
アメリカに学ぶ 今野源八郎
ヨーロッパの道路 武田文夫
坂手道明
あとがき