「たまゆらの道」/世界は繋がってゆく | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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志村 ふくみ, 志村 洋子
たまゆらの道―正倉院からペルシャへ

染織家、志村ふくみ、志村洋子さん母子がものした本。副題に正倉院からペルシャへ、とある通り、日本の染織家であるお二人が、辿った染織の道は実に幅広く、深い。同じ日本であっても、第一章「日本の美がたり」で訪れるのは、伊勢神宮における「神々の装束」であったり、高野山の「祈りの色と文様」、毛越寺・厳島神社・野田神社の「舞の装束」など、私たちの日常とは離れた奥深い所に密かに存在しているものたち・・・。写真も綺麗です。

目次
序文
第一章 染織への道
第二章 日本の美がたり
第三章 日本の美の源流をたずねて-イラン、トルコ
作品とエッセイ
終わりに
感謝
取材協力
参考資料

 
ふくみ、洋子の親子がほぼランダムに書いておられる共著なので(文章の最後には、(志村ふくみ)、(志村洋子)などの記述があるものの)、今どちらが書かれているのだ?と考えると、そういう点ではちょっと読み辛い。ふくみさんが書かれた方が、何だかびしりと厳しい気が通ってる気もするんだけど。ええ、居住まいを正して読まないと、怒られちゃう感じ。藍を立てたり、植物から色を染めるのは、一期一会の真剣勝負。そもそも、気迫が違うのかもしれません。

豊富に付けられている写真の一部をメモ。

・高野山の霊木(p72-73)
 高野槙から染められた、薔薇色と黄色の美しい事! 茶色の木からこんな色が出るのか不思議ー。
・毛越寺の延年の舞(p74-75)
 ふわりふうわりと舞う。
・仙台・南蛮の陣羽織(p88-89)
 水玉の伊達家の今見てもモダンな陣羽織。「紫羅背板五色水玉文様陣羽織」。 
・ペルシャ(p225、p230-231)
 金糸を入れた錦織物、華麗な「ザリ・バフィ」を織るところ。
・装飾タイルのモスク(p246-247)
 緑と青は、天を映し出す聖なる色として崇められたとの事。

そういえば、この本が頭にあったからか、こんな本も借りてきてしまいました。

NHK「アジア古都物語」プロジェクト
NHKスペシャル アジア古都物語 イスファハン―オアシスの夢

しかし、こちらは惜しむらくもカラー頁が少ない! こんなNHKスペシャルがやってただなんて、知らなかったなぁ。NHKスペシャル・アジア古都物語の一部だとのこと。見たかったです。

イスファハンは、「世界の半分」とまで謳われた美しい都市だったのだという。砂漠と沙漠は違って、「沙漠」は「水のないところ」を意味するのだそうだけれど(サハラ砂漠のように、絶えず砂嵐が起こり、地形が変わっているのが「砂漠」)、国土の殆どがこの「沙漠」と「砂漠」に占められる国で、このように美しい都市が発展したのは面白いことだなぁ、と思った。

番組の取材はちょうど2001年9月のニューヨークのテロ以降の事であり、イランの隣国アフガニスタンへのアメリカによる空爆が続けられていた時期だったとのこと。イスファハンで働くアフガン難民の中には、故郷に残した両親の消息が分からなくなった人もいるのだという。世界は美しく、人々は懸命に生きているのにね。