「百器徒然袋―風」/にゃんこーー!! | 旧・日常&読んだ本log
- 京極 夏彦
- 「百器徒然袋 風
」
京極堂シリーズ外伝、探偵小説でありまするよ。でも、にゃんこー!な本なのです。
目次
五徳猫
雲外鏡
面霊気
さて、京極堂シリーズで探偵といえば、いわずと知れた彼、榎木津のこと! 薔薇十字探偵社などという、派手派手しくも人を食った名前が、あんなに似合うのも彼ならでは。前作の「雨」を読んでから、えらく時間が経ってしまったので、これは印象のみなんだけど、「五徳猫」「霊外鏡」あたりまでは、前作に比べ榎木津大活躍という感じではなく、自他共に認める凡人、図面引きの本島が訥々と語る感じだったのです。いや、違うな、良く読んだら榎木津は「殲滅」とか云ってふふんと笑ってるし、いつもの通り大暴れしてるんだけど、どうもこの本島の語り口が鬱々としてるんだな。
しかし、私はこの探偵小説には、榎木津大活躍!を求めているわけで、ずっと何か違う・・・、と思いながら読んでたんだけど、最後の「面霊気」において、やっぱりやってくれましたよ。そうだよね、榎木津だもんね、こうじゃなくっちゃ。本島の語り口を超えて、ドカーンと爆発しておりますよ。しかも、「にゃんこ」で。笑 自分の中で、何となくそれまで抑えられていただけに、最後のドカーン!に満足、満足でありました。
しかし、京極堂シリーズにおける凡人といえば、関口も他の濃いメンバーに比べると、どっちかというと凡人だと思ってたんだけど、あれはあれで「凡人」とは違うんだな、きっと。ぐるぐるの仕方が、この本島などと比べると非凡だもの。
こちらの語り手、本島は凡人、凡人と自分に言い聞かせ、また他の面子にも面と向かって凡人と言われているんだけど、「あの」探偵、榎木津と関わってしまったお陰で、色々と非凡な目に遭ってしまう。その災難がこの本のお語。お話によっては、榎木津を釣るイソメのように、釣り餌として拉致された挙句、すっとこどっこいな体験をしていたりもする。中禅寺が言うとおり、やっぱり「榎木津なんかと付き合うと大変な勢いで馬鹿になる」んですかね。馬鹿というか、非常識で現実離れした出来事が、物凄い勢いで起こるのだ。
でも、ラスト「面霊気」はいいよ。ガキ大将はたとえ我侭であっても、子分どもを従えて、好き勝手にやるだけが仕事じゃないんだよね。人を人とを思わぬ榎木津(というか、大抵の人間は彼にとっては只の「下僕」)だけど、こういうところがあるから、皆なんだかんだ云って、彼についていってしまうんだよなぁ、きっと。
「面霊気」は私のお気に入りのキャラ、益田が酷い目にあってるのも面白かった~。益田ってあの性格だから、いじられてこそ生きる気も。なんてったって、自ら認める卑怯だし。追い詰められて、前髪を揺らす益田氏、好きです。笑 カマオロカですらなく、ナキヤマ呼ばわりされてるけど。そして、「邪魅の雫
」の乗馬鞭が出てきましたねー! 全く、あんなもん買うからさ・・・・。笑

