「翻訳者の仕事部屋」/翻訳者・深町さん | 旧・日常&読んだ本log

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流れ去る記憶を食い止める。

2005年3月10日~2008年3月23日まで。

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深町さんといえば、私が最もお世話になったのは、メアリ・H・クラークの一連のサスペンス物。そのハーレクインロマンスも真っ青な展開に飽きが来て、途中リタイアしたものの、最初の頃は結構面白かったように思う。深町さんには、その他にも色々な訳書があって、例えばこのブログの中で言えば、クリスティの「さあ、あなたの暮らしぶりを話して 」なども、深町さんの手によるもの。

深町 真理子
翻訳者の仕事部屋
飛鳥新社


さて、今日のこの本は翻訳者・深町さんのエッセイ集。あちこちに散らばったものを集めたものらしく、幾分重複しているところもあるものの、私は興味深く読みました。プライドを持って、生き生きと仕事をしておられるので、生き方の本と読んでもいいのかもしれません。

訳者は役者。役者は台本を、訳者は原著を読んで、そこに書かれていることを自分なりに咀嚼し、解釈をする。両者の違いは、その表現に用いるのが、役者は自分の肉体であり、訳者は自分の言葉であるという、ただそれだけ。小説というものは、何を語るかだけではなく、いかに語るかに作者が心血を注いだもの。何を語っているかを正確に伝えるだけでは不十分であり、いかに語っているかを伝える事が出来てはじめて、翻訳の名に値すると言えるだろう。

こう語る深町さんの翻訳の話、日常の話、翻訳から離れた純粋な読書の楽しみの話などなど。

目次
Ⅰ 私の翻訳作法
Ⅱ 仕事机から離れて
Ⅲ こんな本を訳したり読んだり
フカマチ式翻訳実践講座


【メモ】(:以降は、私の感想)

・「アンネの日記」を訳しながら、感じたご自分の戦争体験との共通点
・ノルウェーの木造教会スターヴヒルケ:ノルウェーも面白そう。
・章タイトル「十月はブラッドベリの月-」(Ⅲより):郷愁を感じるというブラッドベリ。私はなぜ読んでいないのだ?
・スティーヴン・キングは末端肥大症である。彼は本質的に”語ること”の好きな人で、プロットの妙や、構成上のバランスよりも、まずは語りたいことのありったけを、その場その場の描写にぶち込んでいかないと気がすまない:一字一句、同感
・深町さんが、京極さんの「狂骨の夢」を読んでた!

・折原一さんもお気に入りらしい

・皆川博子「死の泉」:以前読んで、面白かったのに、すっかり内容を忘れている自分に気付く。ガーン。