キナバル国際クライマソン!! | SkyRunner キャベツのブログ

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高度2000m以上 透明な光に包まれながら風になる スカイランナーの世界

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東南アジア最高峰のマレーシアのキナバル山(標高4095m)。ここで10月に開催されているアジアを代表するスカイランニングレースが『キナバル国際クライマソン』です。

今回が3度目の挑戦。SWS(スカイランナーワールドシリーズ)からははずされていましたが、山頂コースがさらにタフになって復活しました。新しいコースの第1回目のレースです。SWSではないため、キリアンたち、欧州の強豪選手たちは不参加でした。そのため、マレーシアやフィリピンのアジア勢やアジアに留学中の黒人陸上選手たちによる戦いとなりました。エリート部門である山頂コースへの参加者は男女合わせて60名ほどでした。

強力な欧州勢が不在ということもあり、タイトルを狙いたいという思いがありました。しかし、地元のマレーシア人をはじめ、アジア勢にも手ごわいランナーがいます。自分のペースを乱さずに、ベストを尽くそうという気持ちでスタート地点に立ちました。

朝日に輝くキナバル山を横目に朝7:00スタート。最初の4kmは登りのロードです。ケニア出身の2名の黒人選手が勢いよく走っていき、その後をアジア勢が追いかけます。登山口のティンポホンゲートでは、3番手集団に4名のアジア勢がまとまっていました。私もその中のひとりでした。登山道に入ると、標高差2000以上の急峻な登りの階段や岩場が4095mの山頂まで続きます。ひとりの背の小さなマレーシアの選手が勢いよく私たちを抜き去り急峻なのぼりを駆け上がっていきました。「これは途中でバテるだろう」と私は思い、無理に追わずに私のペースで登り続けました。

その後は、4番手の一人旅がしばらく続きます。いつの間にか標高は3000mを超えて酸素の薄さを感じるようになってきました。樹木の高さが低くなり、眼前には巨大な岩が不気味に聳えていました。いよいよキナバル山の核心部分に入ります。ペースダウンした黒人選手をひとり抜き去ると、草木一本も生えていない一枚岩の上に出ました。そしたら、先行する2人の小さな姿が見えました。驚いたことに、バテるだろうと思ったマレーシアの選手が先頭に出ており、黒人選手をグングンと突き放していきます。これ以上彼に離されると勝機を失ってしまう。そのような焦りを感じ、低酸素のために重くなった身体を必死に持ち上げ続けました。久しぶりのキナバル山頂までの道のりは、私が記憶していた以上に過酷なものでした。最後は足がフラフラになりながら、なんとかスタートから2時間18分、3位で山頂にたどり着きました。トップのマレーシア人との差は6~7分、2位の黒人選手との差は1~2分となっていました。

テクニカルな岩場の下り。まるで空に吸い込まれて落ちていくような感覚に捉われました。ランニングというよりスカイダイビングをしているような気分です。本当に美しい景色なのですが、それを楽しむ気持ちよりも、レースで結果を出すという気持ちの方に集中していました。怪我をしない程度に攻め、2位の黒人選手を標高3000m付近で抜かしました。それからは、トップのマレーシア人を追いかけます。しかし、トップの気配がありません。また長く苦しい一人旅が始まりました。アップダウンの激しい登山道を下り終えると、最後は9kmのロードです。基本的に下り坂ですが、キナバル山を下ってきた私たちにとっては平地のような感覚に捉われてしまいます。それだけ、脚への衝撃が大きいキナバル山の下りなのです。

ロードでは途中に長い直線がありましたが、先頭の姿を捉えることができませんでした。途中、はるか先に小さくマレーシア人の姿が見えましたが、5分以上離されており、相手にアクシデントが起こらない限り逆転は不可能だということに気付かされました。悔しい気持ちと最後まで諦めない気持ち。その両方が混ざり合ったまま、常夏の太陽が照りつけるロードを走りました。

結果は4時間18分。2位でゴールです。下りのタイムは負けていませんが、登りの圧倒的な貯金で逃げられてしまいました。2位というのは日本人最高タイの順位で、嬉しい気持ちもあったのですが、優勝というチャンスを逃してしまった自分の実力の無さに悔しさを感じもしました。これでは世界で通用しない。その思いが悔しさとなって湧き出ました。

優勝したのはキナバル山でポーター・ガイドをしている21歳のデビッドというマレーシアの若者でした。彼は今まで上位に入ったことが無いので、完全にノーマークの選手でした。マレーシアの新星が現れたレースでした。身長は小学生高学年くらいの低さですが、キナバル山を知り尽くした彼の力強い登りは、とても良い勉強になりました。まるで、往年のリカルド・メヒヤ(世界最強といわれたメキシコ人選手)をみているようでした。アジアで切磋琢磨できるライバルと出会えたことで、悔しさだけでなく嬉しさもありました。

結果は2位でしたが、嬉しいこともありました。AMRC(Asian Mountain Race Circuit)というシリーズ戦が昨年からフィリピン・マレーシア・日本を舞台に開催されているのですが、富士登山競走とキナバル山の獲得ポイントの合計で、私がスカイランニングのアジアチャンピオンになりました。日本ではほとんど知られていないシリーズ戦ですが、既にフィリピンとマレーシアではシリーズ戦を通しての選手間の交流が始まっているそうです。アジアでは着々とスカイランニングの発展する道ができているようです。アスリートとしてだけでなく、日本チームの代表として私もアジアにおけるスカイランニングの発展に関わっていきたいと思いました。

さて、キナバルのレースをもちまして、私にとっての2013シーズンは終わりました。今年は国内のレースで喜びを感じた一方、欧州のレースで悔しさを味わった1年でありました。この悔しい気持ちは忘れたくても忘れられません。来年の6月にシャモニで開催されるスカイランニング世界選手権が、私の最初の大きな目標です。精一杯努力をして、今度こそ欧州の舞台でも喜びを感じたいと思います。

今年1年間、応援していただいたサポーターのみなさん、一緒に切磋琢磨してくれたアスリートのみなさん、素晴らしい大会を開催してくれたオーガナイザーやスタッフのみなさん、本当にありがとうございました!!来年はさらに進化した走りを見せます。また、山でお会いしましょう!!


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