★ややネタバレあり★

「モディリアーニ 真実の愛」
  2004年(フランス、イギリス、イタリア)
  原題:Modigliani
  監督:ミック・デイヴィス
  出演:アンディ・ガルシア、エルザ・ジルベルスタイン、

モディリアーニ チラシ

  

悲運の天才画家アメディオ・モディリアーニと、
その妻ジャンヌとの知られざる愛の物語。


画家の苦悩というよりはジャンヌとの愛に
重点をおいたラブストーリーになっていた。


冒頭でジャンヌが言う。
どこかうつろで、でもしっかりと芯のある
表情で。
「あなたは愛を知っていますか?
 ほんとうの愛を
 地獄の苦しみを味わう愛が私の愛……」

そして、物語が始まる。



キャッチコピーになっている
「本当の君が見えたら、その瞳を描こう」
表すシーンが印象的。
二人の最初の出会いの時、モディリアーニは
女学生であるジャンヌに「君を描きたい」という。
屈託くなく 微笑みながら

「悪い噂が多い人よ。行くわけないでしょう」という。
しかし、次のシーンではちゃっかり絵のモデル
になっているジャンヌ。



描きあげた絵には瞳が描かれていない。
「瞳が遠いよ」とジャンヌの元に近付く
モディリアーニ。
「魂を感じたら瞳を描くよ」と言う。
キャッチコピーやパンフでは「本当の君~」と
なっているが字幕では「魂を感じたら~」と
訳されていた。

私はこっちの方がセリフ的に好き。



そして、彼が最後に妊娠したジャンヌの絵を
描く。
そして、その絵には瞳が描かれていた。


モディリアーニ パンフ

 表紙のモディリアーニはジゴロ風

          (パンフ。小さいけど600円)




ジャンヌのモディリアーニへの想いは
激しすぎ、全てを捨てても彼を選ぶ。
そして、献身的な愛で支え、どんな状況に
なろうとも愛しぬく。


だから、彼がこの世を去った時に
ジャンヌがこの世に存在する価値を
見出さなくなり、後を追うのも自然だと思った。

モディリアーニもそんなジャンヌの愛が
あったから、描き続けられたのだろう。


苦しさから逃げ出すように薬や酒に溺れる
弱い部分、自信家で好き勝手に振舞うようで
いて、決して開くことのない心の闇の部分、
いろんな彼の部分が映像で見せられる。
でも、彼自身もやっぱりジャンヌを深く
愛していたのだろう。


幻覚と戦いながら、落ち着いてしまうことは
画家として本望じゃないといいながらも
やっぱり最後にはジャンヌと子どもとの
穏やかな幸せを願っていたのだろうか。



死に際にモディリアーニはジャンヌに言う。
「愛してくれ」と。
ふつうはここでは「愛してる」だろうが
彼は愛して愛して欲しかったのだ。
そんな愚かな自分を受け入れて欲しかったのだ。




キャスティングがすごくよかった。
ジャンヌ役のエルザはまさにモディリアーニの
絵のイメージにぴったりの女性だ。
面長で、目鼻が顔の中心にあり、慈悲深さが
潜む瞳。
線が細そうに見えて、こういう女性の方が
芯がしっかりしているのだろう。
エルザはゴッホやロートレックの生涯を
描いた作品にも出演しているという。


実際のジャンヌは19歳で彼と出会い、21歳の
若さで亡くなったのだが、この作品での
ジャンヌは目尻に笑い皺がある女性として描かれている。



主役のモディリアーニを演じたアンディも
とっても魅力的だ。
適役のピカソは最初は全くイメージが違って
違和感を感じたけど、深くからんでいくうちに
いい味が出ていて、おもしろいキャスティングだと
思った。
他の画家たちの絵を描いている姿の狂気なまでの
すさまじさ、苦悩ぶりなども映像的に
すごくよかった。



ジャンヌの献身的な愛は美的にするだけでなく
愚かな部分も描かれていたところは共感したし、

泣けた。