畑塾2 | 内田悟の「やさい塾」ブログ

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野菜のことが知りたい、食の安全・安心に関心がある方々のために「野菜を自分の目と舌で選択できるきっかけづくりに」と、築地御厨代表の内田悟が開催している「やさい塾」のブログです。

畑塾2

 最後にうかがったのが、仲居主一さんの畑です。
 同じく自然栽培農家として、15年以上。わけても、にんじん、サツマイモの味わいは格別で、御厨にも秋になると「仲居さんのさつまいもはまだか?」との問合せが来るのです。
 さて、到着するや、仲居チームのみなさんが一列に並んで迎えてくださいました。息子さん、弟子にあたるねぎ農家の三橋さん、仲居畑で修行して5年になる青年、大学院を卒業して飛び込んだ若者などなど。そう、この仲居畑は、人をも育てる畑なのです。
 仲居さんが言います。「どしどし質問してください、彼らもちゃんと答えられっからね」。
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仲居さんのもとには、農法も生き方もふくめ、
仲居流に共感した若者が集まってくる。

 仲居さんの畑でも、さまざまな野菜が育っていました。にんじん、らっきょう、かぶ、白菜…。中には、春に菜花として出荷される小松菜の子どもたちも。
 見渡すと、畑には田神さんの畑のような畝はありません。どちらかといえば、あるがまま。だから、畑に入ると野菜を踏まないように要注意です。
 にんじん畑で仲居さんが一本抜いてくださいました。おお、みごと! 主根が長くてまっすぐで、しかもひげ根の太く多いこと。「これは、レトロにんじんといってね、25年前に生まれた連作に強い品種なの。この姿、この子の生き方に魅力を感じてね。勉強させてもらってる」。
 聞けば、同じ畑でも場所によって育ち方に大きく違いが出るのだそう。日当たりや水はけ、そして土の状態のちょっとした違いが、必然個性の違いとなって表れる。芽すら出ない場所もあるというのですから、育てる大変さは推して知るべしです。
 大人気のサツマイモ、金時も30年前から育て始めたそうですが、仲居さんいわく「人間に対して注文をつけてくるんだよ」というくらい、手強い相手なのだそう。野菜を人間と同じように語る仲居さんに、内田さんに共通するスピリッツを感じます。
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野菜を「この子たち」と呼ぶ仲居さん。

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掘りたてのにんじんの香りをかぐ。
「ただ甘いんじゃなくて、にんじんくさい。
これが大切なんだよ」と内田さん

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ぜひ作ってほしい、とお客さんから頼まれたという
聖護院かぶ。気持ちよさそうに育っていた。
自然栽培といえど、雨風よけは必要だ。

 広々とした畑の空気をいっぱいに吸い込んで、さあ、お待ちかねのランチタイムは、御厨野菜で作られたベジランチ。アツアツのお味噌汁と一緒にいただきながら、仲居さんのお話をうかがいました。
 野菜が土とそのなかの微生物との協同で育ってゆくこと。土壌が合うか合わないかは、野菜自身が姿や味わいをもって教えてくれること。野菜を育てるには、自然を読み解く(気温、湿度、風など)力が必要とされること。いずれも、仲居流「農業を解く」営みのエッセンスです。ですが、肥料も農薬も使わない自然栽培でここまで歩いてきた仲居さんの道のりは、並大抵のものではなかったに違いありません。事実、この春も大変な苦境に立たされました。「だけどね、逃げないでよかったです」。
 最後に、いつも穏やかな笑顔の仲居さんの顔がぐっと引き締まり、眼光が鋭く底なしに深くなった瞬間がありました。
「野菜はね、本当は育てるもんじゃない。育つものなんだよねえ」。
 この言葉に、参加者はみな、それぞれいろんな思いを抱いたと思います。

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すべて野菜で作られたお弁当。
おなかいっぱい、おいしくいただきました!
シェフは内田さんと長いつきあいのある「ポアン」店主の佐々木さん。
自然栽培の野菜と無農薬の玄米を中心としたヘルシーメニューで人気。
「ポアン」
http://organicpoint.blog83.fc2.com/

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仲居さんと内田さん。
仕事は違うが、野菜にかける愛情はともに深くて温かい。

 このたび訪問させていただいた生産者のみなさま、本当にありがとうございました。
 この大地で、野菜とともに生きている。
 そのことを、カラダとココロで受け止められた、晴れ晴れするような冬の一日でした。