月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記


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遅ればせながら、直木賞受賞作を読む。
既に古本屋に出ていたので……。


「ホテルローヤル」
桜木 紫乃 (著)
集英社/2013.1.4/\1400


月灯りの舞

体を使って遊ばなきゃ いけない時がある
        <帯より>


連作短編7本からなる。


湿原を背に立つ北国のラブホテル「ホテルローヤル」。
廃墟になった「ホテルローヤル」で恋人のヌード写真を
撮影するカップルの話から始まる。


そして、最後は「ホテルローヤル」と名付けた経営者と
彼の子供を孕んだ愛人との話で終わる。


そう、ホテルローヤルの一生が、現在から過去へと
時間軸を遡る構成になっている。
登場人物が微妙にからみあい、その章で主人公になったものが
別の章では背景の人物になったりする。


どれもが男と女がまぐわうのだけど、性描写は淡々としていて、むしろ短い。
「性」を描いているが、それはぬめりとした体温のある性ではなく、
どこか乾いた感じがする。

「性」というよりは「生きざま」の「生」か。


短編だからサクサク読めてしまい、物語に深みはないが、
全体を通すと、人はどこかでからみあい、つながっている
その関係性をみると、とても考えさせら、
人の縁の妙を感じる。


どの女が一番シアワセだったのだろうか。
どの女が より満ち足りた性だったのだろうか。
どれももの悲しさが漂い、重く、ともすれば陰鬱とした
雰囲気ではあるが、読後は悪くない。


セックスをすることを「愛し合う」と言うが、
体を重ねることが全て「愛」の証ではないことを
突きつけられる感じ。


かといって、性の快楽を貪るというだけでもない。
いくつもの男女の関係性を見せられるが、
逆に、なぜ抱き合うのだろう。

何を求めて体を重ねるのだろうと思ってしまう。



個人的には、2話目の「本日開店」という話が印象深かった。
貧乏寺の住職の妻が、檀家に体を開くという話。
こんなカタチのまぐわいというのは否定する人も多いだろうが、
誰かがそれで心地よくなるのなら、それもいいのかもと
思ってしまう私にはモラルがないのか……。


それとも、「施し」をしていると思っている方が、
実は「施されている」のか。


この話の女には、とても共感する部分が多く、
ちょっと悲しい気持ちになるけど、昔を思い出してしまった。


女は何が満たされていれば満足するのか、価値観は人それぞれ
だろうけど、肌と肌を合わせる人がいることって、
それだけで、シアワセなんじゃないかとも思う。

ホテルローヤル/桜木 紫乃
¥1,470
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『ヘヴンズ ストーリー』でベルリン国際映画祭2冠を
獲得した瀬々敬久監督が、さだまさし原作の同名小説
を映画化した「アントキノイノチ」が。
第35回モントリオール世界映画祭で
革新的で質の高い作品に与えられるイノベーションアワードを受賞。


慌てて、原作本を買いに走って読んだ。
文庫版の巻末には瀬々敬久監督の「解説」も収録。



「アントキノイノチ」
さだ まさし:著
幻冬舎 (幻冬舎文庫)/2011.8.5/600円


月灯りの舞

杏平はある同級生の「悪意」をきっかけに二度、その男を殺しかけ、
高校を中退して以来、他人とうまく関われなくなっていた。


遺品整理業社の見習いとなった彼の心は、
凄惨な現場でも誠実に汗を流す会社の先輩達や
同い年の明るいゆきちゃんと過ごすことで、ほぐれてゆく。

けれど、ある日ゆきちゃんの壮絶な過去を知り‥‥。
「命」の意味を問う感動長篇。
              <裏表紙より>



タイトルはもちろん「元気ですかー」のアノヒトを
もじったもの。

この言葉は、小説では最後の方に登場し、
このタイトルの深い意味がじんわりと身にしみるしくみ。


“天国へのお引っ越し”の遺品整理会社「キーパーズ」を
モデルにしているが、さすが、さだまさし。


凄惨な“現場”、酷い“エピソード”を一つ一つ乗り越えて
行くのだが、「遺品整理屋は見た!」というような
キワモノ的な描き方ではなく、とても詩的な文章である。


構成としては、過去と現在が交互に書かれていくので、
そのほどよい もったいぶり方と間合いが、先を気にさせる。


過去では、杏平がどのうよに壊れていったのかを書き、
現在では、彼が心をどう取り戻していくのかを書く。


孤独死、無縁社会というような人との関わりのない「現実」や
「老人世界」を描く一方で、人とつながることで傷つけあい、
ひきこもったり、心を病んだりする「十代の世界」という。
対比した年代と状況。

それを20代の若者の視点で語るのがおもしろい。


悪意のある人は人をどう壊していくのか、
優しき人は人をどう癒していくのか、
どちらも「巧み」に人の心に入り込むので、
その描写はとても勉強になる。


家族を捨て、男とかけおちした母親の孤独死の話は
とても身につまされたが、泣けたし、
タクシー運転手が強盗に殺される話も切なくて泣けた。


光母子殺人事件をモチーフに壮大な「ヘブンズストーリー」という
幻想的かつ深い人間ドラマにした瀬々敬久監督。
この「生と死」の現実を
「何度も小説を読み解き脚本を書いた」という監督が
どう映画化するのか、どこにポイントを置き描くのか、
とっても楽しみ。



瀬々敬久監督が解説で
「遺品整理」という仕事は
“人と人をつなぐ仕事、そればかりではなくもしかしたら
時間や空間をもつなぐ仕事”
と語っている。



アントキノイノチ (幻冬舎文庫)/さだ まさし
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アントキノイノチ/さだ まさし
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★「ヘヴンズストーリー」@京都シネマ 感想
http://ameblo.jp/tsukikagenomai/entry-10921542992.html



★遺品整理屋をモチーフにした漫画には
「DEATH SWEEPER デス・スウィーパー (1)」
  (きたがわ翔:著/角川書店)もある。
モチーフはほぼ同じ。
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10066212286.html

「DEATH SWEEPER デス・スウィーパー (2)」
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10084535512.html

「DEATH SWEEPER デス・スウィーパー (3)」
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10217264572.html


デス・スウィーパー 1 (KADOKAWA CHARGE COMICS)/きたがわ 翔
¥609
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いや、死体マニアじゃないんだけど、死体モノの本って
けっこう読んでるなあ、私。
検死、死体、解剖学に興味のあるかはぜひ。


★遺品整理屋の真実を描いた新書。
遺品整理屋は聞いた! 遺品が語る真実 ~消せなかった携帯の履歴、孤独死のサイン、女の遺し物…~.../吉田 太一

http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10377272575.html






★死体は語るシリーズの上野センセの本。
 死体から見るその人のドラマ。
「死体は切なく語る」 (上野 正彦:著)
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10042666519.html



★光母子殺害事件でも監察医の視点で語る上野センセ。
「死の雑学―舌を噛み切っても死ねない理由」
    (上野 正彦:著)
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10042409106.html


★「解剖学はおもしろい―死体からDNAまでの秘密」
   (上野 正彦:著)
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10010473974.html



★「自殺死体の叫び」(上野 正彦:著)
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10002447127.html

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映画「人間失格」を観たので、原作を再読。


月灯りの舞
「人間失格」原作文庫
期間限定の生田斗真表紙バージョン。



弱い……弱いけど、したたか。

ずるい……ずるいけど、不器用。

愚か……愚かだけど、率直。


偽りながらも偽りきれなかったのだろうか。


葉蔵は、たくさんの人に愛されたけど、
結局本当には誰も愛することができなかったのじゃないかな。




★「人間失格」映画の感想はこちら。
http://ameblo.jp/tsukikagenomai/entry-10478060536.html






月灯りの舞
「NHK知る薬 “こだわり人物伝”」2009.10・11月号
太宰治と松本清張特集。


角田光代、辛酸なめ子、西加奈子、田口ランディの
4人の女性作家が、それぞれ太宰治の作品世界を語る。


辛酸なめ子は
「自分は不器用で生きるのが下手というフリをしながら、
 実は器用な太宰。魔性の男性の印象が強まる」
と。



田口ランディは「人間失格」を初めて読んだ時、
高い所から突き落とされ、浮遊感を味わったと言う。


太宰との共通点を上げ、作家になったことへのつながりを語る。


「彼岸の視点が此岸を見ている。身体はこの世に存在しているが、
 魂はあの世にある。そんな感じなのです」
と太宰をみている。


そして、
「なにか、親鸞と法然の思想と通じるものを太宰の文学から
 感じる」と語るランディ。



「人間とは救いようがないほど愚かで醜いもので、
 そのように徹底した人間に対する客観的な突き離しがあったからこそ、
 太宰文学は、一貫して人間の弱さを描き続けたのだと思われる」
と。






太宰の言葉たち


★「愛に生きる言葉 太宰治」 青志社文芸部:編集
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10315487524.html



★「太宰治の四字熟語辞典」 円満字二郎:著
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10287487187.htm


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★「さよならを言うまえに 人生のことば292章」太宰 治:著
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10248747635.html


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北海道で執筆をされている方より
同人誌「札幌文学」をいただいた。


月灯りの舞-sa

彼女の作品は「サンドバッグ」という
短編作品。


あある女の通夜のシーンから始まる。

妻に先立たれて、泣き崩れる夫、
立派な祭壇。


それがまやかしであることを知っている
映子が、遺影の明子を見つめながら、
彼女との出会いから別れまでを語っていく。


明子の死は自殺であることを映子だけは知っていたが
事故死として処理されていた。


ミステリではないので、死の真相を暴くとか、
その夫に対して復讐を遂げる話でもない。

明子という女が、夫に対してどのような仕打ちを
していたのか、

明子という女の人生がどんなものだったのかを
映子の視点で語られる。


その描写は細かく、女性特有の毒もあり、
そこに明子という人物が息づいていたことを
読む人に体感させる。


貧しい家で育った明子は、お手伝いとして働いていた
家の嫁に迎えられる。
しかし、それは「籍」という鎖につながれた
「嫁」という名の奴隷でしかなかった。


使用人なら給料と休暇が与えられるが、
嫁はタダで休みなく働かせることができる。


姑の介護に明け暮れ、夫には蔑まれ、捌け口にされる。
そう、タイトルの「サンドバッグ」はそういう意味だ。


言葉の暴力、人格を認めないという仕打ち。
それはともすれば、肉体的暴力よりも酷いことかもしれない。


逃げ出す術を知らない、逃げだせない明子は
そんな生活の中から、自分のできる
ささやかな幸せを見つける。
それも、古本屋で買った本を丁寧に読み、
映子の店で珈琲の一杯を飲むということ。


この明子と映子という二人の女の距離感を
持った付き合いを通して、
嫉妬心や憐み、同調など、
自分の感情として捉える感覚が
巧みに描かれている。


鎖に縛られたままの明子の最初で最後の抵抗。
それだけは自分の意志でできること。
「自死」という選択をした明子。
夫への最大のあてつけ。


もっとかしこい生き方はいっぱいある。
だけど、こうしてしか生きられなかった女。

死という選択を選んだ明子を愚かものと
一言では片付けられない。


立派なお葬式を出してもらっても、
明子は浮かばれないだろう。


映子は、生前に明子が残した手紙の中にあった
明子が望んだ“音楽葬”をしてあげる。
といっても、ラジカセからテープを流すだけであるが。
明子の墓の前で曲を流す映子の描写が心に
しみいる。


映子は喫茶店の雇われママで、
その店の名は「ゆかり」という。
人の縁の“ゆかり”が店名の由来だそう。


小説としての描写の仕方や人間像の作り方など、
とても勉強になったが、女としての生き方も
考えさせられた。

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北海道は小樽で、執筆活動をされている方より、

著作を送っていただいた。


「庵の客」
 高井かほる:著
 近代文芸社/2001.4.30/1300円


庵の客
受賞作より候補作のほうがおもしろい。
北の町、小樽で活躍する著者が描く男と女。
        <帯より>



四編からなる珠玉の短編集。


男と女の物語が丁寧な情景描写とともに
綴られている。

どれもラストがちょっとせつない。

でも強く前向きに生きようとする
明るい希望の光がうかがえる。


----------------------

「つり橋」


秋に結婚を控えた尚美が、叔母の住む島を
訪ねる。
叔母は若い頃に年下の男とかけおちまでしたが、
男は別の男と結婚し、叔母も婚期を傷心で過ごす。
そして、離島の海老船の漁師に嫁いでいた。


結婚の報告をする尚美に叔母は
“結婚は誰としても同じだよ。
 つり橋を渡るようなもンでさ。
 渡ってしまうまでは、気持ちと一緒で
 グラグラ揺れるもンだ
”と、ぽつりと語る。


海老船で働く無口な男に島を案内されるが、
途中で抱きすくめられる尚美。
婚約者にはない強引さに魅了されてしまう尚美。

でも、その男と叔母は……。


白い肌の色気のある女。
男を誘ってしまう女は、嫌悪感をもたれやすい。
身持ちの固い女は否定し、そうはなるまいと思うが、
似ている部分を見つけた時、激しい自己嫌悪に襲われるものである。


----------------------


「手紙を書く女」


両親の離婚で祖母に育てられたまどかは、
顔にあざがあることで、消極的に生きている。


そんなまどかが公園のベンチで肩書きのない名刺を
拾い、その男に手紙を書く。
失業して就職活動をしていた男とまどかの手紙の
やりとりが始まる。

そして、まどかは顔のあざのことも話し、
それを認めてくれたことがまどかにはうれしかった。

そして、名刺を拾ったあのベンチで会うことになるが、
彼の隣に座っていたのは美しい横顔の女の人で、
二人の間に現われたのは女性によく似た小さな女の子。


手紙を待つもどかしさ、コンプレックスを抱く女の
恋に踏み出せないでいる淋しさと葛藤など
心理描写がたくみに描かれている。

そして、やさしさは時に残酷な刃となって
心を突き刺すことを知らしめてくれる。


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「二○六号室」


子宮摘出の手術を受け、婦人科の病棟に入院した
美由紀は、かつての恋人であった男と再会する。


美由紀と同室になった男の妻。
トップセールスマンで女の噂が絶えなかった男の
かつてのイメージはなく、面影はなく、妻の世話を
甲斐甲斐しくする男の姿に美由紀の心はかき乱される。


かつて愛した男が妻といめ姿を見た時、
女はどういう気持ちになるのだろうか。
そんな微妙な気持ちの揺れを千歳に描いている。


幸せであって欲しいのか、相手の女がどんな女だと
幸せだと思えるのか。
過去には縛られていないはずだが、過去と向き合わされると
人は動揺してしまうのだろうか


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「庵の客」


小樽に向かう列車の中で菜織は、色白の青年と出会う。

若い頃、芸者だった千代は、茶道の師匠であったが、
経済的に追い詰められて、贅沢な茶道具と美しい庭のある「庵」を
“男と女の隠れ宿”としていた。


そして、菜織は、その「庵」で列車で会った生年と再会する。
男は金を払い、菜織は金を受け取る。
それから青年と菜織のつきあいが始まる。


青年は茶道の家元で家柄がよかったが、目が見えなかった。

とじこもっていた青年が、菜織と出会うことで外の世界へ
飛び出し、力強くなろうとする。

菜織は、彼の力になり、必要とされることがうれしかった。

でも、帰るべき場所、本来いるべき場所というのは
決まっているものである。

ラストは哀しい。


目は見えないけど、「赤色」はうっすらと認識できるという青年に
菜織とは赤い服を着て出かけるところとか、
細かい描写が独特の世界をなして表現されている。

互いが互いを必要とし、求めあっていても
一緒に暮らすことはできないというせつなさが
胸をしめつける。



月刊おたる
「月刊おたる」
ここでも執筆されている


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先日、東京へ行った時の旅のお供の文庫本。
待ち合わせのカフェで読んだのだけど、
外で読むんじゃなかったー。


こんなに泣かされると想ってなかったから
外で読んだけど、メイクがずるり……。


小説「東京少女」
 林 誠人、笹原 ひとみ


東京少女

泰文堂(Linda BOOKS!)/2007.12.5/571円

私の願いはただひとつ。
ひと目、あなたに会うことでした。
百年の時を隔てた恋物語。
          <帯より>


BS-iで放送していた「東京」と「少女」が出る
というコンセプトでやっていた『東京少女』という
ショートフィルムの映画化。


その映画の脚本を元に書き下ろした先行ノベライズ本。

連盟著作だが、林 誠人氏は映画「東京少女」の
脚本を書いた方で、小説を書いたのは、
これが小説デビューとなる笹原 ひとみ。


なんだか、いろんな形である作品なんだけど、
一つの「小説」として読んでみた。

少女向けで、センテンスが短くてサクサク読める。



高校生の未歩は、母と二人暮し。
まだ死んだ父を恋しく思っているのに、母から男を紹介され、
その場を飛び出す。

その時、地震にあい、ケータイを紛失してしまう。
そして、その自分のケータイにかけると、
電話に出たのは明治時代の青年・時次郎だった。


未歩は、SF小説家を目指し、ファンタジー賞に応募している。
時次郎は、文豪 夏目漱石の弟子で、小説家を目指している。
二人は、月の見える時だけ、ケータイで話すことができ、
互いに互いの夢を応援しあったり、支えあったりして
惹かれあっていく。


そんなある意味ベタなファンタジーだが、せつなくて泣けた。
平成と明治という設定が、うまく活かされていて、
どちらの時代にもある場所や建物、その時代にいた人が
重要なモチーフとなって、つながるようになっている。


未歩の誕生日は、ちょうど昼間でも月が見える日。
二人はそれぞれの時代で、銀座に出かけ、
明治から続いているカレー屋さんでケータイを
もって食事する。

そして、明治から続く呉服屋さんで、未歩は
時次郎から誕生日プレゼントをもらう。
このシーンは、じんと来る。


想いはこんなにも通じ合っているのに、絶対に逢うことの
できない二人。
でも、100年という時を超えてもつながる想いは
あるのだ。
ラストはせつなくて、涙してしまう。



運命には抗えないが、想いはずっと伝えることはできる。
夢を持っている人が読むと、絶対に夢をあきらめないで
頑張ろうって思える話だった。



ケータイで時空を超えて話しをするという話は
けっこうある。
「世にも奇妙な物語」でも中井貴一が主役だった
「携帯忠臣蔵」があったが、これもおもしろかった。


ちょうど、今月の「シナリオ」誌に
「東京少女」の映画のシナリオが掲載されていたので
小説と読み比べてみた。



シナリオ 3
月刊シナリオ 三月号

わー、これは小説の方が断然いいなあ。
小説は、平成の未歩の視点で書かれているため、
明治の時次郎は描写されない。


しかし、映像だと、未歩がケータイをかけているだけになって
絵的につまらないからか、平成と明治が交互にカットバック
して入るようになっている。


そして、時次郎にリアル感をもたせるため
生活の描写や妹とのやりとりがある。

小説では、時次郎側の人物はなく、
逆に未歩の親友“ゆかり“を登場させ、
そのやりとりで時次郎をイメージしあうようになっていた。
この ゆかりさんが美人でポジティブで
すてきなキャラなんだよね。


これは活字表現と映像表現の大きな違いだなあ。
何を見せて何を見せないかがポイントで、
好みの問題もあるのだろうけど、私は時次郎を
見せない小説版がいいなあと想った。

姿が見えなくて、本当に明治の人と話してたのか、
時次郎は存在していたのかって明確にしない方が
ラストの“想い”がより生きるのだ。


“想い”は見えないし“愛”も手にとることは
できない。
だけど、想いや愛によって、人は幸せになれるのだから……。


こんなに泣けたのは、たぶん私がファザコン
だからかも。

最初の一文

このときあたしは、まだ知らなかった。
月を見て、お父さん以外の人を想う夜がくるなんて……」

ここですでに、パパア~んと、亡き父を想い涙目。



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「グレイヴディッガー」
   高野 和明:著
講談社文庫/2005.6.15/667円

グレイヴディッが

「13階段」をしのぐ圧倒的迫力!
空前の疾走感で展開するノンストップ
サスペンス大作。   <帯より>


この本が出た時は、裏表紙のあらすじに
「巨編スリラー」とあったので、
あまり読みたいと思わなかったのだけど、
最近、高野氏の「6時間後に君は死ぬ」と
「幽霊人命救助隊」と続けて読んでおもしろかったし、
高野和明コミュでも評判がよかったので
文庫版を買って読む。


“悪党”である主人公が、過去の罪を償うために
骨髄ドナーになる。


そして、移植手術の日に病院へと向かう途中、
連続殺人事件に巻き込まれ、組織からも追われ、
警察からも追われる身となる。


作者お得意のタイムリミットが設定された、
追走劇。

いろんな乗り物を乗りついて、何度も危機にあいながらの
ハードボイルドな展開ではあるが、やはりユーモアを盛りこんだ
展開でだだの逃走劇では終わらない。
これが作者の持ち味か。


主人公の“悪党”の魅力的な人物にも惹かれるし、
いろんなタイプの刑事もリアルに描きわけられていて、
警察や組織の暗部、確執などにもふれているが、
やっぱり人情派刑事の存在が救いを感じさせてくれる。


作者は映画やテレビの脚本家だっただけあって、
途中で読むのをやめさせないエンターティメント的な
展開や、追走のスピーディさと謎解きを交互にカットバックで
見せる方法で、読者の意識をがっちりつかんでいくのがお見事。



殺人事件が魔女狩りになぞらえたり、
「拷問」「秘密結社」「カルト集団」「復讐」「暗号解読」と、
あやしげな要素がとけこんでいるのも興味深かった。

そして、タイトルの「グレイヴディッガー」とは墓堀人という意味で
死者が蘇るとか、移動された死体とか、ちょっとおどろおどろしい
雰囲気もあるのだが、決して荒唐無稽な話ではない。


骨髄移植、本当の正義、恩人とは何かというテーマも
大きくふりかざされるのではないが、突きつけられる気がする。
命の重みに人格や社会的地位など関係ないことも
改めて思わされる。


他人の命を救うためになぜそこまで命がけで一生懸命になるのか
という動機がうそ臭く、やや無理がある設定ではあるが、
ラスト近くになって、その理由が胸にしみてくる。

そして、ラストは安堵の涙を流し、人間ってまだまだ
捨てたものじゃないと思わせてくれる。


希望を捨てなければ、未来は輝くものにもなりうる。
生きていくために自分が変わらなければならないという
ことがきっとあるはずだ。


魅力的で、憎めない悪党だった。
悪いことばかりしているが、どこかある部分だけは魅力的な
主人公というのはひかれる。

この本を読み終えて、映画「パーフェクトワールド」も
そんな映画だったなあと思った。



その他 高野和明氏の作品の感想



★「幽霊人命救助隊」
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10043419805.html


★「6時間後に君は死ぬ」
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10041863207.html


★「K・Nの悲劇」
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10002279424.html




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悪党といえば、以前読んだ本でこんなのがある。


「架空世界の悪党図鑑」
  光クラブ:著
  講談社/2004.12.21/2000円


悪党図鑑

 
望に忠実な生き方……ピカレスクライフに目覚めよ!
「愛すべき悪党は虚構の世界に常に存在し続け、
われわれの心にも常に懐かしく存在し続ける。」
         筒井康隆……巻頭言より抜粋
文学、映画、まんが、アニメ、特撮、ゲーム。
古今東西ありとあらゆる虚構から、集めた悪党396人!!
               <帯より>


悪党をタイプ別に分類したり、各ジャンルごとの悪党を
知力、体力、カリスマ性、ポリシーなどから読み解き、
紹介している。


悪党の名言集やリアル悪党列伝もあって、かなり詳細な
悪党事典となっている。



時には正義のヒーローよりも悪党の方が
人気ものだったりするよね。

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お盆はナーバスになってしまう。
供養するものと供養されるもの、
死んだ人がいないことを認識してしまう……。

そんな時だけど、幽霊ものの話を読んだ。
といっても怪談ではなく、エンターティメント。


「幽霊人命救助隊」

高野和明:著

    文藝春秋/2004.4.10/1600円


幽霊人命救助


自殺した4人の“幽霊”が、“神”に
「49日以内に100人の自殺者を救えば
天国にいかせてやる」と言い、
4人は奮闘して見事100人の自殺者の“命”を救う話。


神に任命された自殺者4人は「RESCUE」と記された
オレンジ色のツナギに身を包み、救助に向かうという
いでたちもおもしろい。


その4人のキャラがおもしろいのと、
死んだ年齢も時代も違うから、
「死語」も入り乱れるし、
一番若い自殺者が21世紀の「現代」を21世紀を知らない人に
説明するくだりもどこかユーモラスである。


「人命」「自殺」「うつ病」という重いテーマを扱って
いるがコメディタッチで、エンターティメントとして
読ませる。

その時々の社会問題、解決方法など、綿密な取材による
文章はリアリティがあり、一緒になって悩み考えさせられる。


連載だっただけに、長いし、途中はエピソードの反復で、
やや単調な部分もあったが、タイムリミット付きの「救助」
という設定、だんだんと救助が困難になってくる展開は、
一気にラストまでひっぱる。


救助隊員は、「幽霊」なので、人の心に入り込み、
モニターすることはできるけれど
物理的に物を動かしたり、人にふれることが
できないので、心に働きかける「言葉」だけがたより。


「魔法のメガホン」で、人の心にささやきかけるこで
自殺を想いとどめるというのがもどかしいが、
万能じゃないところが、より深く様々な問題を考えさせられる。


この救助方法の欠点は言葉をとらえられない人には効かない
ということ。

しかし、それをもクリアしていく。
ややご都合主義、そんなにうまくいかないって思う人も
いるだろうけど、人はほんのささいなことで
死のうとするけど、ほんのささいなことで
生きようともできるのだということを感じ取れる。


途中で、「命」は救えても問題を解決できなかったり、
辛い「魂」は救えない、一時しのぎにすぎないと
救助隊員たちも気づき、躊躇する場面もあるのだけど、
最終的には「死んでいい命なんてない」の一言につきるのだ。

それは、救助隊員たちが、自殺したことを悔いているからこそ
その想いは強いのだ。



障害を持った娘の首をしめ、無理心中をしようとする母親、
病気の痛みに耐えかねて、点滴をはずし自ら命を絶とうとする老婆、
借金苦に残された家族のために保険金のため死のうとする男……。
どれも苦悩に満ち、死にたくないけれど、死のうとする様は
やはり苦しくて涙があふれる。



やはり、一番泣いたのは最後の100人目の自殺者だ。
最後はもう涙があふれた。


エピローグは蛇足だという声もあるけど、
私はこれで救われた気がした。


不確定なはずの未来を、不必要に怖れていると言ってもいい。
 悲観的に見える将来は、同時に好転する可能性をも
 秘めていることに本人は気づいていないらしい

という本文が身にしみる。


辛いけど生きていこうと思う。



★高野和明 最新作「6時間後に君は死ぬ」の感想はこちら
http://tsukiakarinomai.ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10041863207.html



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私に読ませたいと、ある人からもらった本。

なぜ、この本なのか、この本のどこなのか、
なぜ私になのか、
読んでいくうちに、その謎が解けていく。


そして、それがわかった時、
私は思い切り涙していた。


もう、本の中の謎解きより、私自身が
謎解きをする主人公になってた。


------------------------------


「6時間後に君は死ぬ」

  高野 和明:著
講談社/2007.5.11/1600円


六時間後に君

回りつづける運命の時計
未来を賭けた戦いが始まる!


稀代のストーリーテラーが放つ、
緊迫のカウントダウン・ミステリー



運命の岐路に迷う時、1人の予言者が現れる。
「6時間後に君は死ぬ」。
街で出会った見知らぬ青年に予言をされた美緒。
信じられるのは誰なのか。
「運命」を変えることはできるのか。

未来は決まってなんかいない 明日を信じて、進むだけ
               <帯より>


どの話にも未来予知ができるキーマンとなる男が
登場する連作短編集。


表題の一作目は
これをミステリーとして読のは、賛否両論別れるところ。
謎解きの部分があるので、詳しい筋は
書けないが、予想通りの展開にちよっと物足りなさが残る。

でも、このタイトルと帯のコピーには引き付けられる。


二作目は、「時の魔法使い」。
これがとってもよかった。

シナリオライターを目指しているプロットライター
の女性が主人公。


夢を追いつつ、現実の厳しさと戦う女性が少女時代の
自分と、ある短い時間だけ、生活を共にするという
ファンタジー。


9歳の「過去」の自分に恥じないように生きようとする
29歳の「現在」の主人公は、
過去を変えることができるという強烈な誘惑の前で、
戸惑う。


脚本家になりたいという夢はなかなか叶わないし、
みじめな想いもするけれど、心から笑える日が
来ると信じて、頑張ろうとする。


シナリオライターを目指している主人公に
自分を重ねたが、亡父への想いや生家が無くなった寂しさ
の描写の部分も私自身の体験と重なり、
途中で涙して読めなくなったほど。
こんなにもせつない想いが共感されるんだ。

この本を私にくれた人は、私がどんなことに
せつなさを感じるかが、解ってくれているんだと
思い、こみあげてくるものがあった。


第三話「恋をしてはいけない日」。
これもせつなくて らつなくて泣ける話。


一話目のように「恋をしてはいけない日」と予言された
女の子の話。
だけど、その日に限って恋をしてしまうという話。


恋に落ちるということ、本当に人を愛するというのは、
感覚的なものであり、相手の“見えないもの”に
惹かれていくんだなと思う。


第四話「ドールハウスのダンサー」は、
ダンサーを目指すもの同志でルームシェアをしている
女の子の話。


二話目と同じく、夢に向かって頑張っている女の子の
せつなさやくやしさ、後悔や挫折がすごくよく現れている。
女のダークな部分もよく観察して細かいなあと思う。

一見とってつけたような「ドールハウス」だが
映像が浮かぶほどに鮮烈。

後味はいいのだけど、私としては、違う結末にして
欲しかった。


第五話は「3時間後に僕は死ぬ」
予知能力者が自分の未来を見てしまう話。
一話目に出逢った二人が再会する。
ちっょとツッコミどころはあるけど、
うまくまとめてある。



ラストは「未来の日記帳」。
すごく短いけど、著者の言いたいことが全て
集約されている。

 

高野和明は、ストーリーテラーとして秀逸である上に
女性心理描写が巧みである。



「13階段」は男の描写だったが、
「KNの悲劇」や今回のこの本のような「女心」の
揺れなどが、きちんと描かれている。




随分前に読んだけど、女性描写が絶妙な作品。



★「K・Nの悲劇」
http://ameblo.jp/tsukiakarinomai/entry-10002279424.html

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装丁がアルミ箔みたいな銀色で、まぶしく派手な本。
作者の経歴も変わっているが、この本は
作者の実体験を元にしているらしい。


「デブになってしまった男の話」
  鈴木 剛介:著
  求龍堂/2006.9.25/1200円

デブになてしまった男
人生を狂わせてくれる恋をひとつください。
コンプレックスと戦いながら生きていく
全ての男女に贈る、切なくも元気をくれる
恋愛小説!!   <帯より>



まあモテる大介。
美人で彼にベタ惚れの彼女がいて、
彼女公認のガールフレンドもたくさんいる。
女の子を落とすなんて、簡単だと豪語。



しかし、そんな彼が恋したのは、美人でモテるのに、
アインシュタインが理想で、恋愛なんてどうでもいい
タイプの直美。


直美を本気で愛しはじめた大介は、彼女とも別れ、
他の女の子たちとも遊ばなくなり、直美を追う。
しかし、あっけなくふられる。


ふられた大介は、「千人斬り」を目指すナンパな友達と
ナンパにあけくれるようになり、
「男はハンターだ」と女を落として、ヤルことだけに
燃え、セックスにもちこむことをゲームととらえる。



女を食い散らかし、女性の心をもてあそんできた大介に
「天罰」が下る。



前半は、そんなにおもしろい文体でもなく、
むしろ、「モテ講座」を語るマニュアル本みたいで
鼻についていたが、この「天罰」は爆笑してしまった。


そして、大介は重症を追って入院。

この入院中に、ストレスから食べまくった大介は
退院の時には立派な101キロの「デブ」になっていた。


このデブになってからの描写がおもしろい。

もう一緒にナンバはできないと友達に言われ、
どんどん卑屈になっていく大介。



愛という感情は、相手の人間のファクターの総合
によって形成される」という真実は本当で、
そのファクターにおいて容姿は最大のファクターだと
思っている大介にとって、一気に自分が“弱者
”に
なったことを悟る。



しかし、大介はまた恋をし、ボクシングジムに通ったり、
断食道場に通ったりして、「明るいデブ」を目指す。

そして、本当の愛にめぐり逢う。


昔話のように、悪いことをしたらこうなりますよと
訓示され、そこから何かを学んで、人は変わっていくと
またイイコトがありますよという典型的な構成。



前半は、あまりの大介のサイテーぶりに、
読むのをやめようかと思ったが、
その分後半のギッャプがおもしろいし、
テンポもよく、読後感がさわやかだった。

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