「全身麻酔」 | 月灯りの舞

月灯りの舞

自虐なユカリーヌのきまぐれ読書日記

地元 高松で、「受精卵取り違え」事件が
起きる。


生命の誕生を宿した喜びと同時に
自らその命を断たねばならないという地獄の苦しみ
を受けた“被害者”女性の心労を想うと
やりきれない事件だ。


仕事上では、ほんの些細なミスなのに、
それは大きな意味を持ち、
人の生死を分け、傷つける人を生む。


人が人の命を操作することの怖さ。


ローカルニュースでもこのニュースでもちきり。


テレビのアンケートで
「医療ミスを感じたことがある」
答えた人は49%もいた。


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医療ミスと言えば、ちょっと前にこんな本を
いただいた。
売れてるらしいということなので
参考に読ませてもらった。


大阪大学医学部卒の現役医師による医療サスペンス。


「全身麻酔」
  霧村悠康:著
  ぶんか社文庫/2008.10.20/724円


月灯りの舞-masui

国立O大学医学部付属病院。閉ざされた空間・手術室で
一人の患者が執刀されていた。


「この患者は誰なんだっ?」執刀医以下、
その取り違えを知っているのは病院関係者たちのみ。

全身麻酔の術中に覚醒してしまっていた患者を除いては…。
医療現場の闇と権力抗争、そして生と死の狭間にゆれる患者を、
現役医師が描き出した衝撃の本格医療サスペンス。
                   <裏表紙より>


おもろしい。

いや、話はとってもシリアスなんだけど、
文体というか、描写がおかしい。


手術の途中で覚醒した患者の視点で語られるとこが
笑える。


いや、現実にこんな状況だったら、イヤだし、
まさに死ぬ思いなんだけど、
どうやら患者を取り違えてるらしいということや、
権威ある教授のはずが、見事なヤブ医者ぶりを
発揮してくれる。


ほんと、大笑いするぐらとはちゃめちゃで、
なんとなく、筒井康隆ワールドを感じる。


意識はあるのに身体は動かない男の恐怖。
医師たちの言葉を耳だけで感じてて、身体がどうなっている
のかわからないけど、大変なことになってるのは
感じてる男。


でも、そのために医療ミスや患者取り違えの事実を
知ってしまう男。


この男なんとか無事に手術を終え、この経験を
「小説」に書いちゃう。

そして、ある目的のために担当教授に見せる。
教授の運命やいかに……。


これだけでは終わらず、この男の運命も
どんどん転がっていく。


彼は愛人も元妻も医療関係者。

いやあ、医療関係者を敵に回すと怖いねー。
特に女の嫉妬心にかられた復讐ほど
怖いものはない。
用意周到、完全犯罪。


女性を泣かせた男性は気をつけようね。


そんなこんなでこの小説は医療ミステリーの部分は
ミスリードもあり、どんでん返しあり、
えっ!? そんな……と絶句するところありの
盛りだくさんな内容で楽しめる。


そして、医療サスペンスの部分も
現役医師だけに描写が細かく、リアリティがあり、
怖くもあるが、いろいろ医療の闇の部分を知ることも
できる。



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実は私もある手術をした後、麻酔が早く切れたことがある。
術後であったのが幸いだが、

早く切れるということは、痛みをもろに感じてしまう
ということ。


まあ、M女なので、痛みにはけっこう強い方だけど、
痛かったなあ……。