感謝しておりますドキドキ

先日の立川の講演会に参加された方の感想を一つ、紹介します。

「今までの『会いたい人に会うワーク』ではいろんな人が出てきたので、『今日は誰に会えるのかな』と楽しみにしていたら、“自分”が出てきました。
今までずっと『こうなりたい』と思っていた“理想の自分”が出てきて、その自分が過去に経験した辛いことや苦しい時期の記憶に現れて、抱きしめて“いい子、いい子”しながら『大丈夫だよ』と言ってくれました。
ずっと“本当の自分”が付いてて見守ってくれてるんだと思えて、心の底から癒されました」

明日は福島県・郡山であります!!

講演会の最新の情報はこちらから


それでは、『しあわせ探偵の事件簿』第二話をどうぞ。
第一話はこちらから


『しあわせ探偵の事件簿』
第二話:「かがみ」

「こんにちは!ウッチー店長、いますか?」

すっかり常連客の仲間入りを果たした清水沙由里が、一人の男性を伴って十夢想家を訪れたのはお昼のランチタイムが落ち着いた頃だった。

「おお、沙由里ちゃん、お久しぶり!今日は彼氏とデートの帰り?」

沙由里ともすっかり仲良くなった内ヶ崎が、奥から出てきて二人に声をかけた。

「違いますよ!こちら、村山隆二さん。私の会社の取引先の方で、すっごくお世話になっているんです。村山さんはこう見えて、高校生のお子さんもいらっしゃるんですよ」

「そうなんですね。失礼しました。じゃあ、今日は仕事の打ち合わせで?」

「それも違うんです。実は、しあわせ探偵の依頼で来たんです」

「おお!そうなんですね。わかりました。では、奥の部屋でお話をお聞きしましょう」

奥の部屋に入って椅子に座る前に、村山は名刺入れをスーツの内ポケットから取り出して、さっと1枚抜き出して両手で持ち、「はじめまして、村山と申します」と内ヶ崎に軽く一礼をし、円を描くように名刺を差し出した。

名刺には「株式会社○○出版 第二編集部 編集長」とある。それを見た内ヶ崎はこう言った。

「すごい!僕、○○出版さんの本、たくさん読んでます!特に△さんの書いた本とか、『〜の法則』なんか、いまだに何回も読み返してますよ!」

「そうでしたか!それは、それは、ありがとうございます!」

三人が席について注文を済ませてからも、しばらくは本や出版にまつわる話で盛り上がった。

会話からは内ヶ崎がかなりの本好きだということがわかる。他社の本も含めて村山が話題に出した本はすべて知っていて、そのうちの半分以上は読んだことがあるということだった。

沙由里も仕事柄、出版社との付き合いも多いので話はほとんど理解できて、ときには自分からも情報を提供したりしたけど、話題の中心がビジネス書や自己啓発書になると、二人の話にあまりついていけなくなった。沙由里は小説やエッセイが好きらしい。

そして話題の豊富さや、一つ一つの話に込める熱量から、村山がかなりやり手の編集者で、情熱と信念を持って仕事に打ち込んでいることも容易に想像できた。

「携帯電話やスマートフォンの影響もあり、読書離れがますます加速していると世間から言われ、出版業界もかなり厳しいのは事実ですが、それでも私は本が大好きです。いい本を出せば必ず読者はそれに応えてくれます。私たちは紙の束を売っているのではありません。一人の人間のすばらしい経験や知恵、情熱や夢を売っているのです」

村山の熱弁が一通り終わった頃合いを見て、沙由里は話題を変えた。

「ところで今日、私たちがここに来た経緯なんですが、私は仕事の関係で村山さんの会社にはしょっちゅう顔を出すんですけど、ここ最近の村山さんがなんか、いつもの明るさがないというか、元気がないのが気になって、声をかけたんです。
それがちょうどお昼前だったので『じゃあ、ランチでもどう?』ということになって、お昼ご飯を食べながら話を伺ったんです。仕事関係で私も知っている人も一部からむ話だということで詳しくは聞かなかったんですけど、大筋の話だけを聞いて、『これは絶対に事件だ!』って思ったんで、私がここで経験した話をしたんです。
そしたら村山さんが『ぜひ、連れて行ってほしい』っておっしゃられたので、今日は一緒に来させていただきました」

話を引き継ぐように、村山が話し始めた。

「そうなんです。このことに関しては社内で誰かに相談することができず、友人や妻にも相談することができなくて、独りでずっと思い悩み、苦しんでいました。
『もう限界だ!誰か助けてくれ・・・』と思っているときにちょうど清水さんに声をかけられ、こちらの話を聞いたので、『これは絶対にご縁だ』と思って、今日はお伺いした次第です」

「話しにくければ、私は席を外しましょうか?」

気を使って尋ねた沙由里に村山は「清水さんさえよければ横で話を聞いてもらって、感じたことや意見があったら教えてほしい」と言って、遠くを見るように少し上目遣いになりながら、自分に起こったことを話し始めた。

つづく・・・