2017年から、Hakko Classの名で発酵食講師をしてきた私。教室で使う麹の量が増えたことと、人から求められるようにもなり麹屋にまで発展しました。
そもそも教室を主宰するに至ったのは、当時私の関心が「自然に沿った暮らし」にあり、農業、自然栽培、オーガニック、食を自らの手で作ること、を学ぶようになったことです。すべからく健康知識も身に付けるに至り、人に教えるようになっていきました。
特に麹屋として”商品”をつくる際はオーガニック原料を使いましたが、それには独自性を重視する意図も強くありました。ところが多くのお客様からは、オーガニック＝健康志向なイメージを持たれていたようで、私自身それは否定はしませんが、商品開発から4年が経った今強く思うことは、オーガニック＝健康というイメージを持っている方には、オーガニックでない＝健康でないというイメージも同時に存在する場合があるということです。
本来私は、「どこでも既製品が買える便利なこの時代に、あえてそれらを自分で１から手作りする。ただそれが楽しい。」、そんな好奇心だけで行動してきました。つまり、「健康だから」「発酵は体にいいから」、そんな理由でやっているわけではありません。
お客様や、私が発酵食の専門と聞いた方の多くは、「発酵食っていいですよね！」という言葉から健康への恩恵をありがたがります。おまけに私も”健康志向の人”とみなされます。それは当然のことでしょう。やらされているわけでもない、好きで職にしている人なのだから、やっている内容は好きなことに違いありません。もちろん否定はしませんが、私はもっともっと広く深く、考えているのです。
― なぜ ―
そもそもなぜ、自分が、発酵食に興味を持つのか。
そもそもなぜ、健康に関心を持つのか。
そういうことを考えるのです。
興味関心のきっかけから、自身の深部へ掘り下げていくのです。
手作り発酵食の場合、興味関心の矛先のひとつには、勉強や経験をすれば誰でも身に付けられる知識教養があります。それらは木で例えると幹ではなく枝葉です。でもだからといって重要でないわけではありません。これらはあくまで、自身の深部、つまり、「なぜ、自分はそれに興味を持つのか」がわかった上で、（必要であれば）ツールとして使えばいいのです。
深部へ掘り下げる、と表現しましたが、これは純粋に興味関心を楽しむ方向とは異なるベクトルであり、メリットは２つあります。
１つは、純粋にその興味関心をやって楽しむ前に行っておくことで、自分がどうしてそれを求めているかの深い動機がわかり、楽しみ方ややり方がもっと明確になることです。
例えば私のように、なぜ発酵食に興味を持つのかの理由が、「手作りする時間が楽しいから」や「自分でもつくれる！という実感に喜びを感じるから」などというものであれば、いつの日かいつのまにか、寝る間も惜しんでお客様のために麹を作り続け自分の心身の健康を害する結果になったときに、本来の自分の動機と違ったことをやっていることに気付けて、ストップすることができます。
私はいつのまにか本来の目的を見失っていたため心身の健康を害しましたが、それはそれでそうなったときに深部を掘り下げ、やり方が違うことに気づけばいいのです。
２つめのメリットは、こだわりすぎることがなくなり生きやすくなることです。例えば巷で、「発酵食がいいらしい！」と聞いてなんとなく気になり、毎日一食は必ず何かしらの発酵食を摂ると決めたとします。最初はそれが楽しく心も体もウキウキで美味しく楽しむことができたとしましょう。ところがあるとき会食や自分で食事を選べない状況が続き、自分ルールが守れないストレスを感じるようになる。そうすると今度は気にしすぎて、不安や恐れ、一緒に食事をする人との不調和、なんだか自分の「気分がよくない」日が続くようになる。これって何でしょうか。この人はどうなりたかった人で、何を求めていたのでしょう。
この場合、最初に「発酵食がいいらしい！」と聞いた時点で、「自分にとって」「何が」「どういいのか」、そしてこの情報が「何を求めている自分に刺さったのか」を理解しておくとよいのです。それが、自分の深部を掘り下げるということです。
そうすると、楽しんでやっていた自分ルールに自ら苦しめられることなく、本来の動機・目的を満喫することができるのです。
発酵食、健康食に限らず、すべてのことがそうです。
なぜ、自分はそれをやっているのか。
なぜ、その人とこうしたいと思っているのか。
なぜ、その言葉に傷ついたのか。
なぜ、その言動にイラっとしたのか。
なぜ、なぜ、なぜ、と、今自分が感じていること、行動していることすべてに、この問いを当てはめて考えていくことができるのであり、自分を知って、自ら、生きるのを楽にすることができると思います。
これはひとつの方法です。というか、入門です。一回やってみるといいもの、という感じで参考にして頂けたらと思います。