夕方になり、父が、

「今日はまだ夕刊を取りに行っていないな。取りに行ってこよう」

と言いました。

 

新聞の定期購読はもうやめたので、夕刊は入りません。(朝刊は、毎朝わたしが買ってきています)

最初は過去の夕刊を郵便受けに仕込んだりしていたのですが、面倒になってやめました。

 

父が言いました。

「最近、夕刊を盗むやつがいるからなあ」

 

父は夕刊を取りに行って何も入っていなかったという認識はあるんだ、と気づきました。これはまずい。

 

わたしは言いました。

「お父さん、もう夕刊は入らないんだよ」

「何で?夕刊も含めた代金を毎月払っているんだよ」

父は不満そうに言いますが、払ってないし。

もうやめてるし。

 

しかし、やめてると言えばまた取れと言われます。ここは大きな嘘をかますしかありません。

 

「最近は新聞を取る人が減って、特に夕刊は需要がなくなっちゃったんだって。今は、テレビやインターネットで最新のニュースがすぐ見れるでしょう?だから、夕刊は廃止になっちゃったの。時代の流れなんだよ」

 

「そうかあ。なるほどなあ」

よし、信じた?

 

「じゃ、夕刊取ってくる」

さっきのなるほどは何だったの?

 

「本当に夕刊が入ってないか、確かめに行くんだね?」

とわたしが言うと、

「そうそう」

と父は返しますが、本当は何も聞いていなかったんじゃないかと思います。

 

とは言え、根気よく言い聞かせれば記憶してくれるので、夕刊は廃止になったという嘘をつき続けることにします。