ぐっすり眠っていると、父に起こされました。

「お母さんは?」

 

時計を見ると5時45分です。

母について何か言うことが激減した父が、母のことを思い出したのは非常に嬉しいことなのですが、朝早い。眠い。

 

「お母さんは入院してる」

わたしが言うと、父は

「初めて聞いたなあ!」

と驚きました。

 

続けて問います。

「いつから?」

 

娘「1月から」

父「ええっ、6月?6月からずっと入院してるの?初めて聞いたなあ」

 

6月ではないけどまあいいか。

 

父「何て病院?◯◯病院?」

娘「知ってるじゃん。そうだよ」

父「何で近くの病院じゃなかったの?近くに××病院とかあるのに」

 

近くの病院に入院できなかったわけをいろいろ説明しました。

 

父は、

「初めて聞いたなあ」

と繰り返し言い、最後にはこう言いました。

「じゃあ、今日お見舞いにいこう」

 

気軽に行けるほど病院は近くないし、コロナ禍でガラス越しの面会しかできないし、それも限られた時間だし予約制だし、今日行こうと言ってお見舞いに行くことはできないのだけれど、それでもわたしはこう答えます。

 

「そうだね。お見舞いに行こうね」

 

落ち着いて寝床に戻って再び寝た父。

起きた後は、当然お見舞いに行くと言ったことなど忘れているのです。

 

実際にはお見舞いに行けないから忘れているのは助かるけど、父がお見舞いに行きたいという気持ちを忘れてしまうのは少し寂しい気もします。

 

父は寝床に戻る前に言いました。

「あんなに元気だったのに、入院するなんてなあ」

 

入院中の母と一度、直に面会してるし、Zoom面会も何回もしてるのに、父の中では母が元気な姿は最近のものなんですね。