【長文】心傷時はオススメしない本『神童』を読んで… | Seattle ⇆ London のカラフルな日々 ー アメリカ移住8年目 ー

Seattle ⇆ London のカラフルな日々 ー アメリカ移住8年目 ー

ロンドン大学大学院卒業。元女子アナ兼映画ライター。結婚16年目アラフィフ主婦♡ドイツ駐在経て、2017年米国永住権取得しシアトル移住。英国メニューインスクール留学中12歳violinistの娘と9歳サッカー少年の育児日記。ママ月1回渡英。HermèsとVCA好き!時々お買い物記録。

先日の息子のバイオリン🎻レッスン風景。サッカのチーム練習と試合を入れると、週4.5⚽️でサッカーに打ち込み、自主練は週7日頑張っている彼には、バイオリンはかなり優先順位が下ですが、それでも、亀🐢さんのように、ほんの少しずつ前進してます。



この日、息子の🎻先生から、この本をお借りしました。1996年に出版された【神童】です。


実は少し前から、なぜかこの本の表紙をインターネットで事あるごとに目にしていて、気に留めてはいたものの、表装の古さなのか、この写真を見ると非常にモヤモヤして嫌な予感がしたので、購入するどころか、あえて調べたりもしていなかったのです。



ところが、この日お教室に行くと、いつも座っているソファーのテーブルに、この本が置いてあるではありませんか…😳💦コレは間違いなく、スピリチュアル的に、今私に読みなさい…と示されているモノだと確信しました。ただ、それでも気が進まなかったので、見て見ぬフリをしていました。


レッスンが終わり、不意に先生が、『こちらの本を読まれた事がありますか?もしなければ、是非読まれてください。』と仰られたのです。私は第六感がとても鋭いので、この本から逃げられないことは既に分かっていました。。。


先にお伝えしておくと、かなり心が重たくなり、暗くなり、辛くなるため、HSPの方はもちろん、精神状態が元気でない方は、オススメしません。


ただ私は、読後落ち込みはしたものの、やはり読むべき本だったと思っています。渡辺茂夫さんという方の数奇な半生を通して、子育てについて、人間の生涯について、幸せについて、改めて色々なことを考える時間になりました。


こちらは、20年前にMBSテレビが渡辺茂夫さんの悲運な半生について、特集を組んで放送したドキュメンタリーです。


主人に、この動画と以下のリンクをシェアして、この日は夜中3時過ぎまで、渡辺茂夫さんの人生を通して、お互いに感じたこと、考えたことを話し合いました。(私があからさまに元気がなかったので、主人はどうしたのか?と尋ねてきて、この一件をシェアする事になったのです。)


神童  渡辺茂夫の半生 -誰も天才をどう育てるかわからなかった-


バイオリンの神様と言われるハイフェッツの勧めで、14歳でジュリアードへ留学した事が渡辺茂夫さんの悲運の始まりでした。16歳で睡眠薬自殺をはかり、一命をとりとめたものの脳障害が残り、その後40年以上に渡って養父が在宅療養を続けていました。MBSの映像には、あまりにも変わり果てた50代の渡辺茂夫さんの姿が映っていて、もはや衝撃しかありませんでした。


詳しい話は、動画をご覧になるか、上記のサイトに端的に彼の半生がまとめてありますので、そちらをご覧ください。


私と主人の見解は、天才が故に、彼の音楽的才能だけに大人達がフォーカスして、幼少期から8時間〜10時間といった音楽の英才教育だけを受け続け、普通の子供に与えられるべき情緒的教育環境がなかったこと(もしくは足りなかったこと)、その結果として形成された人格が元で、彼の対人関係におけるコミュニケーション能力が著しく欠如し、それが招いた悲劇だと感じざるを得ませんでした。音楽だけをひたすらやっているだけでは、子供の健全な情緒や精神、思考は育たないと思います。


彼の幼少期からの日記もまた、私には大人や周りへの敬意が欠けていることを感じずにはいられませんでした。天才が故に、自分を取り囲むプロの音楽家達が平凡でつまらない存在に思えたのでしょう。率直な子供の気持ちを綴っているだけですが、『オーケストラがついてこなかったので、合わせるのに疲れた』とか、『ユディー・メニューインのコンサートは、音に深みが感じられなかった』など…彼の書く文章には、小学生とは思えないほど早熟し、達観したような目線での意見が綴られています。


一方で、本を読み進めていくと、音楽以外のあらゆることにおいては、やはりまだ14歳、もしくはもっと幼い側面も持ち合わせており、精神面においては未熟さを伴っているため、二つの矛盾した人格に周りも戸惑って、周囲との対人関係に軋轢が生じたのだろうと感じました。(あくまでも、書籍を読んだ個人的な感想です。)


私は、ふと世界的バイオリニスト堀米ゆず子さんから言われた『普通に育ててね』という言葉を思い出しました。

ゆず子さんの記事はこちら💁🏻‍♀️


昨年娘のGrumiaux Competitionのファイナルを観に来てくださったのですが、ご挨拶した際に、ゆず子さんがそう仰ったのを鮮明に覚えています。


ただ、その時私はゆず子さんの真意を分かっておらず、👩🏻『普通ですか?』と聞き返しました。すると彼女は、『普通に学校に通って、普通の生活をし、普通の感覚を身につけることはとても大切なことです。音楽家はそうじゃない人が多過ぎるから。』と仰った言葉が、今になってより重みを感じます。。。


普通であること、普通に学校へ通い、友達と触れ合い、その中で人間関係を学び、音楽以外の世界を知ることがいかに、子供の人格形成をする上で重要なことか…、幼少期から大人になるまでの間に、その時期にしか体得出来ない経験はたくさんあるはずで、一見取るに足らないような日常生活のありふれたことでさえも、そこでおざなりにされたものは、あとで必ずツケとし回ってくるのかもしれません。


たとえ天才にしか見えない景色、分からない苦悩があったとしても、彼を孤独にしたのは、彼自身に他ならないと、感じずにはいられませんでした。。。何故あんなにも周りの人達を拒絶したのか、彼が直面した世界がどんなものだったのか、凡人の私には想像すら出来ないのですが、見えないことは、実は幸せなのかもしれないとすら感じます。(それは凡人が故にですが。。。苦笑)


実は、娘にも渡辺茂夫さんのお話や演奏動画、ドキュメンタリーを見せたんです。彼女なら、もう理解出来ると思ったので、渡辺さんの半生を目の当たりにして、彼女が何を思うのか知りたかったのと、渡辺さんを通して人生を考えて欲しかったからです。


とても興味深く私の話に耳を傾け、驚きに満ちた顔で、7歳の渡辺さんが奏でるツィゴイネルワイゼンを聞き、そして、食い入るように渡辺さんのドキュメンタリーを観た後、彼女がポツリと悲しい声で言いました。


もったいないね…


本当に、そう!その一言に尽きるのです悲しいもったいない!!!非凡な才能と、与えられた誰もが羨むようなチャンスや環境、そして、人生の時間。。。なんとも言えない、ただただ、無念でなりません。


ちょうど今の娘と同じ、渡辺さんが11歳のときに書いた詩の中に、こんな一文があるそうです。

人生は疾風のように現れ、そして消えていく

ドキュメンタリーの中では、彼のその後の人生を予見している…というナレーションが入っていました。。。



まとまりがつきませんが、【神童】の読後感は、この辺で。もし、この本を読んだ方、ドキュメンタリーを観たことがある方、どんな風に感じられたか、ご意見をシェアして頂けたら、とても嬉しいです🙏


長々と読んで頂きありがとうございました。