尾羽の長いツバメのオスほどメスにもてる | ツバメブログ
2010年04月12日(月) 18時37分41秒

尾羽の長いツバメのオスほどメスにもてる

テーマ:ツバメ雑学

ひさしぶりに研究の紹介をします。

これはおそらくツバメについてなされた一番有名な研究で、要約すると次のようなものです。


1.オスのツバメの尾羽を少し切り取って短くする。


2.切り取った尾羽を別のオスの尾羽に継ぎ足して長くする。


3.すると長い尾羽のオスは短い期間でメスとつがいになり、短い尾羽のオスはつがいになるのに長い日数がかかった。


4.その結果、尾羽の長いオスはたくさんのヒナを巣立たせることができた。


尾羽を少し切り取って、それを別のツバメの尾羽につなぐとモテてしまうというのは、なんとなくユーモラスな感じがしますね。


どのようなオスがメスにモテるかというのはツバメ好きにとって興味を引かれるテーマですが、この研究は生物学者たちのあいだでも「オスがメスより派手な外見をしている生物が多いんだけど、なぜそのように進化したのか?」を説明した例としてよく引用されます。


それでは、その内容を詳しくご紹介しましょう。


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スウェーデンのMollerさんはツバメが繁殖地に到着するのを見張っていて、到着した日の夜に捕獲し、オスツバメの尾羽の長さを変える処置をしました。処置したオスには以下の表のような4グループがあります。


「約」が付いているのは論文のグラフから読み取ったおよその値です。
(グラフは著作権があってコピーできないので)


尾羽の長さの平均 実験したツバメ数 飛来からつがい形成までの平均日数 2回繁殖した割合 巣立ったヒナの平均数
尾羽が短いグループ 85mm(19.8%減少) 9羽 約12.5 10% 3羽
対照グループⅠ 106mm(1%減少) 11羽 約6日 65% 5羽
対照グループⅡ 106mm 11羽 約7日 50% 5羽
尾羽が長いグループ 127mm(16.5%増加) 11羽 約2.5日 80% 8羽


ここで気になるのが尾羽の処理方法ですが、まず尾羽の付け根から2cmのところで切断します。そして次のような4種類の操作をしました。

尾羽が短いグループ:

 切り取った尾羽の体に近い方をさらに2cm切り取り、残った先端部分を接着剤でもとの尾羽につないだ。

対照グループⅠ:

 切り取った尾羽に何も処理をしないで、そのまま切り取った位置につないだ。この処理は尾羽を切り取って接着すること自体がツバメに影響を与えないかを確かめるために行っています。

対照グループⅡ:

 ツバメを捕まえて尾羽の長さなどは記録するが、尾羽は処理せずにそのまま放鳥した。

尾羽が長いグループ:

 切り取った尾羽に、短いグループで切り取った尾羽の切れ端をつなぎ、さらにそれを元の尾羽につないだ。


ツバメブログ-尾羽の切り方


この4グループのオスについて、繁殖地に到着した日からつがい形成までの日数、2回繁殖するかどうか、巣立ったヒナの数、そして交尾行動を調べました。なお早く繁殖地に到着したオスの方が2回繁殖しやすいので、到着日が偏らないように4つのグループにはランダムにオスを割り振っています。

最初の3つの結果は上の表にまとめまてあります。尾の長いオスのグループは早くにつがい形成するため1回目の子育てが早く終わり、その結果2回繁殖するつがいの割合が高く、最終的には巣立ちヒナ数も多くなります。


交尾行動とは1時間の観察の間にオスがメスにディスプレイ(尾羽を広げてメスに見せること)した回数と交尾をした回数です。つがいのオス・メスのあいだでは4グループともディスプレイ回数・交尾回数に差はありませんでしたが、つがい外交尾(いわゆる浮気)の場合、どのグループのオスもディスプレイ回数に差はないものの、実際に交尾に成功したのは尾の長いグループだけでした。

この研究で分かったことは、メスが尾の長いオスを好むことで、尾の長いオスほど自分の性質を引き継ぐ(つまり尾が長い)ヒナを多く残すことができるため、ツバメには尾の長いオスが多くなるということです。さらに、尾の長いオスはつがい外交尾も成功させる率が高いので、自分の奥さん以外のメスのヒナにも尾が長くなる遺伝子を引き継がせることができます。

このようなことが長い年月積み重なって、ツバメのオスは遺伝的にメスよりも長い尾羽を持つようになったと考えることができます。
多くの野鳥ではオスがメスより派手な色彩をしていたり、立派な尾羽やトサカを持っていたりしますが、そのような遺伝的な違いがどのようなプロセスで進化したのかということが、この研究で明らかになったのです。

「結婚相手を選ぶときの好み」によってある遺伝的性質が強められることを性選択による進化、と言います。長い尾羽や美しい色彩といった生存にプラスになりそうにない性質の進化は自然選択では説明がつかないのですが、そういうものが性選択で進化した可能性があることを、この研究は明らかにしています。

Moller, A. P. 1988: Female choice selects for male sexual tail ornamentsin the monogamous swallow. Nature 332, 640-642.

この研究に続いて、Mollerさんは、そもそもメスのツバメはなぜ尾の長いオスが好きなのかということを調べているのですが、そのの紹介はまた別の機会に。

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