生まれた場所へ戻る一歳ツバメと、よそへ行く一歳ツバメ | ツバメブログ
2009年06月20日(土) 21時52分17秒

生まれた場所へ戻る一歳ツバメと、よそへ行く一歳ツバメ

テーマ:ツバメ雑学
大阪で行われたツバメの足輪調査では、子育てをした成鳥が高い率で同じ場所に戻ってくるのに比べ、そこで生まれたツバメはわずかしか戻ってこないことが分かっています。ツバメネットのページをご覧下さい。

  毎年同じツバメがやってくるのかな?

それでは、1歳ツバメはどこへ行くのでしょうか? 1歳ツバメがどこへ行くのかは調べるためには、ものすごく広い範囲で足輪調査をしないと分からないので大変難しいのですが、繁殖地に戻ってくる1歳ツバメのうち、どれくらいがその場所で生まれたツバメで、よそからどのくらいの1歳ツバメがやってくるのかを調べれば、生まれた場所に残るツバメとよそへ行くツバメの割合が分かるはずです。

そのような調査が、スペインの4カ所とデンマーク4カ所のツバメのコロニー(家畜小屋などで、たくさんの巣がある場所)で、1984年~2007年までの長期にわたって行われました。この調査ではコロニーで繁殖しているツバメ(成鳥とヒナの両方)の97%以上に毎年足輪を付けて記録を取り続けたのです。

それぞれの国の4カ所ずつのコロニーは、同じ国内では1~20キロほど離れた場所にあるのですが、足輪を付けられた1万羽以上の成鳥ツバメのうち、別のコロニーで見つかったのはわずか4羽だけでした。つまり、1歳以上のツバメは生きている限りは前年と同じコロニーに帰ってくるものということが言えます。(ずっと遠くのコロニーへ移動した可能性もないではありませんが、もし移動するんだったら、1万羽に足輪が付いているのですから、近くのコロニーである程度の数が再捕獲されるでしょう。それから、同じコロニーに戻るだけで、同じ巣に戻ったり、同じ相手とペアになるかは、また別の話です

そして、足輪の付いたヒナで調査地のいずれかのコロニーに戻ってきたツバメは、必ず1歳で再捕獲されています。つまり、生まれた場所に戻る場合は必ず翌年で、2年や3年経ってから戻ってくることはないということです。

この2つの理由から、調査地で見つかった足輪の付いていないツバメは、よその場所生まれの1歳ツバメだということになります。

さて、産まれた場所に帰ってきた1歳ツバメの割合は、スペインとデンマークとでずいぶん違っていました。

調査期間中に捕獲された1歳ツバメは、スペインで1418羽、デンマークは2909羽でした。
表にあるように、オスの方が生まれた場所に戻る性質が強いことが分かりますが、1歳ツバメが戻ってくる割合は両調査地でずいぶんと違っています。

スペイン

  デンマーク


オス メス

オス メス
同所生まれ
226羽 49羽
同所生まれ 75羽 20羽
よそ生まれ
480羽 663羽
よそ生まれ
1284羽 1530羽







年平均で19%がその場所生まれ
年平均で3%がその場所生まれ

オスの子供の方が生まれた場所に残る傾向が強いことは鳥類では一般的だそうです。一方、ほ乳類は反対に、メスの方が生まれた場所にとどまり、オスは他の場所へ行く傾向が強いそうです。

さて、この研究では同じ場所に帰ってきた1歳ツバメと、よそから来た1歳ツバメとでは、何が違うのかが調べられました。

まず違っていた点ですが、スペインではその場所生まれのオスのツバメの方が長生きでした。オスの平均寿命は、その場所生まれが1.92年、よそ生まれは1.51年でした。一方、メスの平均寿命は1.39年と1.54年でしたが、調査した個体数も考慮して統計的に見ると、その場所生まれとよそ生まれのメスではほぼ同じと言えます。

デンマークでは、その場所生まれのオスの平均寿命は1.50年、よそ生まれは1.44年で、こちらも統計的に見るとほぼ同じでした。デンマークではメスの捕獲数が少ないので、メスの平均寿命は出していません。

このことから、スペインのオスツバメが生まれた場所に戻ってくる率が高いことには、その場所生まれの方が長生きしていることと何か関係があるのかもしれません。それから、ほとんどのツバメは1歳になれずに死ぬはずですが、1歳まで生きたツバメの平均寿命もあまり長くはなく、一歳半から二歳くらいだということも分かります。

ところで、スペインではその場所生まれのオスツバメが長生きはするものの、オスのツバメがが一生に残せる子供の数(巣立ちビナの数)は、その場所生まれも、よそ生まれも大差なくて、8.71羽と7.59羽でした。デンマークのツバメの場合も、6.15羽と5.33羽で、やはり統計的には差が見られませんでした。

またスペイン・デンマークとも、その場所生まれのオスとよそ生まれのオスでは、繁殖地への飛来日、ペアになったメスの初卵日、卵数について差がありませんでした。

以上のように、スペインの調査地ではその場所生まれのオスの方が長生きしているという以外には、その場所生まれとよそ生まれとには差が見られませんでした。

じつはこの研究の目的は、1歳ツバメが生まれた場所とは違う場所に行くのはナゼなのかを調べようというものでした。もしその場所生まれのオスの方が多くの子孫を残せるのならば、オスのツバメが分散しない性質があることの理由になるはずでしたが、そうは言えなかったようです。ただ、ツバメに限らず生き物の生態はいろんなことの影響を受けて変わるので、この2つの調査地で調べた結果だけでは、はっきりと断定することはできません。

ただ、スペインでもデンマークでも、生まれた場所に戻るオスがメスよりもずっと多いことから推測できるように、『産まれた場所から離れるかどうか』には、偶然などではなく、ちゃんとした理由があって別の場所に行ったり、産まれた場所に残ったりしているはずです。

Javier Balbontín, Anders P. Møller, Ignacio G. Hermosell, Alfonso Marzal, Maribel Reviriego, Florentino de Lope. 2009. Geographic patterns of natal dispersal in barn swallows Hirundo rustica from Denmark and Spain. Behav Ecol Sociobiol (2009) 63:1197–1205
http://www.springerlink.com/content/m4528uk2551m26q0/

今日はややこしい話でした。最後まで読んで下さり、ありがとうございます。

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