ときどき思い出すことがあります。

妻が亡くなる日のことです。

妻は入院しているので、僕は息子に朝食を食べさせてから保育園に送り出勤しようとJRの駅まで来ました。

その日に限って電車に何かトラブルがあったみたいで、電光掲示板は真っ赤で、全線に遅れが生じていました。

僕は「今日は遅刻だな」とすぐさまそう思いました。

そう思ったのに、近くの喫茶店に入って、心の中によぎる不安を払しょくしようとコーヒーを頼みました。

コーヒーを飲みながら、やはり言いしれない不安が襲ってきて妻のいる病院に向かうことにしました。

上司に電話しました。

「電車が遅れているので今日は休みます。病院に行きたいんです。」

なんか変なことを言ったように思います。

 

病院に着くと妻はひどく嘔吐し何も出ないのに、嘔吐が収まる気配がありませんでした。

妻は、

「心配しないで仕事に行って!」

そういいましたが、

「休むって言ったから今日は一緒にいよう。」

その後さらに、苦しみだし一緒にいることがとてもつらかったです。

先生に頼んで嘔吐を和らげる強い薬をお願いしました。

そうすると、妻は少し楽な感じになっていました。

 

僕は病室のベッドの横で妻の目を見つめ、妻も僕の目を見つめていました。

もちろん手も握っていました。

そして、妻はそのまま亡くなってしまいました。

僕を見つめて、手をつないだままで。

 

その後

僕は小さな子供が大きな声をあげて泣くように泣いていました。