◆前回記事のあらすじ
5月15日。
決算報告にて、かぼちゃの馬車問題発覚後、
スルガ銀行が初めて公の場に登場し、
説明のあった内部調査報告。
赤裸々に報告された銀行員の関与の疑い。
明らかにされたスルガスキーム。
「スルガスキーム」は、まさに、
銀行員、業者、そして(時には)投資家が結託をして、
融資もしくは、フル・オーバーローン融資を引く仕組みであり、
かぼちゃの馬車を含むシェアハウス投資や、
億超えのRC1棟物件を、融資を付けて、
素人投資家を型にハメ込んで購入させる仕組み。
スキーム関する内部調査報告では、
2つのポイントが詳細に語られていました。
(1)通帳の偽造・改ざん
(2)二重契約
前回記事「ついに明かにされたスルガスキーム(1)」
◆「それはそれ、これはこれ」
このような違法行為は、
通常ですと由々しき問題であり、
銀行が融資を通すはずがありません。
しかし、
スルガ銀行側は見て見ぬふりを決め込み、
多くの場合が必然的に見逃されてきました。
内部調査書では、銀行員のコメントが、
赤裸々に公開されています。
~ 一部抜粋 ~
次の営業担当者の供述が最大公約数的な認識を示しているものと思われる。
「(かぼちゃの馬車の件について)自己資金ゼロで、という宣伝がなされていることは知っている。当社の自己資金 1 割という方針とは合わない。客がどのように得心しているかについては、スルガ銀行のほぼ全社員は、客の提出した売買契約書、自己資金確認書があるので、業者が何かやっているとしても「それはそれ、これはこれ」と思ってしまっている所があると思う。ある種の割り切りである。スルガ銀行の社員は、客との間で、売買金額がいくら、スルガは(販売価格の)90 パーセント(までの融資)なので融資額はいくらですね、はい、というやり取りをして、売買契約書に割り印がされ印紙が貼付された原本を受領すれば、それ以上つっこんでいない。」
(スルガ銀行「機管理委員会による 危機管理委員会による調査結果の要旨」より)
~ ここまで ~
そして、もう1つ、
スルガスキームを完成させるためには、
重要なパーツがあります。
3つ目のパーツとは?
◆スルガスキームを完成させる3つ目のパーツ
スルガスキームを完成させるための、
最後の1つのパーツが、「満室保証」です。
(3)満室保証
スマート社は「30年満室保証」を付け、
投資家を安心させる道具として使っていましたが、
これはスルガ銀行側にとっても、
融資を付けるための重要なパーツでした。
スルガ銀行が不動産投資に
積極的に融資をし始めた頃から、
「入居状況」は融資の可否判断に直結する、
重要なポイントでした。
玄人の投資家さんになればなるほど、
安く買えて、高い収益を上げられるため、
あえて「入居率の悪い」物件の方を選ぶのですが、
銀行の考え方は真逆です。
(実際は、入居状況の良い売物件ほど、
投資家さんが利益確定させるための、
たいして儲からない出口物件の可能性が高いのです。)
(銀行がこの辺を、
もっと理解してくれるといいのですが・・・)
購入時点で「満室の方が良い」と考えるため、
満室に”見せかける”ことが頻繁に行われていました。
その進化系が「満室保証」です。
「満室保証」は、シェアハウス投資だけに限らず、
中古RC1棟マンション投資などにおいても、
頻繁に付けられています。
「満室保証」が付けられていれば、
満室に見せかける必要がなくなり、
業者も銀行も、投資家もメリットがあります。
しかし、実際は、
入居状況の悪い物件だけなく、
入居需要の乏しいエリアの物件にすら、
業者側が「サブリース」もしくは「満室保証」を付けることで、
スルガ銀行は満額以上の融資をしてしまいます。
購入前にたいした市場調査をしない素人投資家さんにも、
バンバン融資が付いてしまうことになってしまいます。
その結果、かぼちゃの馬車のような、
極めて難しいシェアハウス物件にも、
担保評価を大きくオーバーした物件に、
オーバーローンが付いてしまうことなりました。
◆満室保証が次々と打ち切られ始める・・・
しかし、この満室保証が、
これから大きな爆弾となりうる可能性を、
秘めているのです。
上記の通り、この「サブリース or 満室保証」は、
かぼちゃの馬車のようなシェアハウス投資だけでなく、
1棟マンション、1棟アパートにも付けられています。
シェアハウス投資の何倍もの数の物件が、
「サブリース & 満室保証」を付けることで、
担保評価を大きく上回る金額の融資が出されて、
購入されていっています。
考えただけでも恐ろしくなります。
そして、実際に兆候が表れ始めているのです。
投資家を食い物にするサンタメ業者さんは、
素人投資家に物件をはめ込むために、
「サブリース or 満室保証」を付けて売っているケースが、
少なくありません。
しかし、スルガ銀行の融資が厳しくなったことで、
サンタメ業者さんが苦しくなり、
満室保証が次々と打ち切られ始めているのです。
かぼちゃの馬車のように、
「減額」→「打ち切り」という流れが、
出始めているのです。
第2のスルガ銀行クライシスの始まりかもしれません。

◆なぜこのような杜撰な審査を招いたのか?
それでは、なぜ将来大問題になることを認識しつつ、
スルガ銀行は杜撰な融資をしたのでしょうか?
スルガ銀行のどこに問題があったのでしょうか?
長くなったので次回に続きます。