※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。
珍しく?シリアス気味です。でも最後はハッピー?
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天を仰げば、青いキャンバスに形の不揃いな白い雲がゆったりと浮かんでいた。
腰をおろしている大地には生命を感じさせる若々しい緑が広がっている。
「もしも涙が固体だったら。」
先程見つけた四葉のクローバーを弄りながら太子はぽつりと呟いた。
「今頃その辺に溢れかえっていて、大変だっただろうな。」
仮にそれを涙の石と名づけよう。
彼が言うに、その涙の石は水色で、流れ落ちてすぐに石化するわけではなく、暫くはボンドや糊みたいな液状なのだが、暫く経つと固まって石になるという。
つまり、石1つの大きさはその時流した涙1回分だという。
「じゃあ、赤ん坊など小さい子どもは大変ですね。」
僕が苦笑しながらそう言うと、そうだなと答えて彼も口元に微笑を浮かべた。
「でも、子どもが流す涙は純粋なものだから、きっと綺麗な石なんだろうな。」
ドクリと僕の心臓が大きく動いた。
彼は決して人前で涙を流すことをしない。
自惚れかもしれないが、寵愛や信頼が一番集まっている自分でさえ、いまだかつて彼の涙する姿を見たことがない。
けれどこの人は人一倍の涙を流してきている。
あくまで僕の勘や憶測にすぎないが、そう思ったのだ。
それが目元に出るか心の中だけかはわからないが、どこか寂しげな薄い背中を見ているとやりきれない思いが胸の奥から這い上がってくる。
「太子の石も、きっと綺麗ですよ。」
「それはないな。私の涙は、黒に近い青のような水色の灰色のような、憎悪の集まりみたいな石になるだろう。」
再び僕は一瞬、息苦しさを覚えた。
どれだけふざけた笑みを見せても、どんなに馬鹿なことをしでかしても、この人は摂政なのだ。
噂では不思議な体質故に幼い頃は忌み嫌われていたという。
この勢力と嫉妬と憎悪ばかりが渦巻いている朝廷の中で、彼はどういう思いで育ってきたのだろうか。
「・・・妹子?」
考えるよりも早く身体が動いていた。
僅かばかり背伸びをして彼の首筋に顔を埋める。
「太子の石は、僕が綺麗にしてみせます。だから、これから流すアンタの涙は、誰よりも透き通る美しい、淡い水色の石です。」
一瞬、太子の心臓が止まったような気がした。
実際顔は見えていないのだが、目を瞠っている様子が頭に浮かぶ。
暫くして、ありがとう、と彼の消え入るような声が耳に届いた。
それから熱い水滴が己の肩に染み込んでいくのを感じた。
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*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆後書き*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
もしも涙が固体だったら?という発想からそのまま書いてみました。
太子は表ではへらへら笑っているけど裏では人一倍苦しい思いをしてきていると考えてみる。
皆の知らぬ間に、恐らく本人も自覚なしに泣いていそう。心が。
太妹というか、飛鳥、って感じですかね。でもまあいいや。