この呉市議の主張(マスクは不要だ)はもちろん自由にやってもらって構わないし、保証されている権利ではある。しかし、時と場合によっては迷惑だし、迷惑以上の被害を他人に与える可能性があることを自覚して主義を主張していただきたい。

 

 飛行機に搭乗する際に係員からマスク着用を求められ、同行者と共に「マスクは着けない」と言い張って「義務か? お願いなら着けなくてもいいだろう」などと言い張り、結局ほか44人の乗客らの出発が1時間余り遅れたという。

 他の乗客からしたら「迷惑行為」以外の何物でもない「主張」であろう。それなりの見識と品格のある人物なら、事前に航空機を運行する会社に問い合わせするであろう。

 「私は公共交通機関のみならず、日常生活においてもマスクの着用には否定的な見解を持っていて、それを実践しています。そういう私が御社の航空機に搭乗して移動したいのですが、それに対してはどのように対応されますか?」

 悲しいかなこの市議会員にはそういった根回し的な知恵が無かったようである。いやそれとも、突然突っ込んで他の乗客を人質にとる作戦の「愉快犯」だったのか? (だいたい市議会においてはマスクしているようだし)

 この市議には地元議会で「辞職勧告決議」案が提出される動きとなっている。その経緯は報道で確認できる。

 

 またあるブログには ”「マスク強要」辞職勧告に抗議” として、市議を擁護する文章が掲載されている。 猪名川町議会議員を失職したこのブログの主宰者によると、マスクは「周囲への飛沫拡散効果がいくらかある」程度が「一般論」であるとのこと。そう書いた直後に科学的知見やマスクの評価は「ともかく」と放置して、マスク非着用が本当に危険なら航空会社が(乗客に)利用を拒否すべきとしている。

 

 「自分は悪くない」という主張は結構だが、文章の構成(思考そのものか)が酷いので、小学生が屁理屈を言っているようにしか思えない。そもそも「周囲への飛沫拡散効果がいくらかある」のなら、マスクは積極的に着用するべきものではないか。自身に症状が出る前から感染を拡大させる可能性がある以上、公人たる議員が公共の場でマスクの着用をしないという選択肢をとれるとは、私には信じられない。

 また、このブログの主宰者は主題をすり替えている。マスク非着用が「危険」だから「拒否」したのではなく、「迷惑行為」だから「「マスク非着用」での搭乗を断念するように、航空会社社員は市議に申し入れたのである。他の乗客にどれほどの恐れを抱かせる行為なのか議員には想像できなかったのだろうか。その「迷惑行為」を押し通した(出発はしなかったようだが機内で警官らと押し問答している様子が残されている)から当該議員は「辞職勧告決議」の対象となったのである。当然である。

 

 このブログ主宰者は、猪名川町議会議員時代のある記事で、(危険だから)立ち入らないでくれと書いてあっても、お願いレベルだから自己責任で入ればいい、ということを書いていた。はなはだ無責任であり、牽強付会も甚だしい解釈である。今回の市議擁護の文章にもその傾向が明らかである。

《藍》