「ソング・トゥ・ソング」は、2017年のアメリカ合衆国の映画。監督・脚本はテレンス・マリック、出演はマイケル・ファスベンダー、ライアン・ゴズリング、ルーニー・マーラ、ナタリー・ポートマン、ケイト・ブランシェットなど。

 

音楽産業界の話です。業界の大物プロヂューサー、クック(マイケル・ファスベンダー)の弟子ともいえるBV(ライアン・ゴズリング)はフェイ(ルーニー・マーラ)に出会い、彼女の才能を認めて売り出そうとします。多分にクックに対抗する気持ちもあるようです。

しかし、上昇志向の強いフェイはクックに近づき、関係を持ってしまいます。そのクックはダイナーで働いていたロンダ(ナタリー・ポートマン)に関心を持ち、ついには結婚します。

 

フェイの気持ち、ロンダの気持ちをモノローグで聞かせながら、映像は絶え間なく動いていきます。広角・超広角のレンズで、ステディカムの撮影だと思うのですが、周縁部の人物や建物のひずみが気になって楽しめませんでした。

「絵」としては、美しい(写真集のページをめくるような…)のですが、とても落ち着かなくて、気分が悪くなるほどでした。以前「カメラを止めるな!」を観た友人が「手持ちの映画って気分悪くなる」と言ってましたが、人によって違うものですね。私はあのブレブレ、ガクガクの映像は何ともないです。この映画のような、絵画的に切り取ったような画面が、カメラの動きに従って周縁部が伸びたり縮んだりする、それが耐えられません。ナタリー・ポートマンの後頭部が画面の端で異様に大きくなっているのって変ですよ。

 

まあストーリーは大したひねりもない映画です。

このパンフォーカスの映像がグニャグニャする画面を長時間観ているのがお好きな人には最高だと思います。こんな映画他にないですもの。(笑)

 

「天国の日々」「ツリー・オブ・ライフ」など、テレンス・マリックの作品は好きですが、この映画だけはなんか違うという感じです。

映画とか演劇とか小説とか音楽とか、それぞれそれなりの時間をかけて体験するものですよね。その中で(過程で)作者がこちらに言いたいことが何かあると、そういうものを感じ取るのが読者や視聴者の喜びではないのでしょうか。

この映画のパンフォーカス映像にはあいまいな部分を拒否するような厳しさを感じて、私はどうにも、出演者たちに感情移入してストーリーを追うというようなことはできませんでした。時間をかけて観ているものに訴えるというよりも、一枚の写真を見て「どう思う?」 次の写真を見せて「感想は?」と絶え間なく畳みかけられているようでした。

私は、マリック監督は人によって違う「何か」を観ているものに感じてほしいのではなく、自分の感覚を正しい解釈として押し付けたいだけなのか?とまでも思いました。

疲れた映画です。