自分がなぜここまでオーディオにハマっているのかと言えば単純に不思議な世界だからです。
では何が不思議なのでしょう?

まず皆さんはステレオ再生ってどう言う事か知っていますか?
古くはモノラル再生から始まり、ステレオ、そして映画の世界ではマルチチャンネル再生花盛りですが
いまいちモノラル、ステレオが分からない人が多い気がします。

因みにモノラルとは厳密には1本のスピーカーだけで再生する方法の事で
ステレオとは左右それぞれに1本ずつ計2本のスピーカーで鳴らす再生法の事です。
(マルチチャンネルとはそこから更に後ろや真ん中等にもスピーカーを置く再生法です)

左右にスピーカーが有ると言う事は右と左はそれぞれ違う音が出ると言う事で
ヘッドフォンで良く音楽を聞く方は分かると思いますがボーカルは真ん中から聞こえるのに
シンバルンやパーカッションは右もしくは左からのみから聞こえたりするのがステレオなのです。

そして自分みたいに音楽を聴く人はスピーカーを置く位置と自分が聴く位置を非常に大事にします。
原則としてはスピーカーは部屋に対して左右対称に、自分はそのスピーカー同士の中心線上に座るわけで
要は部屋に自分とスピーカーで二等辺三角形を作るわけです。
自分と右側のスピーカーまでの距離と
自分と左側のスピーカーまでの距離が一緒で、更に部屋との関係、装置のレベルもそれなりに
クリヤーすると目の前に不思議な光景が浮かび上がってくるのです。

不思議な光景とは
そこに演奏者が、楽器が浮かび上がってくるのです。
仮にボーカルとギター、そしてピアノの3人で収録した曲を再生したとすると
映像はそこには無いのに音だけで
真ん中で歌っているボーカルが居てその右に座ってギターを弾いている人が居て
その後ろでピアノが鳴っているその立体的な雰囲気が伝わってくるのです。

音は左右のスピーカーからしか出ていません。
でも目の前にはステージの奥行きすら分かる程、それこそスピーカーの後ろの壁の向こうで本当に今
3人が演奏しているのでは??って錯覚してしまう程リアルにステージが現れます。

もっともそこまでリアルにステージが浮かび上がるのは少人数での演奏に限られます。
そりゃそうですよね。自分の部屋にフルオーケストラが入る訳ないのですから。
でも目の前には小さいながらもオーケストラのステージも広がります。
これをはじめて経験する人は本当にビックリします。

なぜそうなるかと言えばこれは人の耳の錯覚を利用したお遊びなのです。

元々人の耳は左右に聞こえる音のわずかな時間差でその音の出所を判断する能力が有ります。
例を挙げれば右耳で先に音を聞いたわずか後に左耳にもその音が届いた際に人間は右側から音がした
と判断するわけです。
そして右耳と左耳に到達するまでの時間のわずかの差とその音の大きさの違いでただ単に右側だけでなく、
自分からのおおよその角度、距離を瞬時に判断するだけの能力が人の聴力は持っています。
見えない角度から声を掛けられても、比較的簡単に声のする方向を見つけて相手を理解できるのは
左右に耳が有るからに他なりません。

そして耳の錯覚ですが

左右にスピーカーが有り、また人も左右に耳を持っているわけですから
左のスピーカーの音を左耳と右耳で聞く時間差と
右のスピーカーの音を右耳と左耳で聞く時間差
この二つの時間差を同時に行う事によって人はあたかも音が鳴っていない場所から音が聞こえてくる
様な錯覚を起こすわけです。
そして凄いことに最終的には目の前にあるスピーカーからは全く音が出ている感じがしなくなって
くるのです。これをオーディオをやっている人はスピーカーが消えると表現しますが、
このスピーカーが消えた状態の音を聴くと本当に鳥肌が立つほど素晴らしいステージが目の前に
広がるものなのです。
上に書いた左右のスピーカーの距離が等しい必要が有るのはこの為です。

ただこの状態にまでステレオ再生を突き詰めるのは正直大変だったりします。
もっともそれこそが趣味の醍醐味なのですが、でもその労力を少なくしてもっと簡単に突き詰めた
ステレオ再生に近い物、更にはそれ以上を求める形でマルチチャンネル再生が発展してきたわけです。
そしてヘッドフォンは左右の音がそれぞれの耳にしか届かないのでどうしてもスピーカーで鳴らすような
広がり感のある音は得られない訳なのです。

最後に
家で音楽を聞くためにラジカセでなくちょっとしたコンポを持っていられる方の
殆んどが真ん中のレシーバーと左右のスピーカーがくっ付いた置き方をしていると思いますが、
一度置き場を変えて左右のスピーカーを広めに置いて二等辺三角形になる位置で聞いてみると
少しは音の広がりや真ん中で歌うボーカルにハッとするかもしれませんよ。