先日、ローマ篇を読んで結構面白かったので、こちらも読んでみた。見どころをディープに掘り下げてあり、イタリア好きの期待を裏切らない。

 それにしても白水社は何でこんなにひらがなを増やすのだろう? 会社の方針なのだろうか? 読みづらくてたまらない・・・。教皇と法王が混在しているなど、表記も統一されていない。地図も上が北ではなく、方位も示されていない。校閲がきちんとされていないのである。ともあれメモ。

 

 1. セガトという化学者については、坂東眞砂子さんの本を読んで既に知っていた。だが、彼の「作品」が2001年、フィレンツェ自然史博物館からカレッジ総合病院の解剖学博物館 Museo Anatomico di Firenze に移されたことは知らなかった。このサイトを覗くだけでもう結構!! 訪ねることはないだろう。

 2. ヴェッキオ宮の Sala di Ercole に「UFOの聖母 : Natività」(Maestro di Tondo Miller)があることは知らなかった。

 3. オアンネスというバビロニアの半魚人が、サン・ミニアート・アル・モンテ教会の頂に載っているとは知らなかった。理由は不明である。また、この聖堂内には、四人の福音初期者のうちルカのシンボルである牛がことごとく欠けているという話も初耳であった。牛は、ミトラ教では犠牲獣であり、その意味でキリストとみなされた体という。聖ミニアートの凄惨な殉教についても書いてある。だが、私がいちばん最近この聖堂を訪れたのは、ポルトガッロ枢機卿の墓碑を見るためであった。この本は必読!! 彫刻家デジデリオ・大理石・セッティニャーノの生まれ変わりだという女性の旅である。興味の尽きない聖堂である。

 

 4. プラトリーノ公園にあるジャンボローニャのつくった「アッペンニーノの巨人」のことは知っていたが、大公フランチェスコのエピソードは面白かった。

 5. ピッティ宮の隣にある人体解剖模型博物館、 Museo della Specola のことは知らなかった。シチリア人ガエターノ・ズンボと地元のクレメンテ・スシーニという二人りロウ細工師の作品・・・画像検索したけれど、まあ見たくはないなあ。

 6. シニョリーア広場の一隅にある線刻はミケランジェロのものなのに、市口さんはレオナルドのものだと書いている。レオナルドが描いたのはl'impiccato、1479年、パッツィ家の陰謀でジュリアーノ殺害の下手人とされたパロンチェッリで、このスケッチはフランスの Bayonne 博物館に収蔵されている。 https://www.pilloledistoria.it/12239/storia-moderna/bernardo-bandini-baroncelli

 7. ヴァザーリの回廊(正しくは通廊)のところでは、考古学博物館で見学できる公女マッダレーナの開廊の話が面白かった。▼この動画によれば、ヴァザーリの通廊は2021年から一般公開される予定とのこと。

 8. バルジェッロには、ミケランジェロをモデルにしたダヴィデがあるって? ウソでしょ。ヴェロッキオのものは弟子のレオナルドがモデルだという話はあるけれど!!  サンセポルクロのサン・ロレンツォ教会にあるロッソ・フィオレンティーノの「降架」は見てみたいが、あそこにはもう行くこともないだろう。諸聖人の殉教についての記述は知っておくと良いだろう。

 9. キウジの章には期待していた。ポルセンナの迷路、地底湖、最近オープンした Museo civico "La Città sotterranea"、訪れたい。考古学博物館と猿の墓くらいしか見学していないから、次はぜひ!!

 10. シエナのサンタ・カテリーナのエピソード。胴体はローマのサン・ドメニコ教会に横たわっている。

 11. サン・ジミニャーノの拷問博物館のことは知っていたが見たくはない。

 12. 教皇庁がピエンツァに移った? ピウス二世の生涯は有用。地盤沈下の対策については知らなかった。

 13. サン・ガルガーノの廃墟には行ったことがある。タルコフスキーの映画「ノルタルギア」で見て。聖ガルガーノ伝説(1148年生まれ、第三回?十字軍に従軍したのだろうか?)とシトー派の関係は宜なるかな。

 14. Poppiの城と塔、井戸の話は恐ろしかった。行きたくない。

 15. ルッカのイラリア・デル・カレットの話も胸がつまされた。ドゥオモのあの石棺が空っぽにされてあちらこちらに、とは知らなかった。