硝子の天使

硝子の天使

オリジナルのファンタジー小説ブログです。なお、著作権は全て神崎樹に帰属していますので、転載・流用はお止め下さい。

お仕事など募集中です。

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書籍版『硝子の天使』発売中!!



文芸社様『硝子の天使』紹介ページ→

http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/978-4-286-16325-3.jsp

取り扱い書店について→

http://ameblo.jp/trifle-luna/entry-12043337792.html


※ブログ版とは徹頭徹尾、設定からして全く違う内容ですので、ブログの方を読んで下さった方でも充分楽しめる様になっております!





※価格は700円(税別)です。

274ページの文庫となっております。


※表紙イラストを描いて下さったのは、槐まくろ様というイラストレーター様です。

まくろ様のpixivアドはこちら→

http://www.pixiv.net/member.php?id=966000

あのボーカロイドの超有名曲「ネトゲ廃人シュプレヒコール」の本家のイラストを担当なさった方です…!




書籍版あらすじ】



『舞い降りたのは、悪魔のような天使。』



閉鎖的な村・エヴァンジルの中で一番の名家であるシュヴァリエ家の一人息子・アンリは、毎夜、ブロンドの髪に緋色の瞳という自分そっくりな女性が殺される悪夢にうなされていた。


ある日アンリは、夢の中と同じ教会を見つけ、そこで目の覚める様な美青年・カミュと出会う。


アンリのことを「セリア」という女性名で呼んできたカミュに憤慨するアンリだが、突如、得体の知れない化け物たちに襲われたところをカミュに助けられ、反抗できなくなってしまう。


カミュは自らのことを、アンリを悪魔から守るためにやってきた『天使』だと言い、そのまま強引にアンリの屋敷に居候することになる。


プライドの高いアンリと、アンリをどこか小馬鹿にしたように振る舞うカミュは、お互いに反りが合わない。けれども、カミュは「自分の目的の為にアンリを守る必要が有る」と言う。


しかし裏ではアンリの特殊な魂を巡って、あらゆる者達が策動を始めていた―――。



「……僕は、道具じゃない」



「アンリ、お前も可哀想な奴だな。誰も彼もがお前を利用しようとしてるんだからな」



「私はもう二度と―――大切な人間を失いたくはない!」


忍び寄る悪魔と、村に古くから伝わる悪習。

物語は二転三転し、やがて絶望がじわじわと浸食する。

最後に笑っていられるのは―――。





「―――これからは、何があっても離れませんからね」




登場人物】



アンリ…エヴァンジルの名家に住む金髪赤眼の子供。15歳という年の割には幼い風貌で、生意気で高飛車。


カミュ…突如教会に現れた、天使を名乗る全身黒い服を着た美青年。強引にアンリの家に居座る。自分の目的の為にアンリを守る必要があると言うが、その真意は謎に包まれている。


ソフィー…アンリのクラスメイトである美少女。人当たりが良く、男子の注目の的だが、何かを知っている様で…?


エミール…アンリのクラスメイト。他の村から移り住んできた数少ない子供。アンリを異様に気に入っている陽気な男子。


フェネオン…アンリのクラスの担任。化学教師。どこでも寝る特性があり、普段はやる気を見せないが生徒のことは思っている様子。


ボードレール…アンリのクラスの副担任。数学教師。フェネオンに振り回されている。気が弱く、よくドジをやらかす。


ヴィオレット…アンリの母親。女手一つでアンリを育て上げてきた、品行方正で優しい美女。


ガストン…アンリのクラスメイト。アンリをライバル視しており、甘やかされて育ったせいか態度が大きいことがある。


ドゥルマ…アンリの家の隣に住む老人。村で一番の長寿。カミュが村にいることを快く思っていない。



本文サンプルはこちら!↓

http://ameblo.jp/trifle-luna/entry-12031407133.html


表紙だけでも書店などで見て頂けると幸いです!

これからもどうぞ宜しくお願い致します。


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 毎晩、同じ悪夢にうなされる。

 目を開けると―――夢の中で、目を開けると言うのも変な表現だったが―――そこは、小さな教会だった。壁の燭台には申し訳程度にしか火が灯っておらず、内部の全体の様子が把握出来ない。
 ただ、薄暗い中、中央の奥に位置する祭壇に誰かが横たわっているのが見えた。視点が変わり、祭壇の上で仰向けに寝ているその人物を真上から見下ろす形となる。

(……僕にそっくりだ)
 そう思う。

 ブロンドの美しい髪を両脇で三つ編みにしたその女は、滑らかな白い肌をしていて、胸の前で手を組んでいた。微かな膨らみを見せるその胸はゆっくりと上下している。美しい赤い瞳で宙を虚ろに見詰めていたが、やがて瞼がそっと閉じられた。
 僕はその姿を改めてまじまじと見詰めた。そっと彼女の方へ手を伸ばそうとするが、今の自分はまるで幽体離脱でもしている様な感覚で、そもそも伸ばす手が無かった。触れることは叶わない。

「!」

 そこで突然ぎょっとした。いつの間にか、自分達の周りに、いや、正確に言えば女の周りに、大勢の人間が居たのだ。祭壇を取り囲むようにして、皆息を潜めて女を見下ろしている。
(何だ――)
 一種異様な空気を感じる。無い筈の肌がぞくぞくと粟立つのが分かった。
 中央に立っていた男が、一歩祭壇の方に足を進めた。そして懐から何かを取り出す。
 目を凝らしてよく見ようとする。すると、それが何なのか気付いたと同時に、息が止まりそうになった。蝋燭の光を反射したのは、鈍い銀色の煌めきを放つナイフだった。

 まさか――。

 嫌な予感が増幅する。心臓がばくばくと鳴る。慌てて周囲を見回すが、周りの人間は誰一人としてその行為を咎めるどころか、動くことさえなかった。祭壇の上にいる女は目を閉じたままで、気付く気配もなく逃げ出すこともしない。
 頼む、起きろ、起きてくれ!
 大声を出そうとする。しかし今の自分には肉体が無い。出せる声は無く、その手も届くことはなかった。
 男は、ナイフを高々と掲げた。
「――――!!」
 僕は大きく口を開け、悲鳴を上げそうになり――。

 *

(……あれ?)
 次の瞬間、僕は絨毯の上に立っていた。
 その赤い絨毯が祭壇に続いていることに気付く。今は様子が違い、陽が射し込んでいて明るく、全体が見渡せるが、ここが先程と同じ教会なのだと分かった。
 祭壇の上に女の姿は無い。代わりに、何か別の小さく細長いものが有るのが見えた。僕は思わず祭壇の前まで歩みを進め近付くと、それが何かを間近で見ようとした。
 ……白い、薔薇?
 祭壇の上には、一輪の白い薔薇が置かれていた。窓から差し込んだ明るい陽がそこへ当たり、スポットライトでも浴びているかの様に、その薔薇は自分をそっと主張し、そこへ供えられていた。
 まるで、誰かの死を悼むかの様に。
 まるで、誰かへの愛を囁くかの様に。
 僕は――。

 僕は、すうっと自分の意識が浮上するのを感じた。ああ、今日もこの夢が終わってしまう。あと少しで、あと少しで何かとても大事なことが思い出せそうな気がするのに、それが出来ない――。
 僕は、今度こそはっきりと目を開けた。そして、今日も戻る。夢の中から、僕のいる本来の現実世界へと。