名古屋ライブのこと-2

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二日目。


朝、前の晩の打ち上げのアルコールをたっぷり頭に残しつつ、タッキー邸で重いまぶたを開ける。もともと厚ぼったい目が飲みすぎで腫れて負けボクサーのよう。顔を洗おうと立ち上がろうとしたら、目の前のヤーマンと目が合った。ふと、足元を見ると、まだ半分以上残っている泡盛の一升瓶があるではないか。にっこり微笑みあってYAOさんと泡盛のコーヒー割りを飲み始めた。

という感じで、かなりゆる~く、二日目はスタートする。


昼前、街中に繰り出す。

名古屋といえば、味噌カツ!味噌カツといえば矢場トン!

というわけで前日、時間切れでありつけなかった名古屋が誇る矢場トンに涎を垂らしながら向かう。

街中を抜けて歩いていくと、矢場トンの3階建てビルが見えてくる。

と、その手前、右側の看板に目が吸い寄せられる。

「味仙」

おおお!これも、昨日、時間切れで食えなかった、名古屋名物台湾ラーメン発祥の店!

矢場トンの入り口に連なる長蛇の列を見るや否や、一緒にいた女性スタッフに並んでもらい、野郎5人ほどで、「偵察」などと称して、味仙に引き返す。


味仙は店内が広いせいもあって、並ばず入れた。早速、台湾ラーメンを注文。やってきました。鶏がらベースのスープにもちっとしたやや太めの麺、赤唐辛子で和えたひき肉に、これでもか!ってほどのにんにくがっつり、とどめはニラがバッサリ。匂いを嗅いだだけで理性を失いそう。いただきまーす!と食す。

いや、参りました。すごいですわ。もう、なんて説明していいか分からない。とにかく、食べ出したら止まらない。結構辛くて、スープ飲むのなんてそれこそひと苦労なんだけど、涙流しながらも口がどんぶりから離れない。しかも食べ終わった後も糸を引く。心地よい辛さが快感の余韻を口の中に撒き散らす。あああ、癖になった。書きながら涎が出てきた。

名残惜しさを残しつつ、矢場トンに引き返す。待っててもらったスタッフたちがちょうど、店内に入るところだった。すいませんねぇ、と頭を下げながらも悪びれず店内へ。

矢場トンも美味かった。味噌カツって多分、どちらかといえば庶民的なB級グルメと言った方が合うのだろうけど、ここの味噌カツはとても上品な味でした。とくに白ゴマとソースの組み合わせが抜群。あっという間に、それこそ、さっき胃袋に入った台湾ラーメンが冗談か夢だったように、ペロっと平らげてしまった。


タケちゃんと二人で外へ出て、みんなが食べ終わるのを待つ。

なかなか出てこない。


「味噌カツ美味かったねー」、「上品な味だったねー」なんてタケちゃんと談笑する。

まだまだ出てこない。


「矢場トンもヤバかったけど、台湾ラーメンも美味かったねー」

やっぱり出てこない。


「・・・、なー、たけちゃん、もいっかい、食べない?」

「!?味噌カツ?」

「いや、台湾ラーメン。俺、どーしてももう一回確かめたいの、味を。」

「いーすよ、俺、ここで待ってるからリュウさん、言ってきて下さい」

礼を言う間もなく、足は味仙に駆け出していた。


だだっぴろい、味仙のホールの円卓に、ひとりぽつねんと座り、両手に端を握り締め、今か今か、と厨房の方を見ていると、入り口から名古屋スタッフのミホちゃんが入ってきた。心なしか大股でのっしのっしとやって来る彼女のアフロが逆立っているような。

「まだ食べるんですか?!リュウさん、会場入りまで、もう時間がないんです!」

「ひいいい、ごめんなさいごめんなさいごめんなさい、でもおれどーしてももういっかいくいたいの、たいわんらーめん!おねがいくわして!ひとりでかいじょういくから、たべたらだっしゅでいくから!」

はあああ・・・、とため息をつかれ、アフロがのっしのっしと遠ざかっていく。入れ違いで台湾ラーメンが運ばれてくる。をーし!秒殺してくれる!っつーか、秒殺されてやるー!


とまあ、こんな感じで会場入り。

ね?ゆるいでしょう?

ゆるゆるです。


二日目の会場、K.D.JAPON。

いや~、素敵な箱です。

アコースティックライブにもってこいの空間。

JRの高架下で外観は独特のドヤ街っぽい佇まいを残しつつ、店内は木を基調にした暖かい雰囲気。螺旋階段でロフトスペースに上がればソファーセットが置いてあり、ステージを見下ろせる寸法。天井が高くてスペースの自由度が高い。バーカウンターも良い感じだし、何より店の人が良い感じ。なんつーんだろう、飾り気が無くて、わりとフツーな感じなんだけど、だけど、だからこそ際立ってくるセンスの良さ、こだわりの強さみたいなものが伝わってくる素敵な人たち。こんな素敵な場所で演奏できるなんて幸せものだなぁ、ONSENS。

会場が狭い=ステージも狭い=会場とステージも近い。

というわけで、ステージ上のスペーシングはかつてないほど5人が詰め寄った形に。

そして、客席にも近い近い。自然、一体感が増す。暖かい感じ。

この居心地良い雰囲気に押されてビールが進む進む。

タケちゃんはステージが始まる前に既に500ml缶を4本空けた。2ℓですな・・・。(俺もあんま人のこと言えないけど。)

開場時間になってお客さん達が入ってくる。だけど、楽屋なんて何処にもないからメンバーはそこかしこでビールをグビグビ。RIEちゃんまでニコニコしながらグビグビ。いや~、ゆるいな~。開演前にこんなにリラックスしてて良いのでしょうか?間違いなくこんなの初めて。

「はい!じゃあ、そろそろ時間なので、オンセンズのみんな集まってー!」

って感じで、のそのそと5人がステージに集まる。

みんなすごくいい笑顔。

それでも、曲の前には引き締まる、目だけは。


「Beautiful」、「Holy Night」、「インラケチ」、「痛いの痛いの~」と続く前半。どれも良い感じ。ゆるく和みつつ、メリハリもついてて、とてもよい感じ。

そして、

そして、いよいよ、問題の歌である。

「だいじょうぶ、マイフレンド」

懐かしいな、とか思っちゃう人、世代が一緒だな。

ONSENS初の楽器持ち替え。で、YAOベース、TAKEドラム、RIE縦笛、AKIRAギター、俺ボーカル。途中3人分のセリフは、名古屋スタッフのタッキー、イワセ、シゲさんが勤めてくれる。3人ともハマリ役。

いやー、すいませんね。みんなAKIRAさんの歌を聞きに来てんのに、たった1曲とは言え、こんなラクダの歌を聞かせて。でも、AKIRAが歌えって言うんだからしょうがないですよね。

みんな場所移動を始める。と、隙を見て俺はトイレに駆け込んだ。ビール飲みすぎ。おしっこが止まりません。シンヤの「リュウさん、まだぁ!」の声とノックに急かされて、ドアを開ける、と入れ違いにタケちゃんがトイレに駆け込む。続いてAKIRAさんも。いかん、間持ちさせねば。っと、調子付いてMCなんぞ始めてしまいました。


「どーもみなさん、こんばんわ。僕、実はもともとプラントエンジニアなんて職業やってまして、そこそこ大きい会社で、そこそこいい給料もらって、そこそこ仕事で海外行ったりして、ま、そこそこ充実したサラリーマンをやってました。それが、何を思ったか、ある日、突然会社辞めて、大学戻って、しかもプラントの設計とは何の関係もない言葉の勉強なんか始めちゃいまして、卒業する時はまだ幾つかそれなりの就職口もあったんですが、よりにもよって、田舎のガソリンスタンドに入ってスタンドマンをやってます。収入はもとの会社の半分近く。

まぁ、これを人生踏み外したと言わずして何と言う?って感じですが、ただ、会社辞めて大学戻らなかったらAKIRAさんに出会うことは無かったろうし、大学卒業しても田舎に戻らなかったら、ONSENSとこうやって活動する余裕も無かったと思うわけで、つまり、そういう踏み外しのひとつでも欠けてたら、僕は今日、ここにいない訳で。

どこかの売れない作家が、長い長い平均台から落っこちると地面が受け止める、なんて本に書いてましたけど、ほんと、平均台の上は道なんかではなく、道は地面の上に自ら踏み固めて行くもんだと思うわけです。

道を踏み誤った全ての人と、これから踏み誤るであろう全ての人に捧げる応援歌です、だいじょうぶマイフレンド」


ぴぴーぽーぽーぽぽー、

ぴぴーぽーぽーぽぽー、

ぴぴーぽーぽーぽぽー、

ぽーぽーぽーぽーぽーぽーぽーぽー

RIEちゃんのあらゆる意味で絶妙な縦笛で曲は始まった。


いやー、はっきし言って気持ち良かった。

ただ、疲れる。歌は。

発声の知識もテクもゼロなので、ただ、喉を絞って歌うだけ。

声を張り上げ、ひたすら歌うだけ。

なんだか、歌ってる途中で色んな人達の顔を思い出した。


統合失調症と診断されてグループホームで暮らしている昔からの友達。

だいじょうぶ、マイフレンド。


いつもオドオドしながら、それでも毎日一生懸命働くスタンドの新人アルバイト。

だいじょうぶ、マイフレンド。


最近リアルな夢に出てきた、トヨタのエンジン開発に携わる高専時代の友達。

だいじょうぶ、マイフレンド。


6畳一間に生まれたばかりの俺を含めて5人で生活してた若かりし頃の親父とお袋。

だいじょうぶ、マイフレンド。


僕は歌う。

あなたやみんなのために、とかではなく。

あなたやみんなに歌ったところで、なんの救いにも慰めにもならないと知ったうえで。

そもそも、あなたやみんなは救いや慰めなんて必要としてないことも知ったうえで。

そんなこと、百も承知していても、僕は歌う。

大声で、エールを送り続ける。

馬鹿みたいに、旗を振り続ける。

他でもない、自分のために。


前半が終わって、AKIRA&TAKEのバラードタイム。

いつもだと、ここでYAO、RIEと3人で引っ込むんだけど、引っ込む楽屋がないのでステージに残る。

で、YAOさんとRIEちゃんはCAJONを叩く。これがまた「Cry」にピッタリですごくいい雰囲気作ってた。ちなみに俺は足に鈴まいてたんだけど、これはイマイチ。その代わり、次の「心がくしゃみをした朝」ではメロディオンで挽回。殆ど20年ぶりくらいに吹いた。


ここで、YAO&RIEのドラムセッション。

今回は高崎ライブに続き、タクヤがディジュで入る。

残りの3人はとりあえず、客席に体育座り。

毎回、このセッションは凄いんだけど、今回は特に凄かった。

なにがって、途中、YAOさんの上からONSENS様が降りて来た、

のを見たような気がしたのだ。

光の矢が一直線に光って、その中に、リボジィが描いたヘタウマの極致であるONSENS様の姿が!

見えたような気がしたのだ。


後半は、

「Eejanaika」

「Be here now」

「犀の角」

「僕の居場所」

「背中」

「おやすみ」

なんだけど、正直、あんまりよく覚えてない。

「Eejanaika」と「犀の角」の出だしで、思わぬハプニングで足を引っ張ったり、「背中」でAKIRAさんがいきなり歌い始めてYAOさんと慌てたりしたこと以外、はっきりした記憶が少ない、ってか殆どない。昨日、ビデオを見て、へぇ~イーぢゃんと思ったほど。


多分、心地よ~く、身を漂わせていたのだと思う。

演ずる、から、委ねるに軸足が動いたのだと思う。

ゆるゆると。


はっきりした記憶という形では残ってないのだけど、

ほんわか、ゆるゆる、漂っていたその時の、あの時間、あの場所に流れてた空気は感覚として残っている。

それと、最後の曲「おやすみ」の時に、会場の数箇所で聞こえたすすり泣きの声も。

これは、数少ないはっきりとした記憶。

すすり泣く声を聞きながら、ぼんやりと、だけどかなり確信を持って思った。

「終わるんだな、ゆるゆる心地よく漂ってきた今までの時間は、今、まさに終わろうとしてるんだな。」って。

とても、切なくて、いとおしくかった。

流れ過ぎようとしてる時間が。

出来ることなら、ずっと踏み止まってほしかった。

流れ去ることなく、自分の周りにずうっと漂っていて欲しかった。

でも、ぜったいに、そんなことは起こらないし、起きたら間違いだということも分かっていた。

だから、最後の最後まで、いとおしかった。

時間と空気が。




そんな映像をビデオで見ながら、昨晩、33回目の誕生日を迎えました。

ONSENSの「♪ハッピーバースデイ」に合わせて手作りケーキが運ばれ、プレゼントもらって。

なんだか、子供のとき以来の「お誕生日会」って感じで、感激してしまいました。

ビール飲み過ぎで撃沈するタケちゃんを筆頭に、みんなバタバタと寝静まっていって、最後に残ったトモコと無言で暗闇のなか、ビデオを見つめながら思いました。

今年も、不器用でいこう、と。

不恰好で、不細工で、いい。

不細工が、不恰好で、不器用だからこそ、伝えられるものもある。

はず。

ONSENSの汚れ役を一手に引き受けて(?)、SKUNK野郎、今後も大爆走。




追伸:

いわせへ

お前は本当に頑張った。そんなに頑張れるのはひとつの才能だと思う。すごいよ。ありがとう。


タッキーへ

若年寄、だね。落ち着いてんだか、熱いんだか、ますますよく分からなくなった。多分両方なんだろうね。かっこいいよ。ありがとね。


シゲさんへ

二日目のシゲさんの頑張り、涙が出そうになりました。打ち上げで奥さんの隣でおいしそうにビールを飲む姿を見てまた涙が出そうになりました。ありがとうございました。


ミホへ

そのアフロの中にいつか住んでみたくなりました。先ずは巣作りから。意外に(失礼?)しっかりしてて(毛髪じゃなくて言動がね)驚かされました。ありがとう。


メグへ

ミホ以上に驚かされました。なんかさ、黙っててもまわりが何とかしてくれそうな、そんな雰囲気なんだもん。これ以上学校さぼっちゃ駄目よ。ありがとう。


エリちゃんへ

今回、お初でした。グアテマラの素敵な巻きスカートと、普段のOL着のギャップにめろめろです。これからもよろしく。ありがとう。


コズモへ

おじいちゃんとお父さんが作った道を歩いていって大きな出会いを果たして、これからどんな道をコズモは作っていくのでしょう。楽しみです。ありがとう。


ロミちゃん、シンヤ、トモコ、づつき、みんな、どうもありがとう。ものすごーく楽しかったです。