読売新聞の記者の方たちも、文春新書の「『社会調査』のウソ」(谷岡一郎著)を読まれたことがあるのではないだろうか。
2000年発行の話題の本。そろそろ25刷くらい。
編集者や記者、テレビ局員も推奨本として目にした人は多いかもしれない。

なかなかウイットの効いた、最低限の基本をしっかりおさえた良書。
データを使用する際の危険性についても繰り返し書かれている。

恣意的なデータを元に適当なことを述べると、社会調査について少しでも知っている人のことは騙せない。
それどころか、恥をかいてしまう。

「社会部 中村勇一郎、関俊一、地方部 森広彰」と記名してあるが、どうなのだろう。
このうち「社会調査のウソ」を読んだ人は、こういった形の記事を作ることに対して、抵抗を示したかもしれない。
だけど、「読者はこんなことに疑念を持ったりしないよ。平均的な読者に合わせて簡略化して記事にすればいいんだよ。クレームなんて来ないよ」と上の人に言われてしまったかもしれない。

無念な下っ端記者の思いを汲み取り、一般人の感想として「この記事のデータ解釈は非学術的で問題点も多いんじゃない?」と言っておきたい。

(新聞記者の人は深く考えられることは求められていないので、文章は文学的表現ではなく決まり文句の場合が多い。内容も哲学や社会学には関係なく、中立的にありのままを呈示しました、と言い訳できるようなものが多い。でも書いたことに責任は負わされるから酷な仕事です)

確かに、飲酒運転に対する厳罰化やシートベルトの義務化は交通事故の減少に大きな影響を与えただろう。
しかし、交通事故に関係する要素は複雑だ。

誰が交通事故に遭っているのか。自動車の運転手か、バイクの運転手か、歩行者か。
道路を走る車の量は増えているのか、減っているのか、変わってないのか。
車を運転する人の平均年齢は上がっているのか、下がっているのか。
年代別に判断能力が異なるのか。
交通量が増えれば事故が起こる率は高くなるのか。
年齢別に事故発生率は異なるのか、変わらないのか。
飲酒をした場合、事故を起こす確率は高くなるのか。
事故に遭った場合、シートベルトを着用しておけば死亡率は下がるのか。
等々。

ぼんやり考えても、交通事故の一番多かった1970年(昭和45年)とか、1992年(平成4年)といえば、1948年前後生まれの団塊世代が22歳前後、1973年前後生まれの団塊ジュニア世代が19歳前後。
若年層で車を持っている世代が増えたから交通事故も増えたのではないかと連想される。
交通事故死者数のグラフを見ると、日本の年代別人口のグラフと相似形になっていることに気づく。

単純に、一般道の車の交通量が減ったから交通事故死者数が減ったとも言えるのではないか。
車の安全性が高まったから事故死者が減ったとも言えるのではないか。
歩行者が減ったことや歩道が整備されたことが事故死者数の減少に影響しているのではないか。

また、下記のようなデータも有名だ。

■全国の交通死亡事故構成率
四輪車 36.3%
二輪車 18.0%
自転車 12.9%
歩行者 32.8%
その他 0.1%
(平成20年 警視庁交通総務課集計)

このデータによると、車に乗っていて亡くなった人は交通事故死者数の3分の1程度だということがわかる。
シートベルトやエアバッグを標準装備して法制化しても、交通事故死者数の3分の1をさらに減らすことしかできない。

交通事故死者数の30%を超える歩行者の交通事故死者数を減らせないものだろうかと思う。
地方での歩行者の交通事故は比較的多い。
歩道の整備、横断歩道の整備、歩道や横断歩道を歩かない歩行者に対して罰金刑を設置するとことを検討する必要があるかもしれない。
車に、衝突者よけネットを設置することを義務付けてもいいかもしれない。
高齢者の自転車利用者や歩行者に対してヘルメット着用を義務付ければ交通事故死者数は減るかもしれない。

そういう疑念や想像について新聞社の記者の人も考えたかもしれない。
それなら、そういったことも記事に盛り込んでほしかったな。


交通事故死者を減らすことは私の願いでもある。
人口当たりの交通事故死者がいくら韓国や中国の半分以下だといっても、限界まで減らしたいと思う。
一緒にお酒を飲んで話をしたかった親族がダンプに轢かれて亡くなったから。


http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090103-00000010-yom-soci
■交通事故死なぜ減少?シートベルト・飲酒運転の罰則強化も
1月3日9時58分配信 読売新聞
 2008年の全国の交通事故死者は前年より589人少ない5155人だったことが2日、警察庁のまとめでわかった。
 8年連続の減少で、過去最悪だった1970年の3分の1以下に。その反面、被害者を引きずったまま車両が逃走する事件など悪質で危険な運転も目立っている。
 08年4月18日。宮城県蔵王町の東北自動車道下り線で、走行中の軽自動車が大型トラックに追突されて半回転し、道路左のガードレールにたたきつけられた。車のフロントガラスやサイドガラスが周囲に飛び散り、車体の右横が大きくへこむほどの衝撃。しかし、車内にいた男女3人はシートベルトを締めていたため、全員、軽い打撲などの軽傷で済んだ。
 特に後部座席の左側に乗っていた女性(69)は、回転しながらガードレールにぶつかった時の遠心力で、ベルトをしていなければ車外に放り出されていた可能性があった。「最悪の場合、女性は死亡していたかも知れない」。宮城県警高速隊の幹部はそう振り返る。
 後部座席にもベルト着用を義務づける改正道交法が成立したのは07年6月。昨年6月から違反点数1点が科されるようになった。警察庁は、昨年の全国の交通事故死者が前年より10・3%も減った理由の一つとして、後部座席のベルト着用率向上をあげる。
 激しい事故では、後部座席の同乗者が車外に投げ出されるケースが多いが、ベルトをしていれば致死率は4分の1になるという統計もある。現行の道交法は違反の摘発対象を高速道路上だけに限定しているが、同庁は一般道に拡大することも視野に入れる。「後部座席のベルト着用が普及すれば、年間死者数は4000人台にも抑えられる」と同庁幹部は期待を寄せる。
 交通死者数は「第1次交通戦争」と呼ばれた70年に1万6765人を記録し、「第2次交通戦争」の88年に再び1万人を突破。この間、8000人を下回った年は1度もなかった。
 節目になったのは46年ぶりに7000人台に減少した03年。最高で懲役20年を科す危険運転致死傷罪の新設(01年)や、飲酒運転・ひき逃げの罰則強化(02年)など交通関係の法令が厳罰化された効果とみられる。
 さらに06年8月、福岡市で同市元職員による飲酒運転事故で幼児3人が死亡した事故を受け、07年9月に飲酒運転の「同乗罪」や「酒類提供罪」が新設された影響で、昨年上半期の飲酒運転の摘発数は、2万5106件と前年より36・6%も減少した。
 一方で昨年は悪質な事故も相次いだ。大阪市北区では昨年10月、堺市の会社員、鈴木源太郎さん(30)がホストクラブ従業員の男(22)の車に約3キロにわたって引きずられて死亡したほか、翌11月にも大阪府富田林市で、新聞配達中の少年(16)が軽ワゴン車に6キロ以上も引きずられて死亡した。
 2件とも、事故を起こしたドライバーは「飲酒運転の発覚を恐れた」と供述しており、厳罰化された飲酒運転の摘発を逃れようとしていた。
 交通事故遺族らでつくる「TAV交通死被害者の会」(大阪市)の米村幸純さん(58)は「厳罰化による効果は出ているが、それでも改めようとしない悪質ドライバーは現実にいる。こうした人のほとんどが過去に違反をしており、運転免許証の再交付を厳しくするなどの対策が必要ではないか」と指摘している。
 ◆衝突安全性が向上◆
 交通死者の減少には車の安全性能が向上していることも貢献しており、嶋村宗正・千葉科学大准教授(自動車工学)は「ここ数年で、衝突時の衝撃吸収性能の高い新型車が普及したことが大きい」と指摘する。
 1980年代後半から90年代前半の「第2次交通戦争」では、車同士の衝突事故が急増したことから、その対策として、93年、道路運送車両法の保安基準に正面衝突事故の安全性が追加され、開発段階での衝突実験がメーカー側に義務付けられた。
 これを受け、各メーカーは車体の強度とともに衝撃を吸収する「柔らかさ」を重視した新型車を開発。ボンネットの強度を意図的に弱めて圧力を分散させることで衝突の衝撃を吸収する一方、屋根を支える部品の強度を高め、車内の空間を確保するようにした。エアバッグの普及も進み、94年まで10%以下だった運転席への装備率は現在、100%近くになっている。
 この結果、独立行政法人「自動車事故対策機構」の正面衝突実験では、運転席の頭部損傷の危険性を示す「頭部傷害値」の平均値は95年式は93年式に比べ半減し、06年式はさらに95年式から半減した。国交省技術企画課は「衝突安全性能の向上で、年間1200人以上の命が救われている」と試算する。
現在、メーカーが力を入れているのは、急ハンドルや雨天時の「横滑り防止装置」や、レーダーで車間距離を把握して自動的に速度を落とす「被害軽減ブレーキ」など。日本自動車工業会は「今後は危険を予測して事故を防ぐ車が主流になるのではないか」としている。(社会部 中村勇一郎、関俊一、地方部 森広彰)
最終更新:1月3日9時58分