サンダーバードでゆく北陸本線の旅
大阪駅11番線ホームは特別な存在です。ここから発車するのは特急列車だけで、主に北陸へ向かう特急サンダーバード、他には飛騨高山へ向かう特急ひだ(大阪発着は一日一往復)、東京へ向かう上り寝台特急サンライズ出雲・瀬戸などが11番のりばを使用します。
11番のりばへ向かうエスカレーターからすでに旅への期待が膨らんできます。11番のりばは暖色系の照明に、広く余裕のあるホームで、その意匠の随所にほかののりばとは違う特別感が感じられます。すでに停車しているのは乗車する1本前のサンダーバード7号です。
サンダーバード7号
この列車の発車をお見送りした後、駅弁を買いに行きました。11番のりばには駅弁のお店があります。サンダーバードは車内販売がないので、乗車前に買い出ししておく必要があります。
また、コンビニもあるのでそっちで何か買ってもよかったのですが、せっかくなのでちゃんと駅弁を買います。
淡路屋の「冬のあじわい」弁当を購入
駅弁を買うことでさらに気分は高まってきました。値段はコンビニで調達するより高いですが、ぜひ駅弁を買うことをおすすめします。やっぱり駅弁があるとないとでは気分の高まりが違うように思います。
11番線ホーム
あと1か月で金沢行きは見られなくなる
発車標の中をサンダーバードが走っています。あと1か月で金沢行きの表示も見納めです。
発車の15分前、特急サンダーバード9号 金沢行が入線してきました。基本9両で運転されるサンダーバードですが、この9号は12両での運転です。長大編成の入線は迫力があります。
私が乗車するのは最後尾の12号車で、今回は増結された車両に乗ることになります。
しかしその増結された車両を見ると、、、。
ん?しらさぎ、、、?
しらさぎ色の683系
いや、お前しらさぎやんかー!と思わずツッコミ。このようにサンダーバードの増結用にしらさぎ色の編成が使われることがあります。
「お前しらさぎやんけ」とツッコむ声が周囲から聞こえてきます。やっぱり関西人のツッコミは声に出てしまいますよね。
奥(金沢方)がサンダーバード色、手前(大阪方)がしらさぎ色
サンダーバードとしらさぎを一緒に乗れたような感じで一石二鳥?ということでお得かも、、、。
それでは発車まで時間があるのでじっくり車外散歩をしましょう。
方向幕
金沢行、、、金沢行の列車はあと1か月で全て敦賀行になります。敦賀は北陸というより関西圏の一部という感じなので、北陸特急としてのサンダーバードはあと1か月で終わりです。これからは北陸新幹線へのリレー特急としての役割が待っています。
翔けるサンダーバード
車体側面を翔けるサンダーバード。特急サンダーバードの前身である特急雷鳥を意図的に直訳した結果、「サンダーバード」となりました。しかし、実はライチョウの英訳はサンダーバードではなくターミガンであり、関西・北陸地方を中心に「ライチョウの英訳=サンダーバード」という誤解を定着させた張本人です。
JR西日本は、サンダーバードはアメリカ先住民の伝説の鳥に由来しているとも説明していて、名付けの経緯の本当のところはわかりません。
特急ターミガンもかっこいいと思いますが、やっぱりサンダーバードのほうが親しみやすさがあって結果的に良かったと思います。
発車を待つサンダーバード
先頭車までやってきました。
記念に写真を撮る人も多く、人々に親しまれる看板特急だということがよくわかります。発車時間が近づいてきたので私も記念撮影を済ませ、足早に私の席がある最後尾の車両まで向かったのでした。
大阪駅を出発 JR京都線を快走
それでは乗車します!
それでは乗車していきたいと思います!今回は指定席に乗車します。
車内の座席は赤色系でした。しらさぎ用の車両には赤色系の他にグレー系の座席の車両もあります。しかし、やっぱりサンダーバードというよりはしらさぎに乗っているような感じです。
車内
発車ベルが鳴り、08時42分、大阪駅を発車しました。発車すると車内メロディーに使用されている北陸ロマンが流れ、案内が始まります。号車の案内が行われ、停車駅の案内については次の新大阪発車後に行われることが知らされます。
大阪駅を発車
梅田のビル群を横目に出発。この時が一番わくわくします。ビル群を抜けるとすぐ淀川を渡ります。
淀川を渡る
大阪から北や東へ向かうとき、淀川を渡ると旅の始まりを感じさせてくれるのがとても好きです。これから知らない土地へ行くぞ!という気分が高まります。
新大阪に到着
すぐに最初の停車駅、新大阪駅に到着します。
ここからも新幹線からの乗換で多くの人が乗ってきます。普通車の混雑を避け、大阪・新大阪-京都間をサンダーバードに乗る人もいるようで、そういった需要もあります。
新大阪を発車
新大阪を発車。同時にここで停車駅の案内があります。
ー 停まります駅は、京都、福井、終点 金沢です。
停車駅の少なさに拍子抜けしそうになりますが、何とこの列車の途中停車駅は新大阪、京都、福井しかありません。そのため、様々な停車駅タイプのあるサンダーバードの中でもこの9号は特に速達のタイプです。
サンダーバード9号の停車駅
吹田総合車両所
新大阪を出ると、おおさか東線が交差して離れていき、吹田からは左手に吹田貨物ターミナルが、右手には吹田総合車両所が見えます。
東海道本線のうち、大阪-京都間(起点は京都駅)はJR京都線と呼ばれ、京阪神を走る様々な列車たちを見ることができます。JR京都線を走る様々な普通列車や新快速、特急とすれ違い、並走する普通列車たちをどんどん追い抜いていく様子はなかなか爽快です。
130km/h運転に近いスピードで快走
この区間では130km/h近いスピードを出して快走します。130km/hを超えて走ることはあまりありませんでしたが、120km/hを超えるスピードを持続させて走っています。
大阪モノレール
JR京都線以外の路線も車窓から見ることができます。茨木手前では大阪モノレールと交差します。今日は幸運なことに2025年大阪・関西万博のラッピングをまとった車両を見ることができました。
東海道新幹線
大阪府と京都府の府境である、島本から山崎にかけては天王山と淀川(三川合流の場所)に挟まれた地形で、大阪と京都を結ぶJR京都線、東海道新幹線、阪急京都本線がこの地形的に狭いところを通ります。ちょうど新大阪方面へ走る新幹線の姿が見えました。
そして山崎駅を通過中に京都府に入ります。
吹田総合車両所 京都支所
山崎の次の長岡京を過ぎると、吹田総合車両所 京都支所(旧 向日町運転場)が見え、近郊電車から近畿圏を広く走る特急まで多くの列車を見ることができます。今日はここに所属するWESTEXPRESS銀河の姿も見えました。
車両所を過ぎ、桂川を渡るとまもなく京都に着きます。
京都に到着
京都からも多くの人が乗り込みます。この列車は京都の次はもう福井まで行ってしまうので、関西から北陸へ向かう人の乗り込みはこれ以上ありません。
福井まで行くと、次は福井―金沢間を移動する人が乗車してくるようになります。
京都からも多くの人が乗り込む
― 京都を出ますと、次は福井まで止まりません。
車掌さんが車内放送で何度もそう伝えています。この列車に乗り間違えると福井まで連れて行かれてしまうので、絶対乗り間違えないようにしましょう。
京都を発車
京都を発車。東山トンネルをくぐると山科を通過します。山科からは琵琶湖の東側を走る琵琶湖線と西側を走る湖西線に分かれます。サンダーバードは基本的に湖西線を走ります(強風などで湖西線が止まった時は琵琶湖線を走ることがあります)。
琵琶湖線(東海道本線)と離れる
琵琶湖を眺め駅弁を楽しむ 湖西線
高規格な湖西線へ
琵琶湖線と別れ、湖西線に入った列車は全長3kmほどの長等山トンネルを抜けると、琵琶湖の西岸に出ます。
湖西線は山科と近江塩津を結ぶ路線で、関西と北陸を短絡する路線として建設されました。琵琶湖の東岸を走る琵琶湖線(東海道本線)より直線的な線形で踏切のない高規格な高架線のため、スピードアップができ、所要時間の短縮を果たしています。
しかし、湖西線は比良おろしの強風によって遅延・運休が度々発生するため、そのような時にはサンダーバードは琵琶湖線経由で北陸へ向かいます。
朝の琵琶湖
北陸本線 さよなら特急街道
深坂トンネル通過中
北陸本線に入るとすぐに全長5170mの深坂トンネルに入ります。ここでは上下線は分かれて別のトンネルを走り、上り線は深坂トンネル、下り線は新深坂トンネルを走ります。
深坂トンネルは滋賀県と福井県の県境を越えるトンネルであると同時に、中央分水嶺を越えて日本海側へ通ずるトンネルです。
敦賀平野へ向け下る
深坂トンネルを抜けるとそこはもう日本海側です。
列車は敦賀平野へ向けて勢いよく急な坂を下っていきます。この急勾配は敦賀から近江塩津方面へ向けて坂を登る下り線を走る列車にとっては難所のため、勾配をかせぐためのループ線に入ります。今乗っている上り線はまっすぐ敦賀へ坂を下っていきます。
金沢総合車両所敦賀支所と敦賀機関区 奥には北陸新幹線の高架
広大な鉄道用地
敦賀の平野部に下りてくると、敦賀までの建設が完了した北陸新幹線の高架が見えてきます。
敦賀の車両基地にはラッセル車が止まっており、雪の多い日本海側に来たことを実感させてくれます。敦賀駅に近づくと線路が何本も並び、敦賀が鉄路の要衝であることがわかります。
敦賀駅を通過
そうこうしていると列車は敦賀駅を通過します。敦賀を通過するのは停車駅が最少の速達型のサンダーバードだけなので、なかなか無い体験です。
巨大な新幹線駅
北陸新幹線が開業し北陸本線が敦賀止まりになると、敦賀を通過することはできなくなります。
次に敦賀を通過するのは、北陸新幹線が全通したときに新幹線で経験することになると思いますが、北陸新幹線の全線開業予定は2040年代後半。
今大学生の私は、、、四十半ばになっているはず。
そのころ私は何をしているだろうかと、思いを馳せつつ敦賀駅を通過、、、でも、20年なんて案外あっという間に経ってしまうものなのかもしれませんね、、、。
北陸トンネルに進入
敦賀を通過するとすぐに敦賀平野から離れ、山に近づいていきます。
そして敦賀と今庄の間の山岳地帯を貫く全長13.8kmの北陸トンネルに入ります。北陸線はこのトンネルができるまではさらに日本海側の杉津を経由するルートを通っていました。山稜を縫うように遠回りし、さらにスイッチバックを何度もして上り下りする難所でした。
北陸自動車道下り 葉原トンネル 旧線のルートにほど近い
当時、杉津駅からは敦賀湾の美しい車窓を眺めることができ、旧線廃止後、北陸自動車道杉津SAとなった今でも、同じ景色をみることができます。
杉津SAから見える敦賀湾のパノラマ
1962年に完成した北陸トンネルは関西と北陸の間のボトルネックを解消し、北陸の経済発展に大きく寄与しました。
北陸トンネル通過中
北陸トンネル通過中
長年、北陸トンネル通過中は一部を除く電話回線が不通でした(この後2024年3月14日に不通が解消されました)。
今庄を通過
北陸トンネルを抜けると、地理的・文化的にも北陸と呼ばれる地方に入ります。
今庄を通過。今庄は江戸時代に北国街道の宿場町として栄え、北陸線ができると今庄駅は機関車の峠越えの拠点として活気を見せました。今庄は北陸トンネルの開通の陰でその重要性を失い寂れてしまいましたが、近年、現存する歴史ある街道沿いの建物や鉄道遺産を活用した観光の場となっています。
南越前町を走行中
武生を通過
山あいの平野部を下って越前市に至ります。越前市は福井県第三の人口を有し、中心の武生は特急停車駅ですがこの列車は通過してしまいます。
北陸新幹線はこの駅に乗り入れず、武生駅から東に3km離れた所に新たに越前たけふ駅を設けています。
日野川を渡る
日野川を渡るとすぐに次の鯖江市へ入ります。鯖江は眼鏡などの地場産業が有名で、鯖江駅も特急停車駅ですが、この駅も通過してしまいます。
鯖江を通過 速すぎてよくわからない
北鯖江の有名な看板 並走するのは北陸自動車道
鯖江通過後はしばらく田園地帯を走ります。北鯖江のあたりでは横に北陸自動車道が並走し、その向こうの山の斜面には鯖江の眼鏡の看板が見えます。この看板は夜になると赤く光って結構目立ちます。
まもなく福井市に入り、北陸新幹線の高架が見えてくると福井の市街地の中に入り、高架に登って福井駅に到着します。
併設された新幹線駅
福井に到着!
京都から1時間20分、福井に到着しました。北陸新幹線の駅舎はすぐ横に併設されています。福井県は海側に芦原温泉や東尋坊、山側に永平寺や恐竜博物館など多彩な観光資源に恵まれており、新幹線が開業すれば、関東からのアクセスが便利になることでさらに観光客で賑わうことでしょう。
福井で降りる人も多くいましたが、代わりに福井から金沢へ乗車する人が乗り込んできました。
福井-金沢間の特急需要はそこそこあるようですが、新幹線が開業し特急がなくなるとどうなるのかは分かりません。
九頭竜川を渡る
福井を発車。九頭竜川を渡り福井市街地から離れます。次の坂井市は福井県第二の人口を有しますが、北陸本線は市街地からやや離れた場所を走ります。このあたりの田園風景は北陸本線の典型的な車窓といえます。
田畑の風景の中を走る
芦原温泉を通過 速くてよくわからない
芦原温泉のあるあわら市に入ります。芦原温泉駅は在来線と新幹線が併設されました。芦原温泉の温泉街はこの駅から少し離れていますが、新幹線が開業すれば、送迎バスなどが頻繁に発着するようになるでしょう。
牛ノ谷を越え、石川県へ
立ち並ぶ新幹線の高架
加賀温泉を通過
列車は牛ノ谷峠を越え、石川県に入ります。そして、北陸の温泉で芦原温泉と並び立つ加賀温泉を通過します。北陸新幹線は加賀温泉駅にも乗り入れています。
小松を通過
動橋、粟津と北陸本線の歴史ある駅を通過し、次に企業城下町として知られる小松市の中心、小松駅を通過します。北陸新幹線は小松駅にも乗り入れ、北陸有数の企業集積地帯を活性化させるものと思われます。
白山連峰
加賀市~白山市を走行中は進行方向右側(金沢行の場合)に、そびえ立つ白山連峰を見ることができます。冬には山全体に雪を頂く姿が見え、暖冬である今年もうっすらとその様子を見ることができました。
手取川をわたる
石川県を代表する川、手取川を渡ります。手取川は昔、石川と呼ばれていたことがあり、県の名前の由来となりました。手取川の川上には雪を纏った白山連峰の姿が見えます。
手取川を渡ると金沢が近づいてきたことを感じます。
白山総合車両所
白山市に入ると在来線と新幹線の高架がぴったり並走するようになります。松任の手前で、右側に新幹線車両を留置・整備する白山総合車両所が見えます。この車両基地は2015年の北陸新幹線金沢開業から供用されており、ここから並走する新幹線の線路はすでに使用中です。
北陸新幹線の高架が金沢まで並走
特急停車駅である松任もこの列車は通過します。通過後まもなく北陸ロマンが流れ、金沢到着の車内アナウンスが始まります。
ー ご乗車ありがとうございました。まもなく終点 金沢です。北陸新幹線、七尾線、IRいしかわ鉄道線、北陸鉄道線はお乗り換えです・・・・。
ー 今日も特急サンダーバード9号をご利用いただき、ありがとうございました。またのご利用をお待ちしております。
お降りの際は、お忘れ物にご注意ください。
まもなく終点 金沢に着きます。
まもなく金沢
金沢のビル群
11時14分、ビル群を横目に北陸一の都会である金沢に到着です!
大阪からは約2時間半のサンダーバードの旅となりました。
終着駅 金沢に到着!
金沢駅
列車を降りたあと、記念写真を撮る人も少なくありません。
皆さん譲り合って写真を撮られており、「すみません、写真を撮っていただいてもいいですか?」などの依頼にも快く応じていました。私もそうして写真を撮ってあげると、「よければ、撮りましょうか?」と訊いて下さり、私の写真も撮っていただきました。私は一人旅だったので、とても助かりました。ありがとうございました。